紙の本
古代史の刺激に満ちた良書
2016/02/03 19:37
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:わびすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る
メソポタミアの文献に出てくる「ディルムン」や「メルッハ」など周辺文明との関係を発掘調査に合わせて紹介してくれた。著者の研究対象がバハレーンの古代遺跡らしいのでどうしてもそこの話が詳しくなるが、もう少しインダス側からの対応関係も知りたかった。しかし、謎の多い古代文明の研究成果は刺激に満ちており、とても楽しく読めた。
投稿元:
レビューを見る
最新の発掘により想像以上に発達した文明が中東地域に存在していたことが分かってきたが、本書ではそこから見えてきたメソポタミアの生活の様子を明らかにしている。メソポタミアとひとくくりにしているが、そこには様々な文化圏が存在し、遠くはインダスとも貿易をしていたという。農産物が育ちにくい地域ということもあり、農産物を得るために宝石類や土器などを輸出していたことが発掘された文書から明らかになっている。また、商取引には印鑑、それも取引先の言葉で書かれたものまでも使用していたことも分かってきた。こうしてみると、現代とそれほど変わらない商習慣だったように思える。古代文明と聞いて思い浮かべる儀式や生け贄、あるいは逆に牧歌的な生活というイメージをしがちだが、案外、今と同じような生活をしていたのかもしれない。
投稿元:
レビューを見る
2016/5/5
世界には四大文明以外にも文明と呼べるものがあるらしい。まだまだ調査段階で今後学説が変わっていくのかもしれない。メソポタミア文明はエジプト文明のような自己完結型ではなく、他の地域から輸入をしなければ成り立たない文明だった。それを支えていたのがペルシャ湾沿岸やイラン高原の地域。現代とあまり変わらないような貿易が以前からあり、人間ってそんなに急には成長しないんだなぁと思った。
投稿元:
レビューを見る
メソポタミアの人々はアラビアの海があるのに、積極的に利用していなかったらしい。
それに対してアラビア湾岸の人々は、海を利用していろいろと交易をしていたらしい。
そんな交易により、メソポタミアとインダスにもなにやら交流があったらしい。
内容はとても興味深いのだが、時代の分析に土器が多く使われており、遺跡好きとしてはもう少し遺跡そのものにも説明をさいて欲しいところである。
投稿元:
レビューを見る
表紙裏メモ
大河の恵みを受け、メソポタミアには人類最古の文明が誕生した。そこは農産物こそ豊富だったが、木材、石材、金属などの必要物資はほとんどなく、すべて遠隔地からの輸入に頼っていた。輸送を担ったのはアラビア湾の海洋民である。彼らは湾内に拠点を構え、遠くメソポタミアからイラン、インダス河流域まで出張して取引し、巨富を得ていた。一大交易ネットワークを築き上げた湾岸文明の実態がいま明かされる。考古学の新しい盛夏に文献史学の知見を援用し、農耕文明を中心とする従来の古代文明論に挑戦する大胆な書。
はじめに
前3千~前2千年紀のアラビア湾(ペルシア湾とも)、特にアラビア半島東部沿岸地方における文明の興亡を歴史の中に正しく位置づけるのが本書の第一の目的である。
1章 メソポタミア文明の最初の隣人たち
スーサの位置づけと原エラム文明、オマーン半島のハフィート期、「原ディルムン」とファフィート文化
2章 イラン高原の「ラピスラズリの道」前3千年の交易ネットワーク
トランス・エラム文明
3章 ウンム・ン=ナール文明~湾岸文明の成立
(アラブ首長国連邦アブダビ近くの海岸)
4章 バールバール文明~湾岸文明の移転
(バーレーン島)
5章 湾岸文明の衰退
古バビロニア帝国の崩壊とカッシートによるメソポタミア支配。初期ディムルンの衰退。
後藤健(たけし) 1950年生まれ。東京教育大学卒、同大修士。筑波大学大学院博士課程中退。古代オリエント博物館研究員、東京国立博物館研究員、同アジア・エジプト室長。2011年退官。
2015.12.15初版第1刷 図書館