紙の本
人間の認知機能について語った興味深い科学書です。
2020/02/07 13:23
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、質の高い知識を一般教養として身に付くように、分かり易く説いてくれる人気の「ブルーバックス」シリーズの一冊で、同巻は人間特有の認知機能について科学的に語ってくれる科学書です。同書では、私たちの心の働きを生物進化に基づいて考察しながら、今、注目されている進化心理学の最新知見から人間特有の心の本質を解き明かした画期的な一冊です。例えば、安易に人に騙されたり、噂話を簡単に信じ込んでしまったりということが誰にもあると思います。こうしたことは、安直に言えば、「愚かさ」なのですが、この原因は、実は、高度に進化した認知機能ゆえの副作用だと同書の著者は言います。とっても興味深く、読み進めるともう離れられません!
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進化心理学というものを初めて知った。実に興味深い学問である。
長年不思議に思っていた人間の心理について知ることができた。
生物進化論を心の仕組みの理解に応用した分野だそうで、うまく説明がついているものだと思う。
特に、現実とそれをいかに知覚するかの違いなどはまさにふだん感じていることだったので、我が意を得たりという感じであった。
人間というのは実に奇妙な生き物なのだなあというのが全体を通しての感想である。
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錯覚や誤認を進化心理学の点から解説した本。
実例は多いがどこかで読んだことのあるものばかりで、本文にもちょっと説明不足な感じが強い。
面白かったのは出所記憶力の話で、私たちは情報の内容を覚えるのは得意だが、情報の出所を覚えるのは不得意だという。エール大学のホブランドらの実験では、「開発された新薬をすぐに使用できるようにすべきだ」という論説を、学術誌の記事として与えた群(A)と大衆雑誌の記事として与えた群(B)で比較している。記事内容に賛成するかどうかを直後に聞いたところ、A群で賛成する人が多かったが、一ヵ月後に再評定したところ両群に差がなくなっており、内容は覚えていたものの出所は忘れていた。と、いうことで質の悪い情報に接しすぎるのはよくない。
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タイトルだけで読んでみようと思った本ですが、大抵タイトル負けしている昨今の本には珍しく、中身が勝っていました。
騙すというよりも、種の、脳の盲点がどこにある、という科学的な話です。
規則をつくったり、覚えたりという機能を身につけた代わりに、反射的機能(野生とでもいうべきか)を失った僕たち。
数字を一瞬表示して覚える瞬間記憶では、なんと人間よりチンパンジーのほうが優れているそうです。
自分の脳味噌もまるであてにならない。いったい人間らしいというのはどういうことなのか、悩みの種になるような本です。
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心(思考)は進化で獲得した性質を備えている。
生存のための思考能力の獲得:進化
集団としての生存。生存には、理論(思考)より感情(無意識)が優先する。感情(怒りと恐れ)が集団の利益(生存)を確保する。
インプット(ありのまま)→無意識(脳)→アウトプット(生存に有利な解釈)
その法則は、後付けではないか? 反証が必要。
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進化心理学への入門。人間の心の形成の基礎の部分には遺伝の影響があるとされている。与えられた環境の中で生き延びてきた人類進化の過程が,「心」に結実しているという興味深い話。
以前「進化倫理学」についての本を読んだが,それと似た感じ。
本書は,「錯視」「注意」「記憶」「感情」「想像」「信念」「予測」の六章を通じて,各心理特性がいかにして獲得されたのか,なぜ時々うまく機能しないのかを探る。
人間は受け取る情報の多くを視覚に依存する。目が太陽光に対して感度が高いように進化してきたのと同様に,脳における視覚の解釈系も,動く物を瞬時に捉えるなど,人類が置かれてきた環境を生き抜くのに有利なように進化してきた。
凹凸錯視というのがある。二次元に書かれた図から凹凸を感じることができるのは,遠近を把握するのが生存に有利だったため。その際,照明は上部にあることが前提なので,これを逆にすると凹凸が逆転して見える錯視が起こる。太陽光の下で生きてきたためこのような視覚特性が獲得された。
また人間は外部を認識する際に,重要とされるところにリソースを振り向けて注意を払い,そうでないところは気にとめない。それが生存競争に有利だったから進化した。この特性を逆手にとって,マジシャンは重要でないところに注意を向けさせ,注目されないところでトリックを行なっている。
人間の記憶もすべてをありのままに記憶するものではない。それでは容量が足りないので,もっと効率的に,体系づけて記憶は行なわれる。そうしなければ人類は生き延びられなかった。そのおかげで,今までの経験に反することなどが記憶から抜け落ちがちである,など欠点も含むことになった。
また,記憶が曖昧でも,選択を迫られて一度エイヤと決めてしまうと,その決断を当初からの記憶と誤信してしまうことが多い。記憶の効率を高めるには適しているが,無意識に記憶が改変されてしまう。目撃者への犯人の「面通し」がこの仕組で冤罪につながるケースも後を絶たない。
感情も,進化の賜物。危険を察知し退避するための「恐怖」,新しい有用なことを始める「好奇心」,集団の結束を深める「怒り」や「愛情」。捕食動物に囲まれた危険な環境という大きな淘汰圧が,「恐怖」などの感情を発達させたが,淘汰圧が薄れると,次第に多様化も許される。
また人間は,自分勝手に行動するより協力して活動する方が生き残りに有利だった。そのため,仲間から行動や言葉で伝達される信念を重視する方向に進化が進む。これを逆手に取ったのが詐欺師やデマを流す人々。人間は他人を信じるのがデフォルト。懐疑心は教えていかなくてはいけない。
人間は,他の類人猿から分岐して300万年もの間,狩猟採集生活をしてきた。農耕開始からは1万年程度にすぎない。だから危険な動物に囲まれた狩猟採集生活の中での進化の影響が,心にも色濃く残っている。そのころの人間集団は百人程度で,互いに顔見知り,相互信頼が有利だった。
ところが集団の規模は1万年で急増し,相互信頼が必ずしも有利でなくなってしまった。この短期間では,懐��精神が進化でできあがるまでには至らなかったらしい。文字を発明し,懐疑精神を含む知恵を後世に伝達することが可能になった為に,人類はこの急変にも対処できてきたのかも。
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生物進化に基づいて心理を考えると言われても,検証できるの?
納得できるようなできないような。
2012/06/02図書館から借用;6/3午後から読み始め;途中中断しながら6/10に読了
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「進化心理学」で人間の心理、行動を分析している。進化心理学はまだ新しい学問で信用性は高くないが参考になった。錯視や見逃し記憶違いなどを狩猟時代の環境から説明しているのは面白い。認識に補正がかかっていると心得ておくだけでも騙されたり、勘違いしにくくなる。進化心理学がこれから認められていくのか興味がある。
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ツキやスランプは過去を振り返ったうえでの幻想であるというのは納得はするんだが、自分に不利な状況が続いているという現実にどう対処すればよいのか?というのは別問題なような気はする。
超常現象を信じやすい人はコントロール欲求が高いというのはうなづける。信じる者は救われるというか。また、生き延びるための物語の共有も非合理なのかもしれない。が、そうしなきゃ生きられないのも人間なのだろう。
3章の記憶の歪みは興味深い。犯罪の目撃者証言というのがいかに当てにならないかという事を説明している。
性格は遺伝するという「進化心理学」の観点から、人間が間違いを犯すパターンを分類し説明しているのだが、なるほどと思う反面、これこそ後付けの説明のような気もして、どこまでどう信じていいのかはちょっとわからない部分もある。本書の教訓である「人間は信じやすい」だから「懐疑の精神」が必要というのは心に留めておきたい所。
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人の心の働きは人類が進化して来た遺伝子に左右されている。それを理解することで、よりよい社会を構築することができる。例えば人間が蛇を怖がるのは、過去に命を落とす敵として蛇が存在したからで、蛇を見たらすぐに逃げ出せるように身構えられた人が生き残って来た。現代は日常生活で蛇に遭遇するような環境にいなくても、そのときの遺伝子が怖がるように仕向けるのであり、それが強い人は蛇のおもちゃにも過剰に反応する。そのことを理解すれば、蛇を見て過剰に怖がらなくても済む心構えができるかもしれない。まだ新しい分野だそうだが、面白い視点だと思った。
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壁のシミが幽霊に見えたり、噂話を信じやすかったり。人間の「愚かさ」は、進化した認知機能の副作用。進化心理学から人間の心の本質を解き明かす。
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進化心理学の非常にわかりやすい解説書。参考文献とか索引とかもついていて、初心者向けながら著者がしっかりと気合を入れて書いたことが伺える。
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進化心理学の観点から、人間の心の動き(誤解、錯覚、記憶など)について、解説したもの。
非常に分かりやすい。
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・視覚は「草原に生きる」ように完備されている
・錯覚図形やだまし絵を見たときの不思議さの裏には、生物進化の長大な歴史がひかえている
・「注意」
・速い変化に自動的に注意を向ける機能が進化した
・視線や指さしの先の物体を検出する機能は、人間ではきわだって発達している
・多くの自閉症患者は「注意共有」モジュールに欠陥があり、指さしの意味が理解出来ない
・「記憶」
・確信がある記憶は、必ずしも「体験した事実の記憶」ではなく、「事実ではないが有効に活用された記憶」の可能性がある
・「感情」
・「危険でない」という理性的な認識よりも、「怖い」という感情のほうが、力強く心の中を支配する
・「想像」
・人間に入ってくる情報(知覚)と、出ていく情報(身体運動)の両方、すなわち入出力情報すべてにかかわる、重要な心理的機能
・技術的知能と社会的知能
・社会的知能が働きすぎると幽霊や心霊写真や鬼や妖精が見えてくる
・「信念」
・原則100人程度しか、信念共通化の確認作業をすることができない
・人間は信じやすい動物
・懐疑の精神が現代では少し必要
・四分割表を書いて考えるテクニックがある
・数値をたすきがけの要領で掛け算して大きいほうのマスに意味のある関係がありそうと結論出来る
・反対側に注目しない傾向がある
・「予測」
・近い将来の予測には重きをおくが、遠い将来の予測には重きをおかないようになっている
・人類は法則好き
・予測ができて、かつ、それに対処できてはじめて、予測に意味がある
・現状の問題に対処できない無力感が、うつ病にもつながる
・人類は、想像力を身につけ、法則を発見し、協力して働き、文明を築いたが、かわりにさまざまな苦悩も背負った
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vol.143
進化心理学が明かす不思議。「退化」も「進化」である!?http://www.shirayu.com/letter/2012/000286.html