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近代日本文学作家が探偵として活躍するシリーズはちょくちょく見かけるけど、とうとうあの宮澤賢治が探偵役の物語が! ということで勇んで手に取った。日常の謎を中心にするのかと思いきやなかなかに重たい展開だったので初めはちょっと面食らったけれども、当時の世相や地方の風物を的確に織り込んであると思う。当時最先端の科学に造詣が深く、インバネス姿で片手には方位磁石やルーペを忍ばせた皮のトランク。そうだ、確かにどこかあの名探偵に似ている。
そして何より文庫版解説の著者にびっくりだよ!
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名探偵:宮澤賢治
ワトソン:藤原嘉藤冶
ケンジ、カトジと呼び合う。
『ながれたりげにながれたり』
『マコトノ草ノ種マケリ』
『かれ草の雪とけたれば』
『馬が一疋』
短編が4編。
2編めは、ええっ、宮澤賢治なのに血腥い!…と思ったけれど…
岩手の風土や、時代の空気、農民の生活事情が丹念に描かれていて、「賢治の時代」に入り込むことが出来る。
賢治は、村人の困り事の相談に乗ったり、争議の調停をしたりしていたことが、作品からも読み取れるから、具体的にはこんなこともあったかもしれないな、と想像させる。
賢治好きには嬉しい1冊。
方言による会話も、読み進むうちにすっかり慣れた。
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ちょこっと立ち読み。
方言がぽくぽくとやわらかくて好きかも。
その後購入&読了。
良いコンビなのだけど、偉人文人探偵譚はさほど珍しくもないのであまり印象に残らないタイプの本かも。
方言は良かったんですけどね~。
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ミステリの本筋は強くないが、時代背景、方言、人物描写が丁寧。漫画化、映像化はしやすそう。モリアーティは現れるのか。7.0
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真実なるものの社会性を自覚している探偵を初めて見た。少し新鮮。
各話の最後についている作者の二行ほどの注記は、おしなべて現地を訪れてみるようにと誘っている。
なるほど、文体に透けて見える土地や人への視線が、こうもあたたかく同時に切実なわけだ。
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宮澤賢治の人としての魅力がフィクションの中で存分に発揮されています。ミステリーとしては本格の部類なんでしょうね。謎の魅力よりも登場人物のキャラクターで読み進めた感じです。
敢えて二点、一点は時々、地元というか、そこに暮らしている人なら言葉にしないようなことを登場人物が話している部分があるような気がしました。その地方の人なら知っていることを、セリフの中で読者に説明させている。地の文の方がいいんじゃないかと思ったところがちょっとあったこと。二点目に、ケンジのセリフの中に「岩手県全土に風評被害が出かねねえ」みたいなのがあったのだけれど、ケンジのセリフとしてはどうなのかなあ、と思ってしまったこと。そこで、星3つとさせてもらいました。賢治の推理手帳1とあるので2もあるのでしょう。次回も読みます。
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宮沢賢治を探偵役として登場させ、実際の作品と絡めながら謎解きをするという試みが斬新です。
彼の作品について詳しかったらもっと楽しめたはずなのに、知識不足が悔やまれます。
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宮沢賢治の友人藤原嘉藤治ことカトジが
持ち込んでくる事件を
宮沢賢治本人が、化学や物理を元に
ひもといていくミステリーです
ところどころに、賢治の詩もでて
話し言葉が岩手弁なところも面白い
賢治の解釈は仏教の心に沿い
人に優しく、楽しいミステリー小説でした
シリーズ化になるのかな楽しみです
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推理小説はふたつの効用がある。一つは、頭の体操のクイズ雑誌が根強く売れるように、娯楽として大きな需要があるので利益が見込めるということだ。一つは、犯人を特定するためにはその周りの風俗・社会状況を詳しく描かなければならないから、対象の周りに興味のある読者ならば格好の解説書になるということだ。
世の中に宮澤賢治ファンは多い。かくいう私も、もう既に45年来のファンである。岡山の地から既に二回も賢治を慕って花巻を旅したし、一回は偶然、賢治の旧居前で弟の宮澤清六さんと言葉を交わしたことさえある。
だからこそ、こういう小説には惹かれてしまうと同時に、悪態をつかざるを得ない。
時代はまだ賢治が農学校の教師をしていた頃であり、素封家の家の恩恵を受けながらも嫌っていた時である。友人の藤原嘉藤治をワトソンにして、ホームズのように推理をする。私も泊まったことのある大沢温泉の混浴川風呂から見えた河童の話を見事に推理してゆく。いろんな細かい描写が、あゝ大正11年の花巻はこうだったに違いないと思わせてくれて、嬉しくなる。賢治と父親との微妙な関係にも異論はない。しかし、やはりどうしても賢治が殺人事件に首を突っ込むような、こんな大変なことに二度も三度も入ってゆくのが違和感あってたまらない。いくら、そこから派生した詩や短歌が、それとなく提出されようとも、賢治の作品にこれらの事件が大きく影響されなかったはずはないからだ。事件はフィクションだよと、言われようとも、賢治ファンとしては、作品を穢されたようで、やはり我慢出来ないのである。
そういう意味では、殺人事件にもならない第一章と四章、特に一章は、良くで来ていたと思う。ただ、正直続編は読みたくはない。
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宮沢賢治をホームズに仕立てたシリーズもの。
登場人物のしゃべり方が独特で、ミステリーなんだけど、登場人物たちそれぞれにもの悲しさがほのかに漂っているのが、世界観にあっていて、好きだなと思う。
あまり宮沢賢治について知識がないけれど、事件の種明かしにしても、よく調べられているんだろう、というのがわかる、かな。
ただ、万人受けはしないと思う。。。本として、悪くはないのだけれど……何が物足りないと思うのかは、よくわからない。
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宮沢賢治探偵登場の巻。
最初のお話が、日常の謎系だったので、そういう謎ばかり
だと思ったら、首なし死体まで登場でのけぞった。
ワトソン役のカトジさんとの関係がほのぼのしていて
微笑ましい。
賢治の作品からインスパイアされてるようなので、
詳しい方が楽しめるのかなと思うけど、知らなくても
のんきに読むには支障なし。
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登場する宮沢賢治の人物像は、イメージ通りだった。犯行の手口も無茶な事はなく、納得感があった。でも、没入感があまりなかった。
なんでだろうか?主要キャストが2人だけなので話の広がりがなかったのかな?
お父さんとの確執、妹とのエピソードなどもっと書ければ盛り上がったんでは。短編だからスペース的に難しいとは思うが。
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図書館で借りて中ほどまで読んで返却日になってしまったので読了できず仕舞。
推理ものが苦手でトリックを全然理解できないので時間かけすぎました。
でもわからないなりに雰囲気は嫌いじゃなかった。
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宮澤賢治が探偵役、友人の藤原嘉藤治がワトソン役になって難事件を解決する連作短編集。どの話にも宮沢賢治の詩、岩手の名所や文化財、賢治ファンがニヤリさせられる小ネタが用いられており、なかなか面白いパスティーシュに仕上がっていると思います。
豪快な物理トリックは実際に成立するかは微妙なところですが、この手のトリックを使った作品は最近ではあまり見られないので価値があります。【マコトノ草ノ種マケリ】がお気に入りです。
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国文学科の卒論に選んだのが宮澤賢治。
小学校の高学年から高校にかけて、心の中で首を傾げながら彼の童話を読み重ねていった。
多くの童話や児童文学とは異なって、どうしてもふさわしい映像を思い浮かべられなかった。それは具象だけでは描ききれなくて、その証拠に、何本もの映画が作られたけれど、どれを観ても賢治の世界観…心象スケッチを再現しているとは思えなかった。
この本を見つけた時、最初は賢治への冒瀆だと感じた。法華経信仰に身を捧げ、妹トシをこよなく愛し、東北の農業振興に尽くした彼を、ホームズに見立てるなんて…。
ところが、である。そこに、私が思い描いたとおりの賢治がいたのだ。ふとしたことに目をつけると、もうそこから目を離せなくなる。誰が話しかけても、もう聞こえない。でも、人一倍の優しさで、ただ謎を解くのではなく、その陰にある苦しみや悲しみを抱える人たちの思いを包みこんで、不幸になってはならない人たちを、決して不幸な結末には導かない。
この作家は私と同じく、賢治を敬愛されているのだと思いました。そうでなければ書けない本です。