紙の本
現代日本の孤独な母親の心境を実に見事に描いた作品です!
2020/06/23 11:00
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、『フルハウス』(泉鏡花文学賞)や 『家族シネマ』(芥川賞)などの名作を次々に発表しておられる小説家で、劇作家の柳美里氏の作品です。同書の内容は、夫は単身赴任中で、幼い息子と二人暮らしの母親・ゆみが主人公の物語です。ゆみは幼稚園や自治会との確執や日々膨らむ夫への疑念が常に頭から離れません。そして、孤立無援の彼女はやがて息子のゆたかだけを見つめるようになっていきます。そして、彼女の思いは「あの日」を境にエスカレートしてゆきます。同書を読むと、現代日本における孤独な母親の心境を映し出しているように思えてなりません!
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エゴと愛情は紙一重。自分を含め、主人公ほど極端ではないにしろわりとあるあるな部分が多く、子を持つ親としていま一度考えなければ…と思う内容であった。
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相変わらず文章の表記の仕方が独特ですが、私としては意味がないと思います。読みにくいだけ。内容はよくて、結末も納得しましたが、もう少し破滅への過程をリアルに表現してほしかったですね。
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現実を直視し、自分自身を追い込む。待っているのは破滅という名の解放。なんとなくダンサー・イン・ザ・ダークに近い世界観。
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読了後,「うわあ…」と声が出た。
単身赴任先から年に1度帰ってくるくらい心の離れた夫は,もはやゆみの支えとはなっていない。
代わりに彼女が心を寄せるのは,年少のひとり息子。この息子を守るため,ゆみは些細な害悪からも彼を守ろうとする。放射能がついている可能性があるのでケーキのいちごは食べさせない,幼稚園の砂場では遊ばせない。食事中に正座をさせる幼稚園の方針からも,メールや電話で専門家に意見を聞きまわって何とか逃れようとする。
彼女にとって生きるには人生に脅威が多すぎ,支えが少なすぎた。
元気が有り余っていて少し落ち着きたいくらいのときに読むのがいいのかもしれない。
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◯ただただ悲しい。
◯この本はちょっと読みにくいところがあり、かなりとっつきにくい人もいるのではないかと思う。冒頭を読んだ時、まさかこのまま行くのではあるまいな。。。と思ったら最後までやり通した。読みにくいが、精神状態を率直に表現できており、読んだ文章が頭に再生されるほど、まさに脳から同じ精神状態に陥るような感覚がある。ゴシック体、ポイントの大小を巧みに使用し、精神状態を表現し、読者の精神も引き摺り込む。これは秀逸である。ただ読みにくい。
◯内容的には、現代的な問題を多く含んだ小説であり、これらの表現の難しさだけに囚われることなく読む必要がある。
◯解説や本の紹介に現代の母親が抱える悩みを表現した傑作とあるが、まさにその通りで、その辺りも読んだ人の心にずっしりとのしかかってくる。忍者ハットリくんが、軽妙ですらなく、ただシュールにしか感じられない。
◯読みながら思ったことは、この小説がいかに重いものであったとしても、小説がその時代を写す鏡でもあるのであれば、ここに表現されたあらゆる社会問題を、人の悲しさを乗り越えて、これからを考えなければならないと思った。