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紙の本
ノーベル賞受賞者アマルティア・セン教授が経済的不平等の問題を徹底的に議論
2000/10/25 18:15
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:金子 雄一 - この投稿者のレビュー一覧を見る
アマルティア・セン英ケンブリッジ大学トリニティカレッジ学寮長はインド人で,1998年アジア人として初めてノーベル経済学賞を受賞した。彼の業績は「経済学の倫理的側面」を復権させたことにあるとされる。それ以前の厚生経済学が市場機構によって効率的な資源配分をいかに実現するかに集中していたのに対し,センは所得分配や権利・自由の配分など経済学の倫理的側面に正面から取り組んだ。所得や富だけでなく,社会制度やルールの制約の下で人が望ましいと考える生き方を選択できる権利を保証されているかどうかで,経済システムのパフォーマンスを判定するというアプローチを提示した。
本書は,73年に出版され経済的不平等の分析の先駆となった『不平等の経済学』と,セン及び共同研究者であるジェームズ・フォスター・バンダービルト大学教授による補論「四半世紀後の『不平等の経済学』」からなる。原著は,功利主義など既存の厚生経済学を批判的に吟味しながら不平等の測定・評価の問題に挑戦したが,補論ではその後なされた不平等と貧困の計測に関する膨大な研究を引用し,吟味・位置付けながら,議論を包括的にするとともに実践的な課題に対応させることを意図している。
緻密な理論的概念,推論が続き,専門外の読者には歯ごたえがあるが,筆者の動機はあくまで実践的なものであり,技術的部分は飛ばし,結論だけつかむことも可能なよう配慮してある。経済的不平等に関する議論を整理するのに格好の書である。またセンの開拓した,人々の持つ選択肢に注目する潜在能力アプローチは国連援助機関による発展途上国支援のあり方にも影響を及ぼすなど,実践的な意義も大きい。国民所得は世界最高レベルにあり,所得分配の不平等も比較的小さいにもかかわらず,豊さが実感されず,閉塞感が強いわが国にも,本書はメッセージを送ってくれる。
翻訳は,日本における厚生経済学の権威である鈴村興太郎一橋大学教授ら。
(C) ブッククレビュー社 2000
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