紙の本
何も答えを提示せずに
2015/03/26 15:20
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投稿者:september - この投稿者のレビュー一覧を見る
何も答えを提示せずにすっと終わっていく感じは結構好きかもしれない。
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短編7作。
あの日から、変わったこと、変わってしまったこと、変わらないように見えるもの、変わらないもの。
決してこちらに向かってきてる訳じゃないけれど、研ぎ澄まされた言葉の片鱗が彼方此方に刺さる。
帰ることは出来ても、二度とは戻れない。
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地震計を見つめる旧友と過ごす、海辺の静かな一夜(「強震モニタ走馬燈」)、豪雪のハイウェイで出会った、オーロラを運ぶ女(「葬式とオーロラ」)、空に音符を投げる預言者が奏でる、未来のメロディー(「ニイタカヤマノボレ」)、母の間男を追って、ピアノ部屋から飛び出した姉の行方(「忘れられたワルツ」)、女装する老人と、彼を見下ろす神様の人知れぬ懊悩(「神と増田喜十郎」)他二篇。「今」を描き出す想像力の最先端七篇。
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主人公も、題材の選び方も、小道具も、もちろん設定も、かなり独特である。すべてがおそらくこの物語たちの中でしかあり得ないだろうと思われる。そしてそれらことごとくが、在るべくしてそこに在るように、極自然なので、さらに驚かされる。ちょっと変なのに違和感なくいつの間にか入り込んで、自分もその世界にいる。不思議な感覚の一冊である。
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表題作は,最初は長調で陽気な曲が流れる。
いつからか,主人公を取り巻く環境は狂った短調になる。
あったかもしれない物語へのレクイエムであるが,忘れられたというより,狂ったワルツでしょうね。
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久々に読んだ、絲山秋子。
たぶん私は、この人の意地悪さ加減が、好きなのだな。
前半は割とコミカルな展開の話が多く、後半は、ちょっと変わった人が出てくる話が多いようだ。
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books a to z にて紹介あり
1番始めの『恋愛雑用論』の、書き出しのひとかたまり目が、素晴らしい。
確かに、恋愛も雑用の一つかも。
あと、最後の女装を覚えてしまった人の書き方もすんなり入ってきた。
なまぬるくない表現力が、すごいな…。
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ごちゃごちゃ御託を並べても、とどのつまり、ひときれのパンとチャップリンの映画があれば人生に必 要なことはだいたいそろう、と思ってるんだけど(カッコつけてみた)、絲山秋子の小説を読むと、ここにもだいじなことが詰まってるっていつも思う。好き嫌い、面 白い面白くない、とは別次元の詰まりかた。嗚呼、御託を並べてしまった。『忘れられたワルツ』読み終わった。ほんと、伊坂幸太郎氏の帯のとおりだ。
村上春樹がクラシック音楽なら、絲山秋子は、すべてをさらけ出すロックンロールだ。強くて、やさしくて、弱くて、躍動してる。
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重々しい表紙の写真とは異なって軽い内容~「恋愛雑用論」40代の私にとって恋愛も雑用だ。工務店の事務員の私に煩く話し掛けてくる出入りの業者も40代だが,小利口君と呼んで,恋愛対象にならない。デンマーク勤務の同級生はデンマーク人と別れたが,それも分かる気がする。「強震モニタ走馬燈」小学校から仲の良かった友達が離婚したから遊びに来てというので,行って餃子を作って食べてみたが,彼女は大きなモニタで地震の実況を見ているだけで,肝心な相談はできない儘。「葬式とオーロラ」小学校の理科の先生に救われ,その先生が死んだと聞いて,通夜と葬儀に一泊で出掛けたが,雪の高速で出会った女性は,雪の夜にオーロラを造る装置を運んでいて,PAのスタンプを集めてみたが,帰りに出会うことはなかった。「ニイタカヤマノボレ」1945.12.8に真珠湾攻撃を命じる信号を送った電波塔では,音符を投げ上げて占いをする予言者がいた。高校の同級生は私のことをアスペルガーだと言っていたが,何で自殺したか分かる様な,分からない様な。「NR」地方の会議に出掛ける同僚二人は,見慣れない駅名に驚き,降りてみたが,ここから元の世界に帰れない気がするのは,会社のホワイトボードにNoReturnと書いたからだった。「忘れられたワルツ」姉は母が浮気をしていると確信して尾行しているが,父は関心がない。「神と神田喜十郎」神田喜十郎は女装が趣味の70歳だ。高校の同級生が市長になって,プロパンガス会社勤務の傍ら,私設秘書の様な生活を送り,死んだ市長の母とは女装をして温泉旅行もした。歩道橋で転びそうになった時,手を差し伸べたのは神だった~どれも2011.3.11の震災に絡んでいるけど,普遍性を持つだろうか? 彼女は早稲田の10年後輩
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短編集。
恋愛ものかとおもいきや、恋愛にはいかなかったり、
思った方向になかなかいかない感じ。
短編だからというのもあるかもしれないけど、
もうちょっと、この話を読みたかった、と思ってしまう。
千疋屋の果物食べたい・・・
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よかったです!(#^.^#) 今までの絲山さんのもので一番笑えたし、哀しかった。 伊坂幸太郎さんによる帯の「今年一冊しか読めないのならば、この本を読めばいいような気がします」には賛否両論あるでしょうが。.
どこかキレた普通の人(って変な言い方だけど)を描く短編集。
一番好きだったのは、最後に収められた「神と増田喜重郎」。
“経験を積んだ”女装者である喜重郎は、自然で目立たぬ女装を心がける70歳超えの独身男。
長年、地元のプロパン屋で働いてきたが、同時に市長となった高校の同級生だったタカちゃんの「雑用係」を社長公認で務めた。
このタカチャンがね、いいんですよ!
「死んだら終わりだぜ!ホンノキだぜ!」が口癖で、(でも結局、喜重郎より先に死んじゃったけど)、
ふと、
「なぜぼくを雇おうと思った?」と聞いた喜重郎に、「うん、その質問が何年も出ないからだよ」と答える。
「早く年よりになりたいなぁ。引退してさ、なにをやっても耄碌ですまされるようになったらこっちのもんだぜ。」なんて。
そして、「年取ったらバカ騒ぎしようぜ」と言ってたのに耄碌するまでは生きなかったタカちゃんは、あくまで喜重郎の生涯の脇役でしかないんだけど、そして、こんな風に記していると、なんか上から目線のイヤな奴に勘違いされそうなんだけど、絲山さんのノリシロの多い文章の中で、とても好ましい&喜重郎を語るにはタカちゃんでしょ!と思えてくるという…。
タカちゃんの七回忌のあと、彼の未亡人の田鶴子が、
「ねぇ、マスダ、今度女同士で遊びに行きましょうよ」と温泉に誘う。
もちろん、喜重郎は驚くわけだけど、
「お婆さん同志が旅行に行ってなにが悪いかしら」と言うそのサバサバした物言いが、あ、この人好きだなぁ、と思わせられてしまうところもよかった。
う~~ん、私の感想が下手くそで、うまくタカちゃんにしろ、田鶴子にしろ、肝心の喜重郎にしろ魅力を伝えられてない気がします。
結構引用も多くしているのに、行間の持つ力に負けてる・・?
この短編集全体に渡って、人とのコミュニケーションがあまり上手ではない、というより、あまり求めていない人々が出てきて、その淡々とした生き方が鼻につく、人をバカにしている、と感じる読者もいるだろうなぁ、なんて思うから、さっきから何度も書き直してみてるんだけど。
で、「神と喜重郎」の、“神”の方なんだけど、これが正真正銘の神様!なんですよ。
祈りが多すぎる人の世は神にとって若干棲みづらい、なんて思ってたりする神。
で、温泉旅行で、喜重郎は田鶴子に、「タカちゃん、神を見たって言ってました」と地酒を飲みながらふと告げる。
車の鍵がなくて困っていた時に歩道橋から降りてきて鍵をくれ、御礼を言って名前を聞いたら、
神です、精神病のシンと書く、と言ったというエピソード。
すれ違う時にものすごい大勢のひとが歩いているような靴音がしたから、本物の神だと確信したタカちゃんがそのことを話したのは喜重郎だけで、それを聞いて、「マスダが聞いてくれてよかったわ。���だったら、そんなの気のせいでしょって頭ごなしに否定してたと思うから」という田鶴子。
その後、一人で歩いていた時、歩道の段差に躓いてバランスを崩した喜重郎に
「ばあちゃん、大丈夫か」と腕をとってくれた神。
「ごめんなさい、ありがとう」と感謝しつつも、なぜか手を伸ばしてくれた相手にではなく、神に感謝しているような気がしていたのである、というあたりもとても好きでした。
これは、きっと好みの分かれるお話、でしょうね。
ただ・・・7編中、ひとつだけ「ニイタカヤマノボレ」だけは好きにはなれなかったかな。
アスペルガー症候群を取り上げているんだけど、(最近、多いよね。これまであまり知られていなかったハンディキャップだから、小説家にとっては新分野として宝の山みたいなものなのかも。)コミュニケーション能力の低さを一般人からは理解不能宇宙人のように描かれると、これって、当事者やその家族が読むことを想定してないな、なんて、いつもの私だったらそんなモラルっぽいことは考えないんだけど、一学年に何人かはいるというハンデであるだけに気になったんでした。
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バビー
「神」の話が好き。以前の「仙人」の話に通じる感じ。「恋愛雑用論」も楽しかったんだが、つまんない男とうきうきして海に行ったりする時点で彼女の雑用じゃなくなってるじゃん!って思った。フェイスブックとツイッターの在り方なんかも感じることあった。あんなに電力不足や薄暗い夜の街で過ごした日々はこんなのに電力使って・・・って密かに思ってた。記録も、記憶も大事だけどね。
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「忘れられたワルツ」(絲山秋子)を読んだ。なんだろうこのストンと腑に落ちる感じは。収録された7篇すべてが心地良く胸を打つ。読了後胸中に広がる波紋はしばらくおさまりそうにない。まさに名人の域に達した感のある絲山秋子さんである。これは読むべし。
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これは良かった。どれも不思議で不穏な味付けで、でもそういう場合に得てしてありがちなようにどれも似通っているというわけでもない。NRや忘れられたワルツの怖さ、神と増田喜十郎のペーソス。
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【収録作品】恋愛雑用論/強震モニタ走馬燈/葬式とオーロラ/ニイタカヤマノボレ/NR/忘れられたワルツ/神と増田喜十郎
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収録されている7編の読み切り短編はいずれも「小説新潮」(2012年3月号~2013年3月号に掲載されたもの。
彼女の小説は、その乾いたユーモアが独特なテイストを生むのだけれど、今回は震災後の世界を取り上げながら、「一人語り」の実験的な試みにチャレンジしていて、その感性が研ぎ澄まされた感が強い。
たとえば、『神と増田喜十郎』なんてすごい。なにしろ「神様」が俗人のごとく登場し独り言を呟くのだから、、、