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紙の本
2002/04/01
2002/04/03 22:16
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投稿者:日経バイオビジネス - この投稿者のレビュー一覧を見る
「日本から逃げ出した」独創的日本研究者7人の本音をルポ。ライフサイエンス分野から3人の研究者が選ばれている。たんぱく質の立体構造をNMRで探るトロント大学の伊倉光彦教授、食欲・就眠調節物質「オレキシン」などを発見したテキサス大学の柳沢正史教授、体細胞クローンマウスを世界で初めて作ったハワイ大学の柳町隆造教授という顔ぶれだ。
日本人は独創性に乏しいのだろうか? 答えは「ノー」であり「イエス」だ。
本書に登場する流出頭脳たちが語る日本の問題点は、研究業績が大物研究者を中心に行われ、業績そのものを評価する力の弱さ・大学を中心とした研究現場人事の密室主義・硬直した予算主義——の3点だ。
京都大学の柳沢正史講師は、ネイチャーに発表した1本の論文が縁でテキサス大学准教授のポストを得る。無名の研究者がなかなか評価され難い日本と違い、「良い論文を書いた若者がいるらしいから、呼んでみよう」と考える米国の懐の深さが異脳たちをひきつける1番の理由といえる。
柳沢教授はまた、対照的な経験をする。東京大学が生理学の教授に招請したのだ。しかし打診を受けた当人が迷ううちに「就任が決まったから来てくれ」という連絡が届く。審査のプロセスは本人に一切知らされることなくだ。この一件に不信感を募らせた教授は、東大教授の席を蹴ってしまう。
予算獲得の不備で高価な装置を購入できないことも珍しくない。海外流出組を公募して、従来の硬直した国立大学の人事慣行に一石を投じた筑波大学。カナダから応募して教授の辞令を受け取ったたんぱく質解析の伊倉光彦教授が、当日辞令とともに受け取った言葉が、「実は予算の都合で、申し訳ないがNMRの購入を1年待ってほしい」。ほどなく伊倉教授はカナダに“帰国”してしまう。
知力と度胸で世界最先端の業績を上げ続ける流出頭脳組と官僚主義に侵食された悲喜劇に翻弄される国内滞留頭脳組の対比が日本落日の真の理由を語っている、優れて今日的な日本人論でもある。
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