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紙の本
傑作とまではいいませんが、いいんじゃないでしょうか。特に、月に庭を作るっていう発想が好きです。それと老人たち。ま、70年後もあまり変わらない部分もかなりあるようですが・・・
2012/04/09 20:46
3人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
結構派手目なカバーです。デザインが、っていうより色使いが、っていったほうがいいかもしれません。ともかく鮮やか過ぎます。とくにグラデーションで明るくしていったときの、紺が青、水色って変化していく、ちょうど水色から白色になっていくあたりが強烈。もっと抑える必要があったのではないでしょうか。ま、水色嫌いの私が言ってるだけかもしれませんが、装丁の盛川和洋はどう見るのでしょう・・・
で、太田忠司。読んだ限りは、いつもレベルの高い作品を書いているのでしょうが、正直、人が騒いでいるのを見たことがありません。偏見だというのは分かっていますが、やはり〈太田忠司〉っていう名前が足を引っ張っているのではないでしょうか。どうみても古臭い。太田はともかく〈忠司〉っていうのがね、古臭い、っていうか野暮だと思うんです。時代小説作家だろ、なんて言いたくなってしまいます。勿体ないなあ、けっこういい作品書いているんだから、もっと評価されてもいいのに・・・
とまあ、いらぬお節介はやめておいて、このお話、初出が書いていないということは書き下ろし? それに、装丁については盛川和洋としか記されていませんが、月面の地図や挿絵は誰が描いたのでしょう? 全部、盛川っていうことでもいいんですが、それならそう書いたっていいんじゃないでしょうか、祥伝社さん・・・
で、お話ですが出版社のHPでは
*
月に庭園は造れるか!?
不気味な警告、少女誘拐、幽霊騒動、自殺未遂…
若き女性園芸家が、立ちふさがる事件と謎に挑む、
SFミステリーの傑作誕生!
*
と書かれています。これでは全く分かりませんので、まず登場人物を紹介していきましょう。まずは、主人公、エチカ・ヤマギワがいます。感じで書けば、山際繪智花、23歳。酒好きの父親は、肝硬変で40代で亡くなっています。で、彼女は有名な造園家アデル・コープに五年前に弟子入りして何とか使い物になってきたところです。
で、アデル・コープは、30年前にタッドと交わした約束を果たすために、エチカを月面に代理人として派遣することにしました。そう、これが「月に庭園は造れるか」という文章に繋がっていきます。では、タッドとはなにものか、ということになります。タッド・モリス、21世紀最高のミュージシャンで、世界で十指に入る資産家だそうで、2010年アメリカ生まれ。お話は2083年ですから73歳ということになります。
で、タッドは2080年70歳の時に現役からスッパリ引退して、翌年、月面に住宅を建設、以来そこで過ごしています。そこに緑あふれる庭園を造りたい、というのがタッドの希望で、昔知り合ったアデルに声をかけました。月面の住宅オンルッカー・ハウスにタッドは、例えば機械や美女に囲まれて楽しく暮らしているか、というとそうではありません。気の置けない老人たちと一緒に暮らしています。
住人たちをあげればマルセル・コヴェリがいます。いつもピアノを弾いている穏やかな老人で、音楽大学を出ているが、実業家として、美術品の蒐集家として有名だった元貴族です。イーサン・グッドウィンはアメリカから来た著名な投資家で、やたらとエチカに食ってかかる人嫌いの老人で、幽霊の存在を信じています。
シャビエル・バッサーノはスペインから来た高名な小説家で、2013年生まれ。ノーベル賞作家ですが、受賞して騒がれたことを恥じているところがある老人です。リディア・コロレフは21世紀最高のヴァンプ女優と評された80歳の老女ですが、アンチエイジングなどにより、今でも30歳以上若く見えます。彼女もわけあってエチカを嫌っています。
ハウスの生活を支えている人のなかで最も重要なのが楊永徳です。30代半ばの東洋人で、タッドの使いで月に到着したエチカを迎えに来た男でもあります。タッドのもとで働くスタッフの一人で、職業がら多くの国の言葉を使うことができることもあり、当然、読者としてはエチカと永徳との恋愛を期待するのですが・・・。
で、彼らの周辺にいろいろな事件が起きます。それが〈不気味な警告、少女誘拐、幽霊騒動、自殺未遂…〉ということになります。ちなみに、太田がいう、30年後も人間の生活はあまり変わっていないのではないか、衣服や食事は特に、という考え方には私も賛成ですが、このお話、月面という設定がなければ、現代とあまり違いはないな、って思ったりします。
全体はchapter1~chapter8までのタイトルなしの8章と、あとがきからなっています。各々のchapterに簡単に触れておけば
chapter1:静止軌道駅での少女の失踪事件
chapter2:オンルッカー・ハウスの様々な住人
chapter3:イーサンがオンルッカー・ハウスで見た幽霊
chapter4:シャビエルが見せた月面での危険な行動
chapter5:静止軌道駅での少女の失踪事件
chapter6:リディアがエチカに見せる敵意の理由
chapter7:月面における作庭作業に反対する地球の環境保護団体たち
chapter8:エチカが月面で見つけたものの正体
太田がいう、30年後も人間の生活はあまり変わっていないのではないか、衣服や食事は特に、という考え方には、なんとなく頷けます。でも、先ほども書きましたが、月面生活、という点だけを除けば、2083年ではなく、今でもいいお話だよなあ、って思います。凄さは感じませんが、悪くはないお話とはいえそうです。
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