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「100年」予測ではないものの、歴史をさかのぼることにより、ウクライナ、キプロス、トルコ等、現在ヨーロッパが抱えている様々な火種(Flashpoint)を指摘する。現在は過去の上にしか成り立たない、ということを改めて認識させられる一冊。
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ヒトラーにとって啓蒙主義は、キリスト教と同様、ドイツ人から意志を奪った憎むべきものだった。リベラルや社会主義者は、味方の軍隊を後ろから攻撃するようなことをしていた。ただ、人種や民族が人間にとって重要なものだと言うなら、人種、民族に優劣があると言える根拠を示さなくてはならない。そこでヒトラーが着目したのはユダヤ人である。ユダヤ人は数ある民族でも特異なものである。他にない特徴を多く備えていたからだ。まず彼らには母国というものがなかった。世界のあちこちの国に散らばり、それぞれが民族としてアイデンティティを保ちながら、その土地に溶け込んで暮らしていた。ヒトラーはユダヤ人を差別の対象にしたが、その根拠についてはこんな説明をしている。まず、ユダヤ人はあらゆる土地にいるが、どこにいても、必ずそこに悲しみをもたらしているというのだ。住んでいる国を利用して自らを富ませるのが彼らの戦略だからだという。自らは豊になったうえで、利用した国は破滅に追いやる。それがユダヤ人だとヒトラーは決めつけた。またヒトラーは、ユダヤ人を啓蒙主義の受益者として見ていた。他民族に比べ、その利益ははるかに大きいと見た。ユダヤ人はかつて、社会の中でも虐げられた存在だった。しかし啓蒙主義の時代となり、全ての人間は平等であると言われ出してからは状況が変わった。ロックなどが著作の中で寛容について説いたこともユダヤ時の立場に影響した。啓蒙主義の時代となってから多くのユダヤ人が頭角を現した。スピノザやロスチャイルド、マルクスなどだ。ヒトラーは資本主義、共産主義の両方を良く思っておらず、どちらも悪いものになったのは主にユダヤ人の責任だとしていた。そして全ての悪の根源は啓蒙主義だと考えた。近代の世界を作ったのはユダヤ人であり、彼らはあくまで自分たちの利益のために今のような世界を作り上げたとヒトラーは主張した 。
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2015/9/28読了。
今回はヨーロッパにテーマを絞り、歴史的経緯と現状、将来の可能性について詳細に記述されている。
ヨーロッパの歴史や文化に基づいた地政学的な予測であり、信憑性が高いように感じられる。
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地政学の考え方は地理と歴史がその国の将来の戦略を方向付けるというものだが、まさしく理論ずくめでストーリーがつながっていくさまは爽快。特にルターの考えのところ、個人による聖書の解釈から、宗教に対する自然科学の興りに繋がり、大航海時代背景もあいまってとついにはヨーロッパに世界を征服する力と思想をもたらしたという流れは非常にしっくりくる。
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「人間が戦争をするのは、愚かだからでも、過去に学んでいないからでもない。戦争がいかに悲惨なものかは誰もが知っており、したいと望む人間はいない。戦争をするのはその必要に迫られるからだ。戦争をするよう現実に強制されるのである。ヨーロッパ人はもちろん人間なので、他の地域の人間と同様、あるいは過去の彼らと同様、いつでも悲惨な戦争を選択せざるを得ない状況に追い込まれる可能性はある。戦争か平和か、その選択を迫られる時は来る。ヨーロッパ人は過去に何度も戦争を選択してきた。今後も選択する時はあるだろう。まだ何も終わってはいない。人間にとって重要なことは、いつまでも終わることはないのである。」(411)
その国が地理的にどこに位置しているかによってその運命が大きく左右される。そのことを強く感じた内容だった。ロシア、ドイツ、地中海、トルコ、このあたりを中心に、歴史から現在、そして近未来に至るまで本当に丁寧に読み解いてくれている本でした。世界地図片手にドキドキしながら読みました。
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今年(2016)になって、フリードマン氏の書かれた「予測本」の三部作を読みつづけて、この本で読破しました。どの本にも一作目の「100年予測」というタイトルが入っていますが、実際の長期予測をしている本は一冊目のみで、それ以降の二作は、私達の生活に密接する近未来の予測をしています。
100年後の長期予測についても、それに至るまでの変化を解説してくれているので面白いのですが、私の社会人としての興味は、今後20年以内に起こり得ることにあります。
この本は欧州に限定して解説していますが、かつて覇権を取った欧州の国が一つにまとまる難しさ、しかし、その必要性も理解できました。
以下は気になったポイントです。
・1942年ころ、ソ連の石油のほとんどはバクーで産出されていたので、ヒトラーは是が非でもバクーを奪い取りたかった。スターリングラード、ドン川とボルガ川の間の土地、バクーを自分達のものにすれば、戦争は終わると知っていた(p27)
・共産主義者は保守主義者よりも、社会主義者を憎んでいた。両者は支持層が同じ労働者階級だから(p35)
・ウィーンは、第二次世界大戦後、欧州の縮図のようだった。ベルリン同様に、ソ連・アメリカ・イギリス・フランスの4か国によって分割統治されていた。実質はアメリカとソ連の二分割(p46)
・ソ連がスパイを雇う時にとった手段は家族を人質に取る方法、アメリカは市民権証明書とグリーンカードを提供した(p50)
・732年にカールマルテル(フランス)が、トゥール・ポアティエの戦いに勝利したことで、イスラム教徒はピレネー山脈の西に押し戻された。もし敗れていたら、欧州は今と違った場所になっていただろう(p63)
・オスマン帝国がコンスタンティノープルを制圧することで、欧州では、シルクロードと地中海が閉じられて海上貿易が崩壊した(p66)
・南向きの航路を支配していたポルトガルはコロンブスの申し出(西回り)を断ったが、スペインは違った。インドへ行く経路を必要としていたので(p70)
・欧州には、エンリケのような上品で洗練された顔と、コルテスのような冷酷な悪党の顔があり、二人には共通点もあった(p74)
・マヤ人は近い将来にアステカに征服されると恐れていて、その恐怖から、スペイン人に味方した(p77)
・インカ帝国は複数の部族が合同で政権を支えていたが、その部族の多くはインカ帝国から恩恵を被っていたわけではなく、むしろ被害者と思っていた。ピサロは、帝国支配者の圧政を利用して、帝国に不満を持つ者を味方につけた。欧州人がなぜ世界を征服できたのかを理解するうえで、非常に重要な事実である(p78)
・アステカに虐げられていた人々が立ち上がったことが大きい、スペイン人やキリスト教が滅ぼしたアステカも、わずか数世紀前に権力を掌握したばかり、それまでの神に代り自分達の神を信仰するように人民に強いた(p81)
・ポルトガル、スペインが世界征服に乗り出した大きな理由として、1)外洋を航海できる帆船を製造する技術、2)インド・中国との交易路の開発、である。1492年に欧州で最初の世界的大国が誕生、1992年に最後の大国が崩壊した(p83)
・欧州の民衆の大きな確信とは、1)自分達の生きている世界が宇宙の中心、2)欧州が世界の中心、3)欧州の中心は教会(p88)
・ルターの究極の主張は、ローマ司教は神と特別な関係にあるのではない、聖書は一人で読める。そして、カトリックは欧州内のそれまで支配してきた地域における優位を失った。司祭の権威を下げることにもなった(p89、91)
・ルター主義の論理を敷衍していくと、聖書だけ読んでいても不十分、自然について知るには、聖書を読む以外のことも必要となる、それが科学であった(p94)
・人間の思考を、自然を理解するための機械とみなした、理性を使えばいずれ自然界を完全に理解できると考えた。科学の敵は迷信である。迷信とは、証拠ではなく権威に基づく信念のこと(p97)
・啓蒙主義は、理性を重んじることで、欧州の体制に革命を起こしてしまったことにある(p100)
・第一次世界大戦の西部戦線で起きていたこと、1)科学技術の進歩による新しい武器の考案・開発、2)工業の発達による大量生産、3)国家意識の浸透による軍隊統制の維持のしやすさが向上(p118)
・ナチス、共産党を支持した人の多くは、第一次世界大戦に従軍した人々、戦争中と同様の原理で行動した(p125)
・1930年代には、ウクライナ等の地域で、計画的な飢餓によって死んだ人は2000万人にもなった。スターリンは、小作農から穀物を取り上げ、西ヨーロッパから技術を買った(p129)
・ロシアでは革命を支配したのは軍人ではなく知識人、ドイツでは元軍人が革命を主導したが、軍の内部で高い地位にあった者ではない(p130)
・元々が貧困であればすべてを失っても大した変化はない、中流階級が全てを失えば生活は激変する。ドイツでは一次世界大戦後に、普通の人が代償を払った(p133)
・1939-45年までのたった6年間に欧州の10分の1(5000万人以上)が戦争で死んだ計算となる。1914-45年だと7100万人、スターリン下での餓死者2000万人を加えると9100万人となる(p143、147)
・アメリカは参戦の条件として、1)イギリスに対する駆逐艦50隻の貸し出し、2)ハリファックス基地を除く西半球の全海軍基地(バミューダ、ニューファンドランド、東バハマ、ジャマイカ、セントルシア等)の貸し出し、であった。これにより、カリブ海の島々がアメリカの支配下となった(p168、390)
・イギリスはECに加盟する代わりに、1960年にEFTAを設立したが失敗に終わった。アメリカの支持が得られなかった。その後、イギリス自身も含めて多くはEFTAを離れた。現在は、ノルウェー、アイスランド、スイス、リヒテンシュタインで存続している(p188)
・EUの問題として、1)2008.8に、ロシアとジョージア(クルジア)で戦争勃発、2)同年にリーマン・ブラザーズ破綻(p198)
・銀行は、貸出による利子から、債権取引からの利益を多くあ���るようになった。(p203)
・若者の失業率の高さは現体制を脅かす影響力をもたないが、より高齢の中流階級の失業者が彼らと結びついたとき、現体制を脅かす影響力とエネルギーを持ちえる(p213)
・ソ連崩壊後、マーストリヒト条約締結後に生じた戦争の特徴として、1)小集団は消えることなく生き続けた、2)キリスト教とイスラム教が交じり合う教会の地域で起きている(p214)
・バルカンは3つの強大な力に違う方向から引っ張られることで、分裂してきた。南東のトルコ、東・北東のロシア、北西のゲルマン国家である(p227)
・バルカンの民族同士で激しい戦闘が繰り広げられるのは、大国からの圧力が弱まった時に限られる(p228)
・19世紀にロシアが得たものは、1)大コーカサスの支配権を失うことはないという保証、2)小コーカサスを通り抜ける道の確保、3)バクー油田(p241)
・ドイツは二つの決断を下す必要がある、1)フランスとの関係、2)ロシアとの関係(p265)
・イギリスはミシシッピ川流域から大量に流れてくる食糧を利用して本国の国民の食糧費を大幅に下げて、農民に都市の工場労働者になるように促した、フランスは農民を保護してアメリカ食糧をあまり利用しなかった(p322)
・フランスにとって重要な地域は、1)欧州平野(ドイツ)、2)英仏海峡(イギリス)、3)地中海とアフリカ(p329)
・欧州の差別は、その人のふるまいではなく、どの民族に生まれたかが重要で、よそ者は何をしても、いつまでもよそ者(p342)
・欧州のかつての植民地の人達には、独立後、かつての宗主国へと移住する権利が与えられている(p344)
・欧州人は、トルコ人を異邦人とみている、1)多くがキリスト教徒ではなく、イスラム教徒、2)東ローマ帝国を滅ぼしたのがオスマン帝国であること(p359)
・クルドは国土を持たない国家ようになっている、イラク・イラン・シリア・トルコに跨って住んでいる(p371)
・イギリスは1066年にノルマン人に征服された。ノルマン人とは、スカンジナビア半島から、フランス北西部へ移住した人(p381)
・欧州が統合されなかった理由の一つとして、北海の存在や英仏海峡がある。寒冷湿潤、風も強く天気が変わりやすく航海は容易ではない。16世紀以降は、スペイン人、19世紀にナポレオン、20世紀にヒトラーからの侵攻に耐えられた(p383)
・利害の対立が大きくなり、戦った場合に生じる結果の方が、戦わなかった場合に生じる結果よりもましだと判断したときに、人間は戦争をする(p401)
2016年3月12日作成
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新100年予測と言うタイトルはミスリーディングだが、ヨーロッパの歴史を紐解いて、同地域の現在そして近い将来の行く末について深い考察を与えている。現代ヨーロッパを知るにはもってこいの一冊。
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『今のEUを見ていると、父の言葉を思い出す。EUとはまさに「何もなかったことにしてしまう」ための機関だからだ。もちろん、皆、過去に何があったかは知っているし、その過去に嫌悪感を抱いていないわけではない。
過去に起きたこと、見聞きしてきたことはすべて踏まえた上で、長らく存在してきた悪魔をヨーロッパから切り離そうとする試み、それがEUなのだろうと思う。
ただ、一方で、歴史を超越するなどということがそう簡単にできるのか、とも思う。この本では、ヨーロッパの暗部に目を向けて行く。』
素晴らしい作品。和訳のタイトルがちょっと違うよなぁ〜、って思うけど…。
『100年予測』とは全然違う。もっと奥深いものがある。単なる続編じゃない。
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【由来】
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【期待したもの】
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※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。
【要約】
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【ノート】
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【目次】