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成瀬治『近代ヨーロッパへの道』講談社学術文庫,2011年(初版1978年)
全体としてみると、15世紀半ばからフランス革命直前までのヨーロッパの構造史である。
第一章では、1453年の「コンスタンティノーブルの陥落」がプロテスタントの地歩拡大やアトランティック・エイジの刺激となったことを指摘している。また、1516年のフランス国民教会の成立(ボローニャの政教協約)や1302年の三部会の起源から、百年戦争を通して、三部会が課税承認権を失い、恒久的な租税に転嫁し、シャルル七世のころには財務行政機構がフランス全土に値を下ろしたことを述べている。この他にメディチ家の芸術支援や、フッガー家の情報活動(私的な手書き新聞「フッガー時報」1568〜1605)などについてもふれている。
第二章・第三章では、宗教改革とカトリック改革、カール五世、「カルト」であった再洗礼派、ドイツ農民戦争などについて書かれている。「教会のなかの国家」から「国家のなかの教会」へという観点は、わかりやすいと思う。
第四章は、イギリス国教会、カトリック教会の立ち直り、フランスの反乱、オランダの独立など、宗教改革の影響からウェストファリア条約までを書いている。
第五章は、17世紀の初頭の「危機」について述べている。第六章は、イギリスのピューリタン革命とフランスのルイ14世の絶対主義の比較である。常備軍と官僚制が軸だが、イギリスが議会制のもと、王制をとりこんで不思議な制度をつくっていく所は興味深い。イギリスの「王政復古」は実際は議会の勝利であり、王政は復古していない。
第七章は戦争と租税で、17世紀からフランス革命前までの「アンシャンレジーム」下の租税を財政の収支からのべてあり、大変リアルである。
第八章は、プロイセンのフリードリヒ大王(二世)など、啓蒙君主について述べているが、その政治がスペインに比すべき「後見国家」「警察国家」で厳しい監視があったことを示している。
第九章はフランス革命前の「サロン」やイギリスの「コーヒーハウス」などで、市民社会が成長していく様子を指摘している。
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難しくてわからない部分もあったけれど断片的な世界史の知識を少し整理することができ、近代ヨーロッパの成立について全体から理解しやすい本であった。
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オスマントルコ隆盛後の宗教戦争から産業革命までの西欧史
東北欧イスラムアメリカとかにはあまりふれず
宗教改革周辺と王権の確立というあたりだけに範囲を絞っているのに
かなりなかなかあちこち雑多でいろいろ大変な印象
国別の歴史にしてしまいたくなる気持ちも大いにわかる
また多国間の関係にしても
経済とか宗教とか観点をしぼると楽になるだろうが
全体取りこぼさないことは無理でも
だいたいをさらうこともなるほど難しい