紙の本
これは僕らにとっての明後日の文学である。
2016/09/27 10:53
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投稿者:らくだの旅人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本には短篇三作が収録されている。中でも最後に納められた「半減期を祝って」は、福島原発事故から30年後の近未来を描いた著者最後の作品にして、文学者としてまっとうな想像力によって育まれた日本現代文学の最良の成果のひとつと言えるものである。読むものに、じわじわと息苦しい近未来の姿を明かす静かな語りの向こうには、著者の何処にもむけられようもない哀しみと怒りの青白い炎が揺らめいている。現代の巫女として語らしめた現代小説の僕らの明後日の文学がここにある。
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短い短編集、3つ。
標題の作品が、印象的。セシウムの半減期の近未来小説。
ああ、そういう事を考えたのか。怖くなる。
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半減期?と最初すぐにピンとこなかった。それだけもうすでに忘れ去られてきて、原発事故などまるでなかったことのように風化してる。原発事故から30年後の物語はそうは、ならないことの祈りのようにも感じた。まだ何も解明されてない放射能の影響が、差別という形で現れないで欲しいという著書の願い
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ニューヨークを語る元妻のトヨ子の生前の話を
ファミレスで息子の薫とする男。
学生の曾祖母が乗ったというオートバイから、
景子が昔付き合っていた妻子持ちの男も、伯父もオートバイに乗っていたと思い出す記憶。
トウホクで起きた災害と事故から30年経って
すっかり変わり果てたニホン。
著者がちょうどだいたい1年前に亡くなっているとは。
トヨ子の話は読みやすかった。
半減期はちょっと暗くて、気が、滅入る。
戦争が終わって、もう何も起こらないとは
限らないわけね。
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ニューヨークに言ったことが無いのにニューヨークのことを良く知っているおんな、知らない男との結婚よりオートバイを選んだ曾祖母さん、30年後にセシウムの半減期を迎えた軍事独裁国家になっている日本を想像、3編とも変な話。
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津島祐子を読むのは初めて。
短い文を連ねる文体と独特の読点の打ち方で、そこはかとなく叙情的な雰囲気を醸す文章だなという印象。
ちなみに、そうした文章の特徴は太宰の作品にも通じるところがあるような…?と思ったのは私の色眼鏡かしら。
しかし、穏やかな叙情的な文章を書く人なのかと思いきや、社会風刺のような表題の短編で締め括られたのにや驚いた。
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文章は読みやすいし、テイストも嫌いじゃない。絶筆だと言う表題作は、「ASD」の件をもう少し抑えめにした方が良いような気がするが、その余裕はもうなかったのだろうか。