紙の本
不倫ダメ絶対小説
2016/02/28 22:15
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くま - この投稿者のレビュー一覧を見る
上巻の途中でラブストーリーになってからはちょっとだけ熱が冷めたけど、下巻の不倫ダメ絶対の見本のような展開になってからは超面白くなりました。
ヒロインの恋人への思いがあっちこっち錯綜するのがリアルで好きでした。
破綻した夫婦関係であっても、相手の裏切りには平静でいられないというところも。
これがミステリかと言うと微妙な感じもしますが、謎は確かに大いに存在し、ラストにおいて解けます。
紙の本
性的マイノリティーにとっての妊娠とは
2019/11/23 20:56
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投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る
下巻に入り、張り詰めた糸のようなフランシスとリリアンとの関係はついに破調に至る。
とにかく非常に心理的圧迫を与える描写で、こちら側の体調や精神の安定度もこの作品を読むには大いに必要とされそうだ。
下巻ではやはりリリアンの妊娠中絶のシーンが凄まじい。たしか『夜愁』でもあるカップルの中絶シーンがあったが、すぐさまあれを思い出しその迫力と生々しさには甲乙つけがたく正直総毛立った。『夜愁』では不倫カップル、今回は同性カップル間のことだが、ウォーターズはなぜここまで中絶にこだわるのかが知りたい。現代では、養子縁組やカップルどちらかの精子・卵子をつかった体外受精、代理母など選択肢は豊富だが、この時代正式な結婚カップル以外の妊娠・出産は当然のごとくハードルが高く、自分たち自身の社会生活すら危うくさせるものだったはずだ。
おそらく世間の目よりも何よりも、妊娠・出産こそがこうしたカップルたちにとって乗り越えなければならない大きな壁であるからこそ、ウォーターズはその突破口として中絶を選んだ二人を繰り返し描くのだろう。妊娠・出産の先にあるはずの当たり前な幸せを自らの手で引き裂きながら進むことが二人の愛のこの上ない証となると信じるしかない追い込まれた関係性が鬼気迫る。
しかし『夜愁』のカップルもその後、何か微妙な関係となりそれ以前の激しさは鳴りを潜めている。するとこの作品でもラストの微妙でどっちつかずな二人の心理状態が、その後の彼女たちの関係の行きつく先を暗示しているように思われる。それがこうした関係のカカップルたちに対する罰なのか、さらなる試練の始まりなのか興味がつきない。
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上巻は...
下巻はもろにサスペンス。一気に動く。
流れとしては申し分ないけど、やっぱ上巻が...赤面。
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下巻。
巻末の解説に書かれていた通り、上巻と下巻ではがらりと雰囲気が異なる。そう考えるとかなり踏み込んだ記述だったわけだが、解説に対してネタバレとかそういうマイナスの印象は全くない。プロって凄いなぁ。
途中までは『これって破滅に向かってまっしぐらじゃないの?』と思っていたのだが、厳密な意味で『破滅』した登場人物はいない。しかし、主人公と恋人に限らず、それぞれが公言出来ない秘密を抱え、それまでの幸福に見えた光景に違う意味が与えられて行く様子は読んでいてなかなか苦しいものがある。
それにしても、上巻を読むのにやや時間がかかったのは、あのラブロマンスっぷりも一因だったのだが、雰囲気の変わった下巻は引き込まれた。
これまで邦訳されたサラ・ウォーターズ作品の中では『夜愁』がやっぱり一番好きなのだが、読み応えや登場人物の機微といった部分では本作に軍配が上がるかな、という気がしている。
勝手な願いだが、もうちょっとマメに邦訳を出して欲しい……でないと不安になるから!w
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なぜ1920年代という時代を設定したのか、と考え続けながら読んだが、なるほど、上流階級なのに下宿人をおかねばやっていけなかったり、階級では下のはずの下宿人のほうが羽振りがよくお洒落や流行にも詳しかったり、帰還兵たちが浮かばれなかったり、さまざまな矛盾や転覆が底流となるのはこの時代だからこそ、なのか。
「大戦間小説」としてよく出来ている。
上と下がゆがんだ鏡のように映し合う。
またピエール・ルメートル「天国でまた会おう」が男性版、こちらが女性版として、読むことも出来る。
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いやいやもう、これは堪能しました。心理描写の精緻なこと、時代背景の巧みな取り入れ方、人間性への深い洞察、どんどん引き込まれていく語り方、どれをとっても一級品。すばらしい。
…なのに☆四つなのは、上巻がちょっと長いかなあと思うから。もちろん、この上巻があってこその下巻の展開なわけで、それはわかるのだけど…。せっかちな読者(わたし)はいつまでたっても「ミステリ」にならないので、これって高級な百合もので、紹介文の「傑作ミステリ」って看板に偽りありじゃないの?などと思ってしまった。
「事件」が起きるのは下巻に入ってからで、そこからはもう怒濤の展開。息を詰めて一気読みすることになる。解説の大矢博子さんが実に的を射た表現で指摘されているとおり、「こんなはずではなかった」という悲痛な声が行間から立ちのぼってくる。これはヒロインだけでなく、ほとんどの登場人物が抱く思いだということがひしひしと伝わってくる。英国小説では、階級の問題が大なり小なり展開に関わってくるが、ここではその描き方が皮肉で、かつ哀切で、複雑な思いを呼び起こす。
ウォーターズは、何と言っても「半身」「荊の城」のあっと驚く仕掛けがピカイチだが、「夜愁」や「エアーズ家の没落」も含めて、どの作品にも底に「怒り」があると思う。世の中のありように翻弄され、ままならぬ生をもがいている人たちが描かれていて、そこが胸を打つ。
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上巻は恋愛小説で、下巻はミステリー小説だった。
上巻は最初描写が細かくて重くて読み進めるのに少しつらかったが、一転して下巻はこの後どうなるのかハラハラドキドキな展開で、どんどん読み進められた。
フランシスがレイに、リリアンとの関係を言ってしまう流れからの怒涛の展開。
事件から二人の関係がぎこちなくなり、いろいろなフランシスの知らない事実が明るみになり、リリアンを信じられなくなって嫌味を言ってしまう辺り、なんかもう「あるある」といった感じだった。
どう着地させるんだろうと思ったら、レイの秘密が暴かれ思わぬ犯人候補が現れる。
この後にとる、フランシスとリリアンの行動は想定通りはものの、最後はハッキリ結末を付けないで終わらせる。安易に死刑にならなくてよかった。
最後の「だめなの」のセリフに私も救われたというか、明るいまでいかなくても二人の今後に光が差したと思う。
解説に挙げられていた、他の作者の本も読んでみようかと思った。しかしダウントン・アビーが出てなかったのは、ドラマだからかな。
父親が投資の失敗なんぞ、まさに...
でもあちらは男性陣が健在なのが多かったから、時代設定だけで内容は似ていないか
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大戦後のロンドン郊外、兄弟と父を亡くし母と二人暮らしになった屋敷の娘フランシスは、生計のために家に下宿人をおくことにした。それに応じてきたのは、若い夫婦で、フランシスは妻と交流を深めていく。
…サラ・ウォーターズなので…(お察しww)
と思ってたら、やっぱりサラ・ウォーターズだった。
まぁ、そこのところはおいておいて、大戦終了後のあらゆる価値観が根底から覆る中の混乱が、足元から登ってくる冷気のようで怖い。その中で必死に抗おうとしているフランシスの姿は潔く見える。
が、それも虚構といえなくもない。
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フランシスに感情移入しすぎて、動悸が止まらず。ページを追うのももどかしい。読み終わってからフランシスとリリーは、今後どうなっていくのかなぁ…と想像を巡らせた。第二次大戦も生き抜いて、年老いてから二人で暮らしたりとか?
第一次世界大戦と第二次世界大戦の間は、つかの間の平和な時代だと思っていたけど、帰還兵だけでなく国に残った人たちにも影響を与えていたとは。
解説で「天国でまた会おう」を挙げていて、〈大戦間小説〉というジャンルを知った。こんなはずじゃなかったという気持ちが描かれているのかな。気になる。
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上巻事件が起きず、ラブストーリーだったのに比べて、下巻に入ったら怒濤の展開で殺人事件が発生してあれよあれよと展開していく。
どうなるんだろうと主にフランシスの立場でハラハラさせられ、最後、なんとも言えない終わり方。キライじゃないけど。途中の苦しさが読み進める速度を遅れさせた。
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上巻と下巻のこのテイストの違いといったら・・・!フランシスに感情移入しちゃって、早く読み進みたいんだけどいやちょっと待って先送りさせて、と読むのを躊躇したり。二人はこの先どうなるんだろう。誰にも言えない秘密を抱えて二人でひっそりと生きていくのかな。
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(上巻よりつづく)
そして、事件は起こる。いや。レズビアンの関係がわかってしまったというのではない。三角関係には邪魔者はいなくなってほしいが必須。殺人事件が起こるのか?と思っていたら、その通りになった、さて…
ここからが読みどころなのだと思うが、わたしには息詰まるおもしろさというより、息苦しさのほうが強かった。でも、それがサラ・ウォーターズの真骨頂かもしれない。
時代背景が前世紀の初め、女性の地位思想は抑えられている。解説にもあるが、ヴァージニア・ウルフの小説と同傾向と思うとうなづけるものがある。
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☆4.0
第一次世界大戦が終わって数年、戦争で父と兄弟を失ったフランシスは、母と二人、男手もなく広い屋敷を抱え苦しい生活をしていた。生計のため断腸の思いで下宿人を募集し、若い夫婦に間貸しすることに。
そこで"運命の人"との出会いがあるとも知らず。
この運命はフランシスを眩しいほどの刺激的な幸福と、この幸福の裏側にある罪悪感を共にもたらし、そして悲劇の夜へと導いてゆく。
上巻は二人の思いが芽生え深まり、形作る様子がたくさんの描写の積み重ねによって記される。
フランシスからリリアンへの思いがどんな感情なのかは、リリアンの仕草や姿態から知らず識らず艶めかしさを受け取るフランシスを見ているとすぐにわかってしまう。
おそらく彼女自身が気づく前に。
そういう書き方がとても巧みな作家なのだろうな。
上巻最後に爆弾が投げ込まれ、下巻から展開はノンストップ。下巻読んでいる間、息つく暇もない。
"緩急つける"というが、言うならば完全に上巻が"緩"で下巻が"急"。本当に最後の最後までどう決着がつくのかわからなかった。
そこに愛はあるのか。そこに幸せはあるのか。
相手の顔も見えないくらいの黄昏に、彼女たちはいる。
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下巻。
上巻ではまったくミステリ要素はなく女同士のラブロマンスって感じだったけど、下巻で早速事件が起こる。フランシスとリリアンの関係を知り、激昂した夫のレナードがフランシスに掴みかかってきたのを、リリアンが咄嗟に灰皿スタンドで殴り殺してしまう。2人は事故に見せかけ死体を遺棄し、罪の意識に怯えながら暮らすようになる…
殺人を犯してしまった人間の心の動揺や葛藤が延々と描かれていて、ずっと重苦しい。ミステリというよりは心理サスペンスという感じでした。別の人間に容疑がかかり裁判にかけられ、良心の呵責に耐えかねて時にリリアンを憎むようになるフランシス。最後はその容疑者が裁判で無罪になったところで物語が終わる。このあと彼女たちはどうなるんだろう。また罪の発覚に怯える日々を送るのか、それとも自首するのか、それとも…。愛以上に殺人という罪で縛られた2人はずっと離れられないんだろうなと思う。
ツイッター(X)で二度と読み返したくない本みたいなハッシュタグで見つけた本だけど、何とも嫌な余韻の残る本で、確かにもう一度読もうとは思わないけど、そういう本を読みたかったので満足です。
この作者の別の本も読んでみたいと思いました。