紙の本
わたしは、この作品集こそ日本推理作家協会賞を受賞すべきだったのではないか、そう思います。もしかして、都筑道夫を超える?
2005/08/24 20:41
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「法月警視が息子の綸太郎に漏らす五つの不可解な事件。ダイイング・メッセージもあれば都市伝説もある。作家 綸太郎の推理が光る」本格推理小説。
姉夫婦の家で留守番をしていた24歳の女性 足立茜が殺された。固く握り締めた手には、ボールペンが。そして電話の横のメモパッドには、=Yと書いたあとが。はたして、茜は何を伝えたかったのか「イコールYの悲劇」。作家の鹿沼が、自宅の書斎に篭城した。部屋には人影もなく、鍵のかかっていない寝室からは死体が「中国蝸牛の謎」。
世田谷のマンションで起きた大学生刺殺事件。現場には「電気をつけなくて命拾いしたな」というメッセージが「都市伝説パズル」。警察に殺人を犯したと出頭してくる男、しかし事件には犯人が。それが何回も繰り返されて「ABCD包囲網」。自殺すると言って電話してきた女、どうも殺された形跡が。容疑者には鉄壁のアリバイが「縊心伝心」。
三年ぶりの新作だそうです。といってもこの本は文庫ですから、オリジナルの方の話。それにしても、この年代の作家にしては珍しいくらいの遅筆ぶりです。この本、名前は以前から知っていましたが、読むのは今回が初めて。そのきっかけとなったのが、年間の傑作集に採用された「中国蝸牛の謎」です。タイトルからも、私の大好きなエラリー・クイーンの作品を思わせますが、設定の面白さもいいですね。
同じように壮大な謎を仕掛けるのは、島田荘司ですが、法月にはどこか都会のスマートさがあります。文章も大げさぶらないところがいい。とはいっても、謎解きはは精緻。個人的には、先ほど感心したとあげた「中国蝸牛の謎」が好きですが、随所にクイーンについての都筑道夫の文章が挿入された「イコールYの悲劇」の悲劇は、もう一度落ち着いて読み直したい気にさせられます。
また電気のコンセントを巧に扱った「縊心伝心」も、読み終わって「うまいなあ」と思いました。それは5編に共通して言えることでもあります。こういう作風であれば、寡作になるのも仕方がないなあと納得。あとがきに、新しい作家たちが輩出している昨今、なかなか淘汰されていかない自分を不思議に思いながら「いや、実際はとっくに淘汰されているのかもしれないが、それでもこうやって本が出してもらえるだけで、ありがたいと思う。こういうのを、既得権益にしがみつく守旧派、というのだろうか?」というのには、笑いました。
創作メモみたいなものは先輩である都筑道夫や佐野洋を思わせます。御二方とも、本格派の巨匠であるだけでなく評論にも切れを見せ、推理小説論で議論を戦わせたのは有名なおはなし。でも、苦労話は、すこし大げさ。作品のレベルはオーソドックスではありますが、極めて高いもの。再読しても、充分楽しめる作品集です。
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希少な、収録作すべてが傑作の推理短編集
2021/12/30 21:41
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投稿者:アントネスト - この投稿者のレビュー一覧を見る
名探偵法月綸太郎シリーズの第三短編集。
推理小説の傑作短編は数あれど、収録作すべてが傑作の短編集となると(アンソロジーやベストセレクション的なものを除くと)ほんの一握り。本書は、その希少な例外です。
=Yという奇妙なダイイングメッセージの謎を解く「イコールYの悲劇」や、無関係の事件の犯人だと言って自首してくる男の謎から始まる「ABCD包囲網」、そして推理作家協会賞を受賞し、英訳されてEQにも掲載された大傑作「都市伝説パズル」。他の二編も含め、すべてミステリー好きなら読み逃せない名作ばかりです。
電子書籍
いいと思います
2022/10/06 07:21
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投稿者:どら - この投稿者のレビュー一覧を見る
「イコールYの悲劇」と「都市伝説パズル」がとても面白かった
どちらも答えを読んで「なるほど!」と思ったし、不気味な終わり方もよかった
あとはまあまあ 「中国蝸牛の謎」は想像力のない私にはよくわかりませんでした…
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推理がはずれる綸太郎がエラリー・クイーンのようで面白い。
多分、キャラクター的には同じなんでしょう。
都市伝説パズルが王道本格ミステリで好き。
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◆あらすじ◆
殺人事件の被害者が残した「=Y」の文字は、はたして何を意味するのか!?
エラリイ・クイーンへのオマージュである、ダイイング・メッセージものの傑作「イコールYの悲劇」、第55回日本推理作家協会受賞作「都市伝説パズル」など、ロジカルな推理が堪能できる本格ミステリ五編を収録した、ファン待望の作品集。
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短篇5作。
作家・法月綸太郎が推理するシリーズ。
釈然としない部分があるのもあったけど、全編悪くはないと思います。
「都市伝説パズル」が頭ひとつ抜けておもしろかったです。
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「イコールYの悲劇」ダイイングメッセージ
「中国蝸牛の謎」マイマイ
「都市伝説パズル」電気をつけなくて命拾いをしたな
「ABCD包囲網」点と線
「縊心伝心」不倫と自殺偽装
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シリーズ第3短編集。面白かったのは「都市伝説パズル」。シンプルでうま味が活かされている。他には、本格ミステリアンソロジーの「イコールYの悲劇」「ABCD包囲網」など。
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久々に再読。一番好きなのは『都市伝説パズル』かな。短編ののりりんはパズラーに徹してて、読みやすいなー。ちょっと物足りない気もするけど。
法月親子の会話が面白すぎる。あと『ABCD包囲網』の久能警部はちょっとカワイイ。
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第5回本格ミステリ大賞への序曲
論理が漲る傑作推理集!
〈法月綸太郎シリーズ〉第9作(シリーズ第3短編集)。
2000年春から02年春までに発表された5つの短編を収録。
■イコールYの悲劇(2000.7)
殺人事件の被害者が残した「=Y」の文字は、はたして何を意味するのか!?
エラリイ・クイーンへのリスペクト。となればダイイング・メッセージに挑戦。
(余談ながら競作集で他の著者もみなダイイング・メッセージに取り組んでしまう笑)
メッセージに使用されたボールペンに残っていた手掛かりから意図を正しく読み取って、登場人物の裏の顔を暴く
――プロットには文句なし!なのだが……
もっと簡単にメッセージを残せるハズだという気はする。
例えばあの人物の名前を〇する、とか……しかしそうなるとダイイング・メッセージにも成り得ないので難しいところ。
■中国蝸牛の謎(2000.5,9)
作家が密室状態の場所から消失、その後階下で首つり死体となって見つかる、という事件を扱ったもの。
ある意味バカミスといえるかもしれない。
蝸牛に関する蘊蓄はすごいし、もうちょっと上手い処理もできそうなものだが……。
■都市伝説パズル(2001.9)
「電気をつけなくて命拾いしたな」
――深夜、友人宅に忘れ物を取りに行ったその少しの間、まさしく事件に居合わせていた……。
現代の怪談、都市伝説をテーマに、そのまま模倣したかのような事件が発生する。
この都市伝説を背景に真犯人は関係者の証言を上手く利用しアリバイを確保する。著者の構図の反転が見事な作品。
第55回日本推理作家協会賞受賞作。
■ABCD包囲網(2001.11)
冒頭の『イコールYの悲劇』同様の競作。
今作もクリスティ『ABC殺人事件』へのリスペクトである。
俗に言う、ミッシング・リンクの作品。
ネタバレしてしまうと連続殺人事件の中に本命を紛れ込ませる、というやつである。
再三明らかにやってもいない殺人事件で自首しに来る男。
鵜呑みにもできないが無視するわけにもいかず。
その後の調査で、4件目として男の妻が狙われていることを突き止める。
3つの事件は直線上にあり、男の家もその延長線上に存在したのだった。
そこから本作は急転直下のひねりがある。
■縊心伝心(2002.5)
OLが不倫相手に自殺を仄めかした電話をかけ、その1時間後遺体で見つかった。
不倫相手のアリバイは完璧で、遺体にも偽装の疑いが生まれたため、捜査に臨む法月警視は綸太郎に協力を仰ぐ。
カーペットの電源に見受けられた違和感から一気に脳細胞が活性化する綸太郎に注目の作品。
ミステリ :☆☆☆☆☆
ストーリー :☆☆☆☆
人物 :☆☆☆☆
文章 :☆☆☆☆
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「都市伝説パズル」が頭一つ抜きんでている印象。次いで「イコールYの悲劇」。残りの3編、特に「中国蝸牛の謎」は凡作と言ってよいと思う。それでも全作品に本格愛が貫かれていることは間違いなく、自作解説もともなうことで、本格に取り組む作者の苦労が読者に伝わってくるような部分もある。
次作を首を長くして待ちたい。
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王道中の王道ともいえる安楽椅子タイプの本格ミステリーです。【中国蝸牛の謎】はご都合主義的であまり感心できませんが、他の四編は良い出来です。特にロジック一本勝負の【都市伝説パズル】は傑作だと思います。
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法月綸太郎シリーズ。短編集。
短編集が苦手な私ですが、本作はどれも良作だったと思います。
「イコールYの悲劇」と「都市伝説パズル」が特に好きです。
何気に表紙も気に入っています。
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法月さんにハマってみようと思ったけど、近くの図書館にこれしかなく…
都市伝説パズルは面白かった。ABCD包囲網も、ぐいぐい読み進めさせる展開に満足。あとの3つは…まあ普通。本格派ってのは理解するのも難しいな。
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綺麗にまとまった短編集。「ABCD」は事件の現象がとても面白かっただけに、真相がやや雑な感じになったのが少し残念。