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投稿者:手紙 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ゆき博士の研究と、日常が、わかる本です。
スキーの連中に追い越されたり、線香花火を顕微鏡で覗いてみたり。
中谷宇吉郎を、知りたい人のためのブックガイドも、あります。
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中谷宇吉郎先生は、小林秀雄の『考えるヒント』の冒頭、常識で、小林秀雄の質問に科学者として答えている方。
雪が仕事かもしれないが、後半、雪以外の文章が特に面白い。
○天地創造の話、◎立春の卵、○線香花火、○琵琶湖の水、茶碗の曲線、イグアノドンの唄。
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折しもノーベル賞を受賞した大隈先生が会見で基礎科学の大切さを説かれたところですが、科学へのまなざしの在り方について半世紀以上前に同じように丁寧に語った中谷先生。
栞のラスコーの壁画についての言及は目を丸くして驚いてしまった。まさに科学と自然に対するあるべき姿勢を体験させてもらったと思う。
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面白かった。
まず、文章が平易で朗らかだ。そして話題が豊富。
本業の雪についての話は、科学的で実際的。
とても興味深かった。
一方で、立春の卵や琵琶湖の水の話など、一見他愛の無いことに注目し、理知的な観点から警告を発する手腕は流石。感心した。
先読の寺田寅彦に岡潔の姿も垣間見え、その関係性を想像するのも楽しかった。
このシリーズはやはり良い。
さて、次は誰を読みましょうか。
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目次
・自然の恵み―少国民のための新しい雪の話
・雪の話
・雪の十勝―雪の研究の生活
・雪を作る話
・雪後記
・大雪山二題
・天地創造の話
・立春の卵
・線香花火
・琵琶湖の水
・茶碗の曲線―茶道精進のある友人に
・イグアノドンの唄―大人のための童話
・簪を挿した蛇
雪の研究で有名な研究者、中谷宇吉郎の随筆。
師の寺田寅彦も文章家としても有名だが、中谷宇吉郎の文章もなかなか。
余計な修飾などない簡潔な文章なのに、柔らかな温かみのある文章。
雪の結晶が持つ美しさに魅せられて、十勝の山小屋に住み込んで、毎日何時間も雪の写真を撮り続けるのである。
防寒もほとんど意味のないような厳寒の北海道の冬。
戦争前の頃だと、今よりもっと北海道は寒かったろう。
機材や荷物を抱えて馬そりで山を下りるとき、彼はすでに翌年の雪山を楽しみにしているのだと思う。
何しろ体調を崩して5年ほど北海道に来られなかったのだが、治った途端に北海道にやってくるのである。
もう、いいんじゃない?なんてことにはならないらしい。
“科学が戦争の役に立つのは事実であるが、それは科学の本然の姿ではない。科学は自然と人間との純粋な交渉であって、本来平和的なものであるからである。そういう意味での科学は、自然に対する脅威の念と愛情の感じとから出発すると考えるのが妥当であろう。”
雪は、美しくもあり、平和でもあるのである。
科学の伝道師でもある著者の文章は、センス・オブ・ワンダーに満ちている。
“顕微鏡写真で形を知ったり、本を読んで分類の名前をおぼえたりすることよりも、自分の眼で一片の雪の結晶を見つめ、自然の持っている美しさと調和とに眼を開くことの方が、ずっと科学的である。非科学の代表は、自分のすぐ眼の前にある自然の巧みを見ないで、むやみと名前や理論などだけを言葉でおぼえることである。”
うーん、耳が痛い。
昭和新山ができるさまを、天地創造をこの目で見られることの喜びにたとえ、「立春の日には卵が立つ」という世界的に有名となった珍説を、実験と計算を通して論破し、線香花火の美しさを科学的に解き明かし、美しい文章で表現する。
ちなみに火球を作って、そこから火花が飛び散る花火は日本の線香花火だけなのだそうです。
とても気持ちのいい文章ばかりで、心が美しく洗われたような気持ちがいたしました。
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「雪を作る」。なんてステキな言葉だろうと。もちろん、雪の良い面も悪い面もあるのだろうけど、人間と自然という中で、受け入れるべきあれやこれやがふんだんに。
雪の話ばっかりなのかと思ったけど、そうでもなく。それもそれで面白かった。
何よりも、解説にあるとおり、ある意味ドライな書き味がよいのかもしれない。
昨今の現状を考えるからこそ、若い方たちに「科学」は面白いと読んでもらいたいなぁと。
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初めての中谷宇吉郎。北大に赴任し、雪を見て結晶の研究をしようと思ってしまうところが研究者なのだなぁと納得。恩師の寺田寅彦に示唆された線香花火の研究の下りも面白い。中谷の中でも知られたエッセイを集めている一冊なのだろう。研究から行政、子どものと思い出まで様々な内容が読めて面白かった。ただ初出がなかったのは残念。全八巻の全集に当たるしかないのか。
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ドミトリーともきんすから興味を持ち、こちらにたどり着く
STANDARD BOOKSシリーズは揃えたくなるような美しさ
科学者・作家の珠玉の作品を集めた随筆シリーズ
表紙は薄いグレーと白で雪の結晶のスケッチ
助手をしていた寺田寅彦との逸話や考古学者弟との話なども興味深い。科学に対する真摯な姿勢、危険性についても自戒を込めた言葉が深い。
雪が降らない街で育ったので、成人過ぎて初めて降雪を体験して全身で感動したのだが、こんなに雪が美しいとは。雪の結晶の映画を作ったことがあるとのことで、機会があれば観てみたい。
雪の結晶の顕微鏡写真を撮るのに、零下五度以下で、冷やした顕微鏡や硝子板を用意しないといけないという状況は、想像しただけでこの猛暑でもひんやりしてくる。
雪の結晶は代表的な六花状だけでなく、十勝岳の観測地点では、角錐状、鼓型、段々鼓型などの結晶があるらしい。
人工雪を作るまでの想像を絶する試行錯誤の様子を平易な優しい語り口で綴られている。天然の失敗作としてひねくれ結晶に愛情を感じたり、虫眼鏡で雪山の写真に見とれる癖も親近感を持つ。
雪を害とつけたがる日本の習慣(雪害対策、雪害防止委員会、白魔など)に物申す話は外国との比較が興味深い。雪解け水を利用して大発電事業を起こすスイスの調査を紹介しているが、その後どうなったのか。
立春の卵は、人類の盲点の存在を示す一例としての種明かし、試してみたがなかなか難しい。
線香花火は火花の様子を観察しながら楽しみたいが、花火できるところが少なくなって残念。
終戦後に子どもたちへ「探検記」を読み聞かせして、感激している様子と、イグアノドンの唄、その後の子どもたちの様子は何度読んでも涙腺を緩ませる。
『生きる者はどんどん育つ方がよいのだと、私は寝入ることにした。』
加賀市の中谷宇吉郎雪の科学館にいつか行ってみたい。
以下抜粋
自然の恵み
『顕微鏡写真で形を知ったり、本を読んで分類の名前をおぼえたりすることよりも、自分の眼で一片の雪の結晶を見つめ、自然の持っている美しさと調和とに眼を開くことの方が、ずっと科学的である。非科学の代表は、自分のすぐ眼の前にある自然の巧みを見ないで、むやみと名前や理論などだけを言葉でおぼえることである。』
『雪の結晶は自然の女神が作った氷の細工物である。いずれにしても氷であるから、本来すきとおったものである。そういうすきとおったものが写真にとれるのは、その輪郭のはじのところや、表面の凹凸のあるところで、光が全反射をするために、そこが黒い線になってうつるからである。』