電子書籍
愛犬家殺人事件を現代風に
2019/10/19 13:14
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ワシ - この投稿者のレビュー一覧を見る
身も蓋もないが、世間を震撼させた愛犬家殺人の現代風アレンジである。
(昔、父だか叔父だかが運転する車中から見た大里~深谷近辺の『犬・猫・狼』と描かれた独特な意匠の看板が記憶に残っている)
どことなく作者や読者である自分自身がモデルなのか!?と錯覚するような、うだつの上がらない青年が思いもかけない陰謀や策謀に巻き込まれていく。
近畿の事件から前後して関東でも報道が先行する形で事件が発覚しており、ホラーというよりは出来の悪いサイコ・サスペンスである。
と言うのが、事実そのものが悪辣過ぎる上に時系列も複雑で全容が判然とせず、ドキュメンタリー作家ですら取材がこぼれていたり、共犯者自身による上梓も多数だからだ。
判明しているだけでも殺され解体された被害者は四名。
周辺で不審死や疾走を遂げている者は数十人とも言われる(主犯の関根曰く"軽く30人は"とのこと)が、遺体は見つかっていない。
着想は悪くないが元のネタが遠大すぎて、素材選びの初手から誤ってしまった感は否めない。
「事実は小説より奇なり」を地で行く事件なので、たかが一作家が扱うには巨体過ぎた。
それでも事件を追取材した関連書籍をご覧になっていなければ、そこそこ緊迫感を持ってスリリングに読めるだろう。
もっともCo2で"〆る"のを安楽に描いていたりと、化学・生物面の勉強不足も目立つ。実際には窒息なので動物も人も大暴れ、衰弱しかけを生きたまま焼き殺してしまうハメになる。
筋弛緩剤を用いれば現実の事件そのままだし、どうせ改変するならCo・一酸化炭素で〆る方が簡便(作業者が巻き込まれる恐れもあるが)なのに、と思った私はそこそこイカレ野郎である…。
なお実際の事件では暴力団の三下が殺されており、親分の触法ギリギリの報復も捜査資料のひとつになっているから世の中分からない。
当の親分・高田耀山が『仁義の報復』を上梓している。ネタ成分が強くオカルト寄りではあるが、本作で語られる「疫病神」「影が薄い濃い」の部分、"解体"屋の正体がつかめるかも知れない。
警察の怠慢捜査、物証の少なさから早々に司法取引を持ち掛ける検事、刑事司法の腐敗と闇もあげつらっており、読み応えのある章段もないではない(新刊を買うほどではない)。
投稿元:
レビューを見る
一番怖いのは人間なんだよ、というホラー。だってね、こういうのって本当にありそうじゃないですか? とにかくいやーな雰囲気が全編に漂っていて。ただの絵空事だといいなあ。
しかしここまで極端でないにはしろ。現代のペットブームの陰には、多かれ少なかれこういう犠牲が支払われてるんだよなあ……と思うと。なかなかにやりきれません。
投稿元:
レビューを見る
例えばけんかになって、自分は殴り合う気だったのに、相手に自分の大切なものを壊された感じ。直接的な痛みじゃなくて、自分も罪悪感を伴う心の痛みを感じた。カタストロフィがないのも現実的、というか現実。あぁ、どんより(褒)。
自分ではどうにもならない泥沼に足を突っ込んでしまった感じの恐さ。映画『冷たい熱帯魚』が好きな人にはオススメ。
投稿元:
レビューを見る
話がどう展開していくのか、
どんどん読み進みました。
終わりかたがちょっと残念。
でも、だからこそいよいよ怖い話。
投稿元:
レビューを見る
埼玉・愛犬家殺人事件をそのまま小説にしたような作品。過激な描写がある訳ではないけど、生理的嫌悪を喚起する、なんとも言えないおどろおどろしさに引き込まれて一気に読んでしまった。万民受けはしないだろうが、一読の価値あり。
投稿元:
レビューを見る
小さな町工場で月給10万円で働く一郎。鬱屈した日々を送っていたところ、幼なじみの牛木と偶然に再会し犬のブリーダー業に誘われる。そこから一郎の運命は変わりだす。最初は少しずつ、けれど逃れようもなく着実に。もちろん悪いほうに。グロいほうに。
最初から最後までねっとりと薄気味悪い空気が満ちてる、分かりやすいホラー。もともと底辺に近いような生活を送る怠惰な人間が主人公だったけど、これが「黒い家」のようにごく普通のサラリーマンが主人公だったら、もっと怖かったんじゃないかと思う。
投稿元:
レビューを見る
そう言えば読んでた。
アマゾンをつらつらと眺めてたら、そう言えば読んだなと。
映画「冷たい熱帯魚」に似てるかも。
投稿元:
レビューを見る
最高に後味悪いのにちっとも理不尽じゃない、不思議!
要領悪くても他人に借りなんか作るもんじゃないやね。
投稿元:
レビューを見る
職場に嫌気がさしていた一郎はある日偶然旧友の牛木と再会する。牛木に誘われ一郎は彼の仕事の手伝いを始めるのだが……
本のオビなどで「読後感最悪!」という煽り文句が使われるようになって2,3年くらいたったように思いますが、この本はそうした本たちの最悪とはまた一線を画す終始イヤーな雰囲気を感じました。
なんでそう感じるのだろう、と自分なりに考えてみると、作品のリアルさがその理由かな、と思いました。主人公の現状に対する不満の感情、また彼のおかれている環境自体が現代社会のどこかに実際にありそうで他人事と一概に思えませんでした。だから、彼が甘い話に乗っかりそのまま、ズルズルと悪い方、悪い方へと転落していくのも他人事だから、フィクションだからという割り切りが上手いことできずに自分の感情も引っ張られていったのかな、と思います。読んでいてなんとなく新潮文庫の『凶悪』を思い出しました。
文章も巧いんだろうな、と思います。読んでいて終始イヤーな気分で、その感覚は読み終えてからもしばらく続きました。いつもなら面白い本を読んだ後は、その本の余韻にしばらく浸っていることもあるのですが、この本に関しては読み終えると「なにか明るくて笑える本を読んで気分を変えないと」と強迫観念にとらわれてしまい、すぐに奥田英朗さんの伊良部シリーズの『空中ブランコ』を読み始めてしまいました(苦笑)
じっとりとした嫌さを楽しみたい、という人にはおススメの小説です。
投稿元:
レビューを見る
ええ、私をご存知の読友さんならピンと来られるでしょう。高田郁さんと間違えて借りましたとも!タイトルや表紙で気付けよって言う話です。サスペンスだけど、描写は若干ホラー要素も含むダメ男がとことんダメなまま最期を迎える、そのまさに意識を無くす所で終わるお話でした。ブリーダーっていう仕事を怪しげな同級生やその父親から持ちかけられた時点で疑えよ!!って思うし女性関係もだらしない。動物虐待の描写があるので読まれない方が良い読友さんも多くおられます。まぁ、間違えて手に取る私が珍しい類いでしょうか・・・(;・∀・)
投稿元:
レビューを見る
導入部から何やら湿り気がありモヤが掛かった様な雰囲気。こういうの大好きです。『うなぎ鬼』同様、堕ちる人間の様を描いているのだがこの人の作風好きだなぁ。ラストまで一気に読ませる展開力と筆力で自ずと主人公に感情移入させられ、読んでるこちらまでも不安や閉塞感を煽られる。もうゾクゾクが止まらない。人間の心の弱さや隙間に入り込み地獄へ引き込まれる怖さは明日は我が身なのかも知れない。甘い汁程怖いものはないのだ。いやぁー、読後のズッシリと心が重いこの嫌な余韻…。こういうの待ってたんだよ。
投稿元:
レビューを見る
途中でヤクザ擬きに捕まって、吊るし上げられて、これから拷問されるってときに恋人の女の子が逃してくれるシーンがあったんだけど、直前までいた処刑人の男どうしたん???
女の子が処刑人だったの?処刑人のすきをついて女の子がきた?このあたりがよくわからなくて、曖昧。
感想としては、そこまで怖い感じじゃなかった。