紙の本
ブラックユーモア
2002/07/15 15:57
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投稿者:scarecrow - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書はホラーらしさ、つまり怖さを期待すると裏切られるかもしれない。なにしろ登場する化け物からしてレフトハンド−左手である。私の場合、左手の化け物と言えばまず思い浮かべるのがアダムスファミリー。アダムスファミリーと言えばブラックユーモアの集大成と言ったところだろうか。そして本書もまたアダムスファミリーとは趣が違うもののブラックユーモアを武器にしている。なにしろ宿主の人間の心臓を引っこ抜いて自分のもにした左腕が5本指を足変わりに走り回るホラーなんて、その設定からして本気なのか冗談なのかよくわからない。本編のストーリーの方もずっとそんな感じでやる気あるんだか無いんだかよくわからない登場人物が、怖いのかおもしろいのか、シリアスなのかコメディなのかよくわからないギリギリの境界線でドタバタ劇を演じている、とでも言えばイメージが伝わるだろうか。
と言うと、なんだか面白くなさそうだなーと思うかもしれないが、実際に読んでみると最初の部分こそダラダラと間延びしていて退屈なのだが、「レフトハンド」が登場するやいなやその魅力に取り付かれてしまった。設定が突飛なだけにこの異様な生物がなかなか面白く、ブラックなユーモアをそこらに撒き散らしてくれるのである。それに加えて登場人物達が先程の絶妙のバランスで綱渡りを演じてくれ、しかもそれが良い方に転んでおり、読んでいて飽きない。
最初にも述べた通りホラーとしては大した評価は出来ないのだが、娯楽作としてはなかなか面白い作品ではないかと思う。
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これを読んで不感症になっていることを実感
2001/11/10 15:31
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投稿者:呑如来 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『quarter mo@n』を読んだ後にこちらを読んだのだが、効果的に描かれている製薬会社の薄気味悪さや研究者の非人道的行為には、もうそれほど驚かされることがなくなってしまった。きっと感覚が麻痺してしまっているのだろう。
ラストで映画「バタリアン」のような終わりを廃し、少しだけ救いを見せているところは作者の優しさか(それはただの非徹底とも言えるが…)。しかし扱っているテーマが貴志祐介の『天使の囀り』とあまりに似てるため、そのうちごっちゃになってしまいそうだ。
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4つの「恐怖」
2001/05/29 04:25
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投稿者:春都 - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近ホラーを少しずつ読みだして思ったことは「恐怖」にもいくつかの種類があるということだ。
我が身の危険、未知、生理的な嫌悪・不快感、そして人間の怖ろしさなどが思い浮かぶが、いずれの作品でもそれらを取り混ぜて使っているようである。しかしただ並べ立てればいいというわけではなく、なにか突出したものがなくてはならない。
例えば『黒い家』などは人間の怖ろしさ・おぞましさを先鋭化させた作品だと僕は思っているし、『リング』は我が身の危険に対する恐怖を突きつめた作品といえるだろう。とにかく「なにか」がなければ恐怖も面白さもある程度までしか感じることは出来ないのである。
その観点でいくと『レフトハンド』は興味深い構成をしている。上記にあげた4つの恐怖原理(勝手に命名)を場面ごとに使い分けているようなのだ。
「未知」の生物であるLHVは人を襲うから「我が身の危険」を感じるし、本体から離れる際や動き回る姿などは「生理的な嫌悪感」を催させる以外の何ものでもない。そして後に判明するLHVの正体は「人間の怖ろしさ」だ。
これらを織り交ぜることで読者にそれぞれ異なった「恐怖」を感じさせようとしているのであろう。突出したものはなかったように思うが、あえて僕が一番良かったと感じたのをあげるとすれば「脱皮」の気持ち悪さだろう。この部分の筆は作者のノリを表しているかのように迷いがなく、グロテスクな映像が頭に飛び込んできたのだ。
面白いのは、これまで僕のイメージしていたホラーの「欠点」をこの作品は払拭してくれたこと。何かというと、未知の生物や訳の分からない怪物などが人を襲ってコワイのはたしかにそうなのだが「で、こいつらは結局何なのよ」という煮え切らない思いを抱えたまま終わってしまうことがホラーには多い気がしていたのである。すっきりした終わりでないことが読者にまた恐怖を与える方法だというのは判るし、無理に現実まで引きずり下ろさない方がよい作品もあるのだが、でもなあ……という感じだったのだ。
ところがこの「左腕」は解剖される。どんな組織がありそれはなんの機能を司っているのか。なぜ光や音に反応できるのか。どうやって食物を摂取し、なぜ動き回ることができるのか。津川の観察から推測されることにしか過ぎないのだが、未知の生物の不気味さと不思議さを現実レベルまで下ろしてくれるのだ。
もちろんそれで「左腕」のことをすべて知ってしまうなどという心配もなく、さらに先があるため興味は尽きることなく読みすすめていくことができる。
惜しむらくは、作者の提出の仕方があまり上手くないことだ。きわめて説明的な語り口が随所に見られるし、また視点の混乱がはなはだしいなど文章的な未熟さもネックとなっている。ストーリーは飽きさせないよう山をいくつもこしらえているのだが、ところどころ読みすすめるのに苦労した。勢いで書ききったのであろうと思えるのだが。
ホラーはいま隆盛の時機にあるという。『レフトハンド』は完成度は低いかもしれないが、読者を惹きつける理由が何となく判ったような面白い作品であった。
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クォータームーンに引き続き…
2001/02/01 03:04
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投稿者:三月うさぎ - この投稿者のレビュー一覧を見る
クォータームーンと同じで中心に据えていることは、「現代社会の延長」ということです。ここで取り上げられた会社では、人のためを思って開発された薬品が結局は人間を滅ぼしかねない危険物となり、しかしその事実を会社役員はトップシークレットとして偽の情報を流すところは本当に現代社会にあってもおかしくない問題なのではないでしょうか。現実の世界との境界線の上を歩いているような気分になります。ラストがはっきりしないのも、登場人物にはまだその先に待ち受けている運命、人生があるのだということを示し、まさに現実との境をうやむやにする一つの演出ではないかと思います。
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埼玉の製薬会社『テルンジャパン』3号棟でバイオハザードが発生した。
しかし会社も政府も、その事実をひた隠しにしていた。
3号棟の主任・影山が漏れ出した殺人ウイルス・通称『LHV』を盾に立てこもっていたからだ。
『LHV』の調査のため学術調査員として3号棟に入り込んだ津川はその恐るべき正体を知る。
えーと、いわゆるバイオハザードものなので、ホラーとはちょっと違います。
違うと思います。
何を怖いと思うかは人それぞれではありますが、私は怖くありませんでした。
というかですね、『LHV』―――通称『レフトハンド・ウイルス』に感染しますと、左腕が抜けるんですよ。
なんてわかりやすいネーミングでしょう。
手がもげて血まみれになって死ぬってのは怖い気がします。
でもそれ以上に、抜けた左腕がルンタタでそのへん走り回ってるてのがどうしてもギャグにしか見えないんですが。
や、ルンタタはちょっと違うとしても!
なんと吃驚、このウイルスに感染すると左腕が繭を作って巨大化し、最後には宿主の心臓を自分の物にして『脱皮』しちまうのです。
そりゃ人間の方は心臓を取られたら生きていけません。
しかし微に入り細に入り、その独立した『左腕』の形態やらを具体的に描写してもらって、どんなに想像してもやっぱり怖くありません。
だって『左腕』なんだもんよ(涙)!?
『エイリアン』みたく甲羅があって分泌液でネバネバしてて腋のあたりに『口』があって『触手』が生えてて死体を貪り食おうが跳ねながら歩き回ろうが、それが『左腕』だというだけで全然怖くないんだっ(涙)!!
まー『怖さ』を求める小説じゃないんだろうが……。
ちなみに登場人物はみんなどっか嫌な奴です。
責任逃れをするお役人、いざとなったら会社にフィリピンに逃がしてもらう予定の3号棟の上司、感染モデルに選ばれた嘘つきの家出娘に、30過ぎても無意識に男に媚を売る女性社員、主人公(だと思う)の津川も『LHV』に夢中で周りが見えない学者バカで独善的な男です。(……とかいうと本当にヤな奴だよおい)(でも実際私はこいつが嫌い)
ともかくそういった連中が『LHV』に関わり、その謎を解き明かそうと、あるいは闇に葬ろうとする物語です。
そして最後の最後に、『嫌な奴』だった何人かは海を目指すのです。
LHVが生まれたカンブリアの海ではないけれど。
登録商標を背負った女神が、炎に焼き尽くされる前に。
人間を殺してしまう恐ろしいウイルスなのに、そこから生まれた『左腕』は実際はひどく弱い生き物でしかないのが少し悲しかったかも。
しかしこのウイルス、スキンケア開発から生まれたってのは……なんか……(そりゃ大抵の女はスキンケア自体が娯楽だが((C)OL進化論))。
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左腕が、本体の人間を離れて独立“歩行”するという、まかり間違えば C級スプラッタ映画のようになりがちな設定であるが、後半、何故左手だけなのかという説明が巧みであり、感心してしまうほどである。ただ、そういった科学的な根拠がしっかりしている分、ホラー要因が消されてしまっている感があるが、著者の力量でその分はカバーしているように感じる。
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サイエンスホラーって分類になるんでしょうか。ウィルスものです。
中井さん、俺は嫌いではないのですが、文章自体はさほど上手なほうではないような。
カンブリアについての説明がグダグダだし、全体的にももっと削れる気が。
大満足できる本ではないとは思いますが、サラリと読むにはまぁまぁ、といった感じです。
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<きかっけ>角川ホラー小説で面白そうな本を探していた買った本です。
<コメント>実におかしなストーリーです 笑 とは言ってもホラー小説なんですけどもかいつまんでいってしまうと、
「ある製薬会社でウィルス漏洩事件がおき棟が封鎖される。そして、そのウィルスに感染したものは、死に至ってしまいやがて…左手だけが活動し始め、人間を襲う」というストーリー タイトルのまんまなんですけどねぇ(^^;)
結構楽しかったですよ♪
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製薬会社・テルジャパンの埼玉総合研究所の三号棟でウィルスの漏洩事故が発生した。漏れだしたのは感染者の左腕を捕獲し脱皮する、致死率100%のレフトハンドウィルスと呼ばれる未知のウィルスだった…。
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これはマジいける!
先取り小説だな〜
1998年に書かれてるのに って思わせます
読んでみて!
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製薬会社テルン・ジャパンの埼玉県研究所は、広大な敷地を持っていた。
木々に囲まれえた中に四つ建物を持ち三号棟では、スキンケヤーの研究が進められてたはずだった。
八月の今は、シートに覆われて建物の形が見えない。
周囲は黄色い柵に覆われて自衛隊が監視をしている。
ここ三号棟で六月にウィルス漏洩事件が発生したのだ。
漏洩事件の直後、主任を務めていた研究者影山智博が三号棟を乗っ取った。
彼は研究活動の続行を要請、受け入れなければウィルスを外へ垂れ流すと脅かす。
そして、テルン・ジャパンは一月で120万のアルバイトを募集した。
このアルバイトは影山の研究のためにテルン・ジャパンが用意したのだった。
そして若い二人が宇宙服を想像させるゴム装備を着て三号棟に・・・。
津川は恩師の後を引き継ぎ厚生省の学術調査員として派遣されて来た。
彼は、資料を見て千載一遇のチャンスでは?と考えていた。
自衛隊も厚生省の人々も入ったことが無い三号棟に入っていった・・・。
そして、影山に見せられた物はウィルスの感染された人の左腕だった。
ウィルスの名は、通称レフトハンドウィルス。
LHVと呼ばれてまったく未知のウィルスで致死率は100%。
空気感染をして、感染した人は、左腕が肥大し繭が出来やがて左手だけが未知の生物になり人は死んでしまう。
ウィルスの出所、確かなことがまるで解らない。
このウィルスと三号棟に関わるテルン・ジャパンの人々と厚生省の役人が二ヶ月も関わらない理由とは?
アルバイトで雇われた二人と津川によって事態が動き始める。
バイオハザードのホラーです。
実際にあったらバイオハザード4になるのかな?
ホラーは、怖い怖いと思わせるように書きますけどこの本の登場人物が個性的でしかも展開の先が読めないのです。
バイオハザードの中の人々の動きがとっても面白いです。
テンポもいいのでいいですよ
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これはバイオハザートなホラー?なんだろうか。
日本ホラーを受賞してるくらいだから、ホラーなんだろう。
きっと。
ウィルスに感染すると
まず、左腕が膨れ、次に脱皮、さらに離脱
そして本体は養分を吸い取られ死に至る、というもの。
人体の一部であるはずの左腕が単独で
ウジャウジャとサカサカと暗闇を動き回るおぞましさには
嫌悪すら感じてしまうほど。
何気に、エイリアンチックでSF感も漂うが
脱皮辺りの気持ち悪い描写はホラーっぽいカモしれない。
とにかく、その独特奇抜な発想力はかなりステキ。
ありえないほどの設定でありながらも
フィクションであって欲しいと願わずに入られないほどの
リアルを感じさせる。
世界観だけで言えば眩しいほどに輝いている。
が、哀しいかな
物語は中盤以降
急降下ともいえる速度で一気グダグダに。
そして、そのままラストまで走り続けてしまい
残念で残念な読後感のみを残すことになった。
期待が大きかっただけにガックリガクガク。
面白いのだが、面白くはなかった作品として記憶される。
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右手がすぽっとぬけて這い回るという、まさに海外のホラー映画にありそうな題材なのに、大味じゃなくて日本のホラー小説っぽく仕上がってるのが素晴らしい。
ウイルスに侵されることを恐れながらもドコか感覚が麻痺ってる研究所員の様子が会話の節々に出てて、生々しい。
主人公のウィルスに別の意味でとりつかれたような狂いっぷりもまた最高。
ラストがぼんやりしてるので、出来れば後日談が読んでみたいところ。
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「レフトハンド」、最初にその題を見た時、自分の左手が自分の思うように動かせず、勝手に動きだすエイリアンハンドシンドロームのせいで事件になるという内容だと思いました。
ですが、実際は「LHV」というウイルスに空気感染、又は、接触感染した人間が発症後に左手が「繭」に包まれ、腕ごと肉体から「脱皮」するという当時に流行った「バイオ・ハザード」モノという印象でした。かといって、左手対人間という全面闘争になるわけではなく、恐ろしいウイルスの対処を背景にした人間ドラマのような内容だと感じました。
外部との交流があり、「LHV」が蔓延している閉鎖空間が舞台になっていて、今回の「バイオ・ハザード」の責任問題で焦っている外部と「LHV」を個人的興味で究明しようとする焦りのない閉鎖空間とのギャップはどこか微笑ましさを感じました。
けれど、中盤になるにつれてホラー小説であることを思い出したかのように読者に恐怖を与えてくるようになり、「LHV」患者の描写や左手の描写は独特の世界観ながら想像すると背筋が寒くなりました。
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研究所でバイオハザードが起きて、感染すると左手が脱皮するお話。
まさに左手だけバイオハザード。
メインの主人公と思ってた人が端役だったり、何か好転するわけでもないお話。
これを読んだ後は、カンブリア宮殿を見る度にこの作品を思い出すことうけあい