紙の本
落とし穴がある本
2016/05/18 00:20
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投稿者:オタク。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本には英親王と梨本宮方子女王との成婚が「『日韓融和』の象徴として垠と日本の女性皇族の結婚が図れ」た結果であるように書かれているが、参考文献としてあげられている「李方子」と「朝鮮王公族」をどう読めば、そんな20年以上も前に「梨本宮伊都子妃の日記」が出版される以前の古い言説が蒸し返されるのか、理解出来ない。この成婚が方子女王の成婚相手として英親王に白羽の矢を立てた梨本宮家のゴリ押しで成立した事は定説ではないか。
「朝鮮王公族」は優れた点が多々あると同時に関連する史料がないからか、安易に「皇室ジャーナリスト」と称した河原敏明の「昭和の皇室をゆるがした女性たち」や週刊誌の記事を参照した点があり、王公族の成婚についての記述にも納得出来ない箇所があるが、英親王の成婚に関しては特におかしな事は書いていないから余計だ。
林鍾国の「親日文学論」に引用されている李光洙が朝鮮語雑誌の「三千里」に寄稿した「内鮮一体」の文章の中に「このことは総督府が話してもよいと言ったので」と前置きしてから天日槍と高野新笠について書いているところを見ると、この「ゆかり」を言及する事はタブーだったのだろうか。
以前、読売新聞が既に部分的には公表されていた昭和18年の三笠宮崇仁親王の南京での講話を「スクープ」だと言って大騒ぎした事があるが、この本では、その時の読売新聞や「母宮貞明皇后とその時代」と同様、阿部信行文書の中から発見されたかのように書いている。浅見雅男氏が勤務していた文藝春秋社の「諸君!」で柴田紳一氏が批判して「日本近代史研究余録」に再録した「『三笠宮文書』ー読売スクープの幻」に書かれているように、当時の防衛庁防衛研究所に所蔵された文書が既に紹介されていたというのが「真相」なのに、何故こんな事を書くのだろうか。「李方子」の著者の小田部雄次氏の「皇族」には「かの津野田が印刷して若手将校に配布し、戦後、防衛研究所で発見された」とある。そう言えば岩井克己氏が勤務していた朝日新聞も読売新聞に習って?「古代オリエント史と私」に部分的に紹介されている文書を「新発見のスクープ!」であるかのように大々的に紹介していたものだ。
「公爵家の娘」以来、皇族や華族について何冊も著書がある浅見氏や朝日新聞の皇室番の編集委員出身者として今でも「皇室担当特別嘱託」と著者紹介にある岩井氏でも、それ以外ではともかくとして、こういう信じられない落とし穴がある本を書くというわけだ。
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新書で「150年史」などというタイトルは大風呂敷を広げ過ぎであろう。内容は皇室典範、皇族の変遷、結婚、外交、財産などカテゴリー別にエピソードを集めた内容である。興味深かったのは、なぜ皇室とベルギー王室が仲が良いのかという下り。ナチスに屈服し、戦争責任を問われる立場だった父の譲位を受けたボードワン1世、そして、昭和天皇の息子である皇太子が、共に肩身の狭い立場から国際社会での地位向上を目指したという指摘はよく理解できる。江沢民に謝罪し、紀元節に反対した「赤い宮様」、三笠宮の事績もコンパクトに紹介されている。皇室にも相続税がかかり、昭和天皇の遺産は約20億円で、今上天皇が約4億3千万円を納税したことなども興味深く読んだ。途中、東宮批判が入るのは、筆者岩井氏の思いが強く反映されていると言えよう。
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明治以降の皇室通史かと思ったのだけれど、少々違った。でも、
これはこれで面白い。
明治以降の皇室について「皇室典範と宮家」「皇族という人々」
「皇室と結婚」「皇室と外国」「皇室と財産」の5章に分けて解説
している。
小泉政権下で女性天皇・女性宮家に関する議論が行われたが、
秋篠宮悠仁親王殿下ご誕生で皇統継承の心配が解消されて
から立ち消えになった。
しかし、振り返ってみれば明治からずっと皇統への不安は常に
存在していたんだ。
明治天皇の唯一の皇子であった大正天皇は幼少期より病弱で
あり、明治天皇はこれを心配されていた。だから、江戸期より
伏見宮、桂宮(三笠宮家次男の故・桂宮殿下とは無関係)、
有栖川宮、閑院宮の四親王家だった宮家は、明治期になって
急激にその数を増やした。
皇統への心配と、明治天皇の皇女の嫁ぎ先として新たな宮家が
必要だったからなのだが、この宮家急増が後に様々なゴシップを
も生み出す結果になる。
その一番の例が昭和天皇の后であった香淳皇后のご実家であった
久邇宮家。
当時、皇太子であった昭和天皇と香淳皇后のご婚約に対し、一部の
人々の間で「香淳皇后の家系に色覚異常の遺伝あり」を理由にして
婚約解消を迫った「宮中某重体事件」の概要は知っていた。
この時、大正天皇は既に病厚く公務から退いてはいたが、婚約解消
に抗議する手紙を久邇宮家は大正天皇宛にではなく、后である貞明
皇后宛に送っていたのか。
大正天皇を敬い、宮中の規律を重んじる貞明皇后を激怒させている
とは知らなかった。そりゃそうだよな。病床に就ているとは言え、大正
天皇はその位におわすのだから。
そうかと思えば早くから決まっていた久邇宮家の朝融王の婚約につい
ては相手方のありもしない噂を根拠に解消しようとするし。もしかした
ら、昭和天皇ご夫妻と貞明皇后との間がぎくしゃくしていたというのに
はこの辺りの事情もあるのかな。
天皇家をお守りするはずの皇族なのだけれど、明治・大正・昭和と、
天皇家を困惑させた皇族が必ずいたんだな。
ゴシップ多めなので皇室に興味のない人でも巻末の皇族の系譜図を
参照にしながら楽しめると思うし、明治の皇室典範を明治天皇自ら
反故にしている点にもびっくり。
近年の皇室では皇太子妃殿下と秋篠宮妃殿下の、ご実家の対比が
興味深かった。結婚に伴い宮内庁から支度金として3000万円と1000
万円が用意された。金額の違いは皇太子妃と宮妃の違いから来る
ものだが、紀子妃殿下のご実家・川嶋家は嫁入り道具購入の請求書
や領収書で清算することを希望し、全額は使用しなかった。
一方、東宮妃殿下のご実家・小和田家は現金で3000万円を受け取って
いる。ご成婚前、嫁入り道具のひとつとしてワイドショーなどで紹介され
ていたあの金箔箪笥もお支度金から購入されたのかしらね。小和田家
では受け取らな かったようだけれど。
尚、「明治天皇の玄孫」「旧皇族」「元宮家」などと言ってタレントまがいの
活動をしている竹田某。元皇族だったのは彼のおじい様であって、彼の
父親も臣籍降下してから誕生しているので「明治天皇の玄孫」以外は
詐欺行為である。