紙の本
作者の悪意がひっそり炸裂してお腹いっぱい。
2015/08/10 11:55
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:arima0831 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作家の小説は、昨年来数冊読んだ。まず『この手をにぎりたい』、それから『本屋さんのダイアナ』、そして本書。
一冊目と二作目は昭和バブル期前後の風俗をよく描いていて、一瞬その年代なのかと思うのだけれど、どちらも読み切ると奥底に妙にとがった悪意を感じる。なんだろうなあ、と思いながら作者の年齢を見たらまだ三十代。ハアなるほど、この世代の女子によくある話だけれど、この作家はバブル期の女子に複雑な嫌悪感があるんだろうな、などと思ったのだった。
で、本書で槍玉にあがるのは「ブロガー女子とその周辺女子」。今度は同時代かちょっと前くらいの話。ユルい専業主婦生活を描いて人気のブログをやっている女性と、その愛読者の30歳エリート女子が出会ってぐちゃぐちゃと揉める。
この作家の話に何かと出てくる「女子高育ち女子」は今回は一流私大卒で一流商社勤務の高給取りで美人の栄利子。父も同じ商社のOBなので、基本的に裕福に育っているのだが、何やら不思議な鬱屈を抱えている。そんな彼女が愛読している主婦ブログ。その作者翔子とひょんなことで親しくなって、良い友人関係を築けそうな雰囲気になるのだが、関係は一瞬でこじれて栄利子はストーカー化。その後は二人のドロドロしたせめぎあいが描かれていくわけだ。
こうした描写のリアルさ綿密さは凄い。それぞれの登場人物を、ここまで徹底的に意地悪く戯画化して表現できる力量に感嘆する。そうした登場人物を物語にのせて、ラストまで破綻なく一気に持っていくパワーも大変なものだ。それでも筆致はあくまでも軽くユーモラスなので、ぎりぎりの中和ができている感じがする。
しかし全体に一貫して本当に気分の悪い話が続くので、一気に読み切ってかなり胸焼けした。
ラストだけはなんだかイイ感じを予測させるオチを付けているのだが、正直取ってつけたようにしか思えない。ここまでフルスロットルで悪意を噴出させてくれると、ある意味清々しくもある。こうした形で、ある時代あるカテゴリーの女性像を、かなりの悪意を盛ってリアルに戯画化していくのがこの作家の持ち味、ということなのだろう。
それが嫌なら「読まない」という選択肢はあるな、などと思った次第。
いや本当に、もうお腹いっぱいです・・・。
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発売日から常に手元にはあったのだけど忙しくて後回しにしてしまい、先日王様のブランチでの特集みたのをきっかけに急いで読みました。黒い話ですね。好きな方の柚木作品かと思ったんだけど商社の派遣である高杉真織のキャラが無理矢理すぎて、彼女の設定いらんかった気がする。自分の男と寝た栄利子に対して、営業部の男23人全員の肉便器になれ、出なきゃ許さないとか言い放つ高杉真織、それを受け入れる栄利子さすがにむりがありすぎない?
終盤何度読んでもわからなかったんだけど真織は夫杉下をいもけんぴで刺したの??
よくわからんけど、それがなければ面白かったと思うのに。観点は好きだし、表現もハッとしたり、それぞれに共感ができる。
ねえ、思い出せる? 高校一年の頃のあの空気。クラスが急に二つに分かれるの。女と子供に
わかるなー。わたしは女だった。そして子供である同年代を退屈だと思ったそんな女だったから。チクリチクリとする作品。面白いけどちょっとやりすぎ、相変わらず
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柚木麻子さんの書く「女の子同士」はいつもドロドロで、それが柚木作品の醍醐味なのだけど、これはもう例えば『王妃の帰還』とでは突き抜けた、というか次元が違うドロドロ加減。
えらいもんに手を付けてしまったなぁ、落としどころはどこだ、とドキドキしながら読みました。
これならまた直木賞候補に入るんじゃないか、いや、受賞したらいいな、と都合のよいことを考えつつ。
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30代。女。男。友人のいない2人の女の交錯。理想の親友を追い求める姿が怖い。相手を信用したかと思ったらすぐ失望して、受け入れたかと思ったら次の瞬間には嫌悪してとグラグラ揺れてる。もう女の子ではない。自分に突き刺さるところはあるけど、こんなに攻撃的に書くかぁ……。
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久しぶりに、さされた、えぐられた。
読書ノートを記入しなければ
レビューを書かなければと思っても、
本を再び開くことが怖くて、何日かおいてしまったぐらい。
気が合って、これからも長く長く友達でいたい。
そう思った友人を、私の失態で疎遠にしてしまった経験が何度かある。
エリートの栄利子から、人気ブロガーの翔子から、
派遣社員の真織から、
そうなった理由が突きつけられた。
目をそらそうとしたけれど、何度も何度も。
時に空気が読めなくなる私は
相手の中に入って気持ちを100%わかりたいと思っていたが
友人関係とはそういうことではないんだと。
私が思い悩むように、私の友人たちも思い悩みながら
友人関係が途切れないよう、距離を測って守ってくれていたんだなと改めて思った。
感謝の気持ちと懺悔の気持ちで
胸がいっぱいになってしまった一冊です。
痛烈な言葉が多かったですが、
痛かった言葉も頑張ってノートに書き留めました。
同性の友達は、やはり、私にとってとても大切ですから。
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大手商社に勤めるキャリアウーマンの栄利子、主婦ブロガーとして人気の翔子。
どちらも同性の友達がおらず、人との距離感がわからない、
いわゆる痛い人の話。
展開が読めず、なかなか過激で、読んでいて楽しい話ではない。
共感できないというより、彼女らの気持ちがわからなかった。
タイトルのナイルパーチとは食用になる淡水魚、日本では白スズキとして輸入されていたらしい。かつてビクトリア湖に放流した結果、在来種を絶滅させてしまったという肉食魚。
ナイルパーチは悪くないのに、つまり本人に悪気はないのにまわりを傷つけてしまうということかと。
(図書館)
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ブログを通じて知り合った専業主婦とキャリア女子二人の物語。人間関係の難しさをこれでもかといろんな角度から描いたお話はある意味ホラーに近い。心の闇や孤独の心理描写が痛くて辛いが説得力がある。黒柚木全開の人間ドラマでした。生きるの面倒かも。
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表紙からは想像もつかないストーリー。
共感できることもあるけれど、「それはないやろ」的なところもある。
どちらにしろ、「女は怖い」シリーズ。
おぉ、こわ!
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なんとも、読んでいて
不快な気持ちがずっと離れない話しだった。。
女性同士のあるあるは感じるけど、
執着や依存が究極過ぎて、
読んでいて共感を通り越して
不快しかなかった。
それでも
止められず
読まずにはいられないのは、
やっぱり
何か共感しているのかなあ。。
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商社で働く栄利子は美しく有能で、裕福で優しい両親のもと恵まれた生活をしていた。三十になる栄利子がただ一つもっていないもの、それは女友達だった。最近夢中になって読んでいるブログは近所に住むきままな主婦のだらだらした日常を綴ったブログ。彼女の奔放さに、平和さにどうしようもなく惹かれていた栄利子は、ある日そのブログの主、翔子に偶然出会う。そのまま意気投合し、二人は素晴らしい親友になれると栄利子は信じていた……。
きつーい!えぐーい!痛い!久しぶりの切れ味の良い柚木さん。最初のうちは普通の人だったのに、坂道を転がり落ちる勢いで本性を現していくさまは恐怖なのだけどどこか滑稽で。地の文で時々一瞬正常に戻るのに数行後にはもう狂気に満ちているのが栄利子の異常さをよくあらわしていてよかった。誰一人として正しい人も優しい人もいない。私はどちらかというと翔子寄りの怠惰な人間なのでコミュニケーションは大事にしなくちゃならないと改めて思った。
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こわいよー。
ホラーだよー。途中ホントに逸脱していく江利子の思考回路に恐ろしくなってしまった。
自分まで狂気に侵されそうな気がした。ホラー小説でもないのに。
とはいえ、きっと自分のなかにも江利子の人を求め認められたいという渇望の一部も翔子のような部分も必ずあるのだろうと思った。
人の狂気もSNSにハマる怖さも色んなものを垣間見た気がする。
読んで良かった。
ただ、江利子も相当壊れてるけど、真織もかなり怖くあそこまで
逸脱したキャラにする必要はあったのだろうかと疑問。
イモけんびを婚約者に刺すって意味わかんない。彼女の存在が濃縮されデフォルメされた「ある種の女」なのかなーと思うけどでもあれはない。あり得なくて引く。彼女が登場する場面は別な小説になってる気がする。
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『3時のアッコちゃん』を読了後、すぐにこの作品を読み始めたのだが作品のテーマが真逆すぎて、驚きを隠せない。『ナイルパーチの女子会』というタイトルだけ、見るとおしゃれな感じの響きがする作品だが、中身は登場人物のほぼ全員が頭おかしいレベルのぶっ飛び具合。女という生物の怖さや生態をリアルに描きすぎている作品である。今、流行りのブロガーの方々ってこんな苦労を強いられているのかとか、そんな余計な心配をしてしまったり、女同士の友情ってあるのかなと思ったり、いろいろ考えさせられる作品であった。
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女友達がいないキャリアウーマンの栄利子と、おひょうというハンドルネームでブログを書いている翔子。
栄利子は翔子のブログの読者で
近所に住んでいることがわかり、実際に顔見知りになってからは、ストーカーのようにつきまとい始める。
最初、栄利子が極端すぎるし距離の詰め方も下手だし干渉し過ぎだし、女友達への理想の押し付けが半端じゃないしで、本当に怖かった。
ここまで女友達に期待するのもすごいと思ったし、自分の思い通りに動くコマではないし。
ただただ翔子がかわいそうと思ったけど、翔子にも少し極端なところも執着するところもあって、
二人の存在は紙一重なんだろうなと思った。
あたしは仲が良い友達も親友と呼べる子もいるけど、
ここまでの期待はしないし、
理想を追い求める栄利子がなんだかかわいそうだった。
すべてを型にはめて考える栄利子の生き方ってすごく窮屈だろうな。
それでも、いったん粉々に砕かれた栄利子も
栄利子から解放されたにも関わらず
夫との関係がうまくいかず、実家の父親の面倒をみることになってしまった翔子も
最後はなんだかすべて解き放たれたような清々しさに満ちていてよかった。
まだ変われるはず!
遅いなんてことはないし、気づけたことだけでも良かったと思う。
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勝手に『あまからカルテット』みたいな気持ちのいい友情の話を想像して読んだら、癖の強すぎる女子の友情?の話でした。笑 でもここまで極端じゃなくても、こういう人っているよね、とか、自分もボタンを一個掛け違えたらこうなっちゃうかも、とか、いろいろ考えてしまった。
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読書記録です。まだの人は読まないでね。
究極の「隣の芝は青い」ですね~。タメ息をつきながら見ているだけにしていれば良かったのに、女子会なんてするから…
ナイルパーチがどんなイキモノか知らずに読み始めたけど、最初に生態をバラすからどんなふうに登場人物たちが変化していくのかと思った割には「あ~あるある話かも」でした。もっとドロドロする?と期待…いや想像していた私が闇すぎる?!
元の場所には戻れなくても、人生こんなもんじゃない?というところに着地できるぐらいの経験は、誰にでも起こり得ることなんだと思います。
ただ、こういう感情のぶつかり方は、もっと若い間にやっちまったほうがいいんだけどね。
できれば心の軌道修正ができる10代のうちに。
遅くても人生の軌道修正ができる20代のうちに。
結婚適齢期がクリスマスケーキから大晦日になったとしても、30代ではなかなか変われないものだから。