紙の本
ああ玉杯に花うけて
2021/08/14 21:51
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投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦前にベストセラーになった児童文学、特に経済面で中学に進学できなかった少年たちの心に刺さった作品らしい。苦学や親孝行、恩義、忠義、純真などがもてはやされている。
戦前と言うことで、作中の少年たちがあこがれるのは中学や私学を問わず楠公や北畠親房であり、源頼朝や徳川家康、足利尊氏は朝廷にたてついたとして尊敬されていない。意外だったのは、活動写真を見に行く事が不良とみなされていたこと。
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清々しい少年文学。正直に真っ当な生き方をした者が幸せになれるという、気持ちのいい終わり方でした。忠君、忠孝といった戦前の価値観がよくうかがえる作品でもありました。当時の教育の雰囲気も、その一端を見ることができるものでした。政党に関しても、あまりいい書かれ方がしてないのが、当時の一般的風潮なのか、作者の主観なのかはわかりません。まさに世間は大正デモクラシー華やかなりしころでしょうが‥‥
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戦後を支えた当時の30〜40代が幼い頃読んでいたという本。代表的日本人(斎藤孝)で紹介されていたので読んだ。チビで貧乏な主人公がいじわるな周りの人たちに侮辱されてもなお、ひたむきにがんばっていくという話。現代の漫画やアニメにはあるあるなストーリーだが、当時の生活感、考え方は全然今と違う。正義、年上を敬うこと、娯楽に目移りせず勉学に真面目にはげむこと、境遇に関係なく努力することの大切さ
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政治活動に行き詰まって落ちぶれた家の息子が
かつての同輩に軽蔑されながら豆腐屋の手伝いをやって
毎日のように不良少年から恐喝を受けつつも
私塾に通い、やがて高等学校の入試に合格するという話
昭和2年である…田中義一の機密費流用疑惑が取り沙汰され
芥川龍之介が自殺した年
非常に厭世的な空気のある中、連載されたこの小説は
個人主義、自由主義、快楽主義を強く批判して
勤勉克己をうながし
天下国家への忠節の大切さを人情味あふれる筆致で説いている
根本にあるのは天皇のもとの平等
シンプルな世界観で全ての雑音をシャットアウトするようなところはある
だが汚い現実を排除しつつ
少年たちの承認欲求を充分に満たしうるものでもあった
戦後、梶原一騎に影響を与えたとされる
梶原はある種の敗北主義でこれをアレンジしたが
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戦前の旧制浦和中学校を舞台とした小説。学園生活だけでなく、社会の貧困問題なども描かれる。冒頭から浦和町の助役の息子が権威を背景に豆腐屋の豆腐を無料で食べる。日本の公務員は途上国並みに利権にまみれて腐敗している。『青天を衝け』第27回「篤太夫、駿府で励む」(2021年9月19日)でも官軍の兵が町人への強請りたかりしているとの指摘がなされた。
「商売をしたからって助役の息子に食われてしまうばかりだ」との台詞がある(44頁)。これでは真っ当な商売ができない。公務員に上納しても商売が成り立つくらいに頑張るような精神論根性論は有害である。公務員に上納しても商売が成り立つならば、その分、消費者から搾取していることになる。そのような商売は有害である。
しかも、抗議した人を警察を使って有罪にした。さらに冤罪を作り上げようとする(122頁)。どうしようもないほど悪辣である。一方で助役の息子の改心は、あまりに物語として都合良すぎて興覚めである。とはいえ改心した人物と友情物語にならずにフェードアウトした点は良かった。昨日の敵は今日の友展開は一層の興覚めである。