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あの人情派作家の加藤元がミステリを書いたとな!とまずは驚く。
今までになくたくさんの登場人物が出て来て思わず人間相関図を書きつつ読む。
一人暮らしの70代女性の死。部屋を受け継いだ姪が解き明かしていく伯母の人生と、その秘密
同じアパートに住む人、それぞれの人生と家族との愛憎。誰もが自分にとって大切な人を持っている。あぁそうか。誰かを一番大切だと思うということは、他の誰かは大切じゃない、ということなのか。誰かを守るということは、他の誰かは守れないということか。
人は神じゃない。誰もが自分の一番だけを必死に守っている。人って悲しい。悲しくて寂しい。
でも、もし、自分にとって大切な人がいるように、他の誰かにも大切な人がいるのだと、そう気付けたら。きっと世界は少しだけ温かくなるのだろう。
悲しくて寂しい世界にも、きっと光が見えるのだろう
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加藤元。初めて読んだが、なかなか良かった。それぞれの人がほんの少し勇気を出して、真実を言っていれば。10号室の子どもが亡くなるのは避けられなかったとしても、10号室の彼女が死ぬまで苦しむこともなかったのかと思うとやりきれない。
物語は10号室の女性が亡くなり、その姪が部屋を譲り受け、そこに暮らし始めるところから始まる。10号室の女性には、20数年前に子どもが行方不明となった事件があった。
彼女は高校の元教師であり、なんの面白味もないような人物だと周りからは思われ、実際人付き合いもほとんどしてこなかった。そんな彼女にも裏の顔(良い意味で)があり、人間らしさを持ち備えている人物であった。
ラーメン屋で出会った教え子と恋人関係になり、子どもを授かったのだが、1人で育て、時期にその子が行方不明となる。彼女が死ぬまで、結局は見つけることができなかったのだが、それを姪である女性に託す。
彼女の生き方を思うと切なくなった。また、周りの人たちがほんの少し勇気を持って正直に事実を告げることができたらと思うと悔しいやら、悲しいやらで、やりきれなくなった。
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期待しないで読み始めたことが良かったです。
物語自体は、読めば読むほど暗くなっていくのですが…
そこでは持ち回りで「お茶会」と称する、住民たちの集まりが催され、住人同士のつながりを深めるようなのだが、暮らし始めた姪は、住人たちの話を聞いていくうちに…
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アパートの十号室に住んでいた故人の秘密を、その他の住人たちを介して解いていきます。ミステリアスな雰囲気やご近所付き合いのリアルな描写、故人が各住人に投げかけていた台詞が印象的です。
しかし、故人の秘密と同時に描かれていたアパートに住む人の色んな問題は結局中途半端な扱いですし、何かあると臭わせておきながらあっさりと謎が明かされてしまうので、ミステリーとしては物足りなさを感じてしまいます。
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鉄筋4階建て、8世帯の暮らすコーポ中里。
亡き叔母の後に、十号室に暮らすことになった詩乃は、在りし日の叔母の秘密を知ることとなった。
先入観なく手に取り読んだので、まさかのミステリーで驚かされました。
各部屋の住人の目線で語られる各章で、謎に近づき、解明する感じが面白かったです。
それぞれの母の愛が招いた悲劇。
悲しい事件でした。
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白い外壁に窓辺の黒い鉄柵。周囲の高い建物に日差しを遮られた、四階建てのこぢんまりとした鉄筋アパート…
冒頭の二行を読んだだけで、すでにこの不穏で、息苦しい世界に引きずり込まれていた。
コーポ中里の十号室でひっそりと暮らす女が亡くなった。そこに越してきた女の姪、詩乃。
大好きだった伯母は、ここでどんな人生を送ったのか…
各部屋持ち回りでお茶会が開かれる程の濃密な関係を持つコミュニティーで、それぞれの世帯の抱える家族の事情。
住人がひた隠しにする過去の事件とは?
最後に明らかになる真実に引き込まれる。
ラストに少しの救いがあってよかった 。
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4階建てのコーポ中里。
十号室に住んでいた伯母の森下悠子。
彼女に部屋を遺された姪の詩乃が辿る悠子と住人の物語。
口数の少ない悠子だが、住人それぞれに思い出があり。なかなか読み応えがあった。
悠子の言葉が印象深い。
「幸か不幸かなんて勝手に決めるのは無礼だと思いますよ。その人の人生はその人だけのものなんです」
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濃密と希薄。裏腹が混在一致し形成される村社会。なんともアンバランスな中を上手く折り合いを付けて誰もが生きて行く。その誰もがそれぞれの幸せを求め、散らばり、混ざり合い、傷つけ合い、手を取り合う。この四階建てのアパートは小さな村社会でもあり、今の世の中の縮図にも思えた。それにしても、この静かだけど骨のある文章好きだなぁ。
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初読み作家さん。
奇しくも読み終えたばかりの東野圭吾の赤い指と通ずるところあり、文章もとても読みやすく、気持ちの入り込める作品でした。
他人は他人、そう思えない人のなんと多いこと。
そして、無遠慮な物言いをする人。
こういう本を読んで、自分の襟は正していかないといけないな。
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ちょっと湊かなえっぽい、こういう系統の作品も書けるんだカトゲンさん。
ますますカトゲンさんにハマる。
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内庭に枇杷の木が植わっているアパートは、全部で8つの部屋がある。そこに住んでいた10号室の住人が亡くなった。近所付き合いが濃厚なアパートだったが、その10号室の女性は付き合いもなく魔女みたいな雰囲気だった。そんな魔女の部屋に、姪という若い女が住み始めた。濃厚な近所付き合いに遠慮すればいいのに、参加をし住民たちの話を聞いていく。
なんというか、最初の若い夫婦の章を読んでいるときに「あれ?私、これ読んだことある気がする」と思った。だけど、私の記憶の引き出しの中には話の展開とか結末とか印象的なシーンとか見つからなくて読み進めた。
最初は、仲がいい住民同士だけど、その腹の底では重く暗いものを持っていて、それが暴かれる的な「人が1番怖いよね」的な話かと思った。しかし、読み進めていくとそうじゃなくて、昔そのアパートで行方不明になりその後見つからない子どもの話に。まぁ、犯人のおばさんの家庭内事情はなんとなく最初の時点でお察しってかんじだったが。
たぶん、これって嫌ミスの部類なんだろうなと思うのだけど、今まで読んできた嫌ミスより全然後味がいい。亡くなった叔母さんも救われただろうし。あと住民もどことなく息がちゃんと出来るようになった感もあるし。良かった良かった。
2020.6.6 読了