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かなり前に借りて読みました。心にずっと残っていたので、文庫になったので買い求め、改めて読んでみると、とても爽やかな読後感。十代の頃の懐かしい感じが思い出されるような雰囲気でした。
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私の人生を変えた一冊。
きっとこの世で生きる大部分の人たちが、目を背けたり切り取ったりする事でしか消化出来なかった過去を抱えている。
その切り取ってしまった場所に茂った草原が、こんなにも傷を癒してくれるのです。なんて慈悲深い。
哀しい部分が、広く青々と輝く草原。この小説は、人の心への希望に満ちている。甘チャンなあたしにとっては本当に素晴らしい小説でした。
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なんとなくだけど、この草原に行くという感覚、わかる気がする。なつきのつらさがたまらなく読んでいてつらかった。草原の描写が好きです。
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野中さんの話は深いなぁと思います。佳奈子ちゃんの気持ちがわかる人とわからない人がいるように。この話をよんでいてそれがわかる人わからない人がいるんじゃないかなと思います。わかるだけがいいことではないと思うけれど。
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主人公は、小学校の教師をしている夫と、平穏で幸せな暮らしを営んでいます。けれど主人公には、忘れられない辛い過去がありました。その記憶は重荷となり、常に主人公を苦しめ続けているのですが、正面から向き合うことを彼女はずっと避けてきたのです。ある日、夫の教え子である12歳の少女が彼女のもとを訪ねてきます。少女はとても美しく、妙に大人びた雰囲気を持っていました。年齢の差を越え、少女と対等に心を通わせるうち、やがて主人公は、胸に秘めたわだかまりと、知らず知らず向き合うようになっていきます。
死は悲しい。けれど生きることは、尚更に辛くて悲しいものです。人生は自ら選び取れるものではありません。それぞれが置かれた環境の中で生きていくしかないのです。主人公の背負ってきた過去も、半端な重さではありません。でも、必要なのは救いを求めることではなく、受け入れることなのかもしれません。悲しいと思えるのは、実は幸福なことなのですね。
少女の台詞があまりにシッカリしすぎていて、少々違和感はありましたが、不思議な魅力のある小説でした。
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読んだタイミングがよかったのか、野中柊さんの言葉が柔らかいからなのか・・・久しぶりに心の深いところまで届いた一冊。
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すいかや日射しやソーダ等で彩られた夏が鮮烈で、三つ編みの葉で切った傷は自分の指と錯覚するくらいで、全編に散りばめられた描写が凄く生き生きとして素敵。夫の教え子で六年生の意識が草原に行ってしまう美少女問題児が訪ねて来ての交流も、弟を道連れに無理心中をした母親にひっそりと囚われているのも、際立っていた。
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小学生の時に母と弟が心中してしまい、トラウマを抱えたまま大人になったなつきが、夫、優や、夫の教え子佳奈子ちゃんと出会い、やはり闇を持つ佳奈子と共鳴し、草原という逃げ場であり再生の場にたどり着く。
佳奈子ちゃんがありえないくらい大人で、すごくいい。痛みを知る人は多分、子供だろうと大人だろうと、人の痛みのわかる人。だからありえないくらいがありえる。
優も名前のとおり優しい。頼りになるのは佳奈子ちゃんだけど、優には寛大さが備わってて、安心できる。
ラスト父と会えてよかった。
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子供の頃に母親が弟と心中し、父親は浮気(本気?)相手の方に行った過去を持つ女性の物語
主人公のなつき
教師をしている夫の優
優の教え子の佐野佳奈子
冒頭のなつきの描写からは、日常の中にささやかな喜びを感じながら慎ましく生きているように感じる
しかし、彼女の生い立ちには壮絶な経験が含まれる
弟だけを連れて逝った母親
そんななつきを顧みることなく不倫相手の方にいった父親
彼女はそんな経験に真正面から向き合うことを避けてきた
学校が夏休みに入ってから、夫の教え子の佐野佳奈子が自宅を訪れる
佳奈子は12歳の少女で、美しく大人びていて それでいて傷を抱えていそうなアンバランスな存在
実際、授業中にふらふらとどこかへ行ってしまい、うわ言のような意味不明な事を話すという
本人は草原に行っていると言うが……
そんな佳奈子と接することで、なつきが過去と向き合う物語
佳奈子が言うには、どんな人でも心の中に草原を持っているそうな
草原に行けば傷ついた心を癒すことができる
ただ、草原は戻ってこられない可能性もある
草原は癒やしの場でもあり、逃避の場所でもあるのでしょうね
確かに癒やされはするし、一時的に避難するには相応しいけれども、ずっとそこにいてはいけない場所
私も人生の中で辛い時期にこんな場所に行けてたらよかったのにと思う
でも、ここまで隔離された場所ではないかもしれないけど、それに近しいところに足を踏み入れていたかもしれない
まぁ、「辛さ」というのは本人以外にはわからないものですからね
死に出会ったとき、悲しければ悲しいほど、その人は幸せ
それだけ愛したってことだから
と、悲しいと思えるのは実は幸福なことの裏返しと捉える表現
確かにそんな一面はあるかも知れないけど、その幸せが一方的なものだとしたら尚更悲しいかもね
所詮人は他人の想いは分かり得ないわけだし、自分がどう思うかというのが重要なのではなかろうか
病弱で儚げな弟の薫
そんな弟に注がれるのと同じようには得られなかった母の愛
何故自分も一緒に連れて行ってくれなかったのかという想い
また、その後の父との関係
なつきにとって、家族とはどんなものなのでしょうね?
終盤の展開には少しもやる気持ちもありながら
会う事で救われた面もあるのだと思った
草原から帰ってきたところで終わらずに、その後の展開も含めて描かれることで回復・再生の物語になってるのでしょうね
解説が江國香織さん
作品の要素に江國さんと共通するものを感じる
不釣り合いな程大きな冷蔵庫の捉え方、すいかを食べるときの擬音語擬態語から感じられるリアリティ、ソーダ水の特別感などの表現
他にも、似たような作風の作家さんが思い当たる
心に傷や空洞を感じている女性の再生物語という点では小川糸さんも近しいものを感じる
やはり私はこれ系の物語に弱いのだと改めて感じた