電子書籍
忘れちゃ行けない事
2018/02/07 21:51
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投稿者:ポッター - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦中、戦後の物語。消費する事に慣れてしまい、物のありがたみが薄れてきてしまっている、今の時代に警鐘となります。苦しい時程、人とのふれあいが力となるんですね。
紙の本
主人公の伸びた背筋に救われる
2005/08/03 20:32
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:にんぎょ - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦中戦後の日本の社会の中で天涯孤独な少年が、甘いもの−お菓子−への思いを支えに、過酷な現実の中を生きぬく物語。
帯文では「酷くて哀しい物語なのに、何故こんなにユーモラスなのだろう」とありますが、ユーモアよりも哀しさが応える話です。読んでいて結構ごつごつあたってくる部分があり、自伝的な部分も多いらしく、書く側の気迫とか、思いの強さに身体のどこかをぎゅっとつかまれるような気がする本です。
菓子パン、金平糖、お汁粉…時局が時局だけに、甘いものは貴重品で、主人公シゲルが出会うお菓子はほんのわずか。エクレアなどはとうとう実物は一回も登場しない幻の憧れのお菓子。また、代用食のお菓子もどき。そして、それぞれに切なかったり辛かったりの思いが痛烈にまとわりつきます。それはまた、それにまつわる人間との関係の反映です。
戦中戦後の苛烈な、人間性がもろに露呈される時期の物語です。一番の悪役「ホワイトサタン」をはじめとして、「ひどい」と感じるに人も皆自分を肯定する理屈を持っています。理屈の権威に寄りかかってそっくり返っている者や、また別の理屈に寄って開き直っている人間。でも、その中でシゲルはごまかしのない「本物」であろうともがきます。「本物」の優しさで接してくれた人にこたえるために。
戦中もギリギリのところで生き抜きますが、戦後の浮浪者生活の描写では、私は心底ぞっとします。この有様から今の状態まで来られて本当に良かった、と痛切に思います。
上野駅にひしめく浮浪者の群れを
「それはなんと言ったらいいのか……ある「豊穣」の景色でした、戦争が栽培した悲惨の、たわわな実り……。見事な豊作でした。」(374ページ)
敗戦から一夜明けて、「聖戦」は「侵略戦争」となり、死んだ人は「軍国主義」殺されたのであり、生き残った空っぽの心の人たちには「一億総ざんげ」で責任が分配され…
「生き残ったことを罰せられてでもいるように、恥多いくらしにまみれているのです。」(375ページ)
このあたりの描写には、実際にその時代を知らない私が、報道写真などからだけでは窺い知ることの出来ない、その場にいた人の呻きを聞く思いがします。
中学生の感想文課題図書でもあった本ですが、大人になった今のほうが痛みを感じます。自分の理屈が借り物でないかどうか、耳に快い情報や意見だけ選んで入れていないか考えずにはいられなくなる本です。
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戦後の貧しく、つつましい生活の中でのお菓子に関する憧憬や甘美な感想を期待していたが、なかなかハードな孤児である少年の成長記で、タイトルに反してお菓子そのものはあまりでてこない。
全国青少年読書感想文コンクールの課題図書だったとは思えない当時の風俗描写が時代を感じて興味深い。
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「お菓子」とタイトルにありますが、料理の本ではなく、
戦中戦後の大変な時期を少年として過ごした作者の実際の経験が記されたものです。
「つらいことばかりの人生も、思い方で楽しいものに変わる」
どんなに苦しいときをも乗り越える力を与えてくれる、そんな本でした。
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テレビでの映画の予告編を見て、ふと読みたくなった本でした。想像していたストーリとは違っていたけれど、静かに心に沁みる作品でした。
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≪内容覚書≫
時代は戦前から戦中、そして戦後。
甘いものが手に入れにくかった時代。
孤児として生きるシゲルは、お菓子への強い憧れを胸に大切に抱き、
たくましく生き抜いていく。
≪感想≫
シゲル少年は、不幸な境遇なんだけれども、
幸運な子どもだなぁ、と思った。
道を踏み外しそうになった時、真摯に向かい合ってくれる人と
次から次へと出会う。
と、最初、思ったけれど、読み終えて、じっくり振り返ってみると、
違うかな、という気がしてきた。
きっと誰にでも、そういう人はいるんだろうな、と思った。
ただ、それを素直に聞き入れられるかどうか。
そこが、人によって大きく違う。
シゲル少年は、なんだかんだと言いつつ、人の「愛」を、
きっと信じているんだと思った。
だからこそ、いろんな人の、ちょっとした温かさや強さを
受け入れて、そしてまっすぐ生きて来られた。
途中から「お菓子」=「愛」だと思って読んでいた。
また、戦時中でも孤児や少年犯罪者を受け入れる施設が、
きちんとあったことに、驚いた。
混沌とした時代のイメージがあるため、
そういうのはなくなっていたかと思った。
他にも兵役忌避で逃亡した人や、
ましてや自殺した人もいた、という事実も衝撃だった。
嫌がりつつも、みんな戦地に行ったような気がしていた。
そんなわけなかった。
戦中の小説を読むと、
いかに、自分の中の戦時のイメージが偏っているかを、
目の前に突きつけられて、愕然とする。
たくさんの本を読んで、視点を増やしたいと、思わされた一冊。
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天涯孤独の少年が、甘いお菓子への憧憬を心の支えに戦争に突入して行く苦しい時代を生きていく。
作者の実体験を基にしているとのことで、主人公の少年の心情が丁寧に描かれている。
課題図書にもなっているということで、児童文学色が濃く読み易い。
時代と言うこともあるのだけれど、これでもかと言うほど襲い掛かる不幸や苦しみの中に、希望を見出し、人間としての尊厳に悩み迷いながら生きていく少年に逞しさと感傷を感じた。
少年の放浪の人生にもいくつかの出会いがあり、少年を明るい方向へ導いてくれているのだけれど、個人的には遠山刑事との交流が一番好きだ。
この人の心の広さには感服する。
感化院を出て仕事に就いた後初めての休日に少年が刑事を尋ねたシーンには、知らずに涙が零れた。
大人になってからでも十分心に響いてきたけれど、できれば子供のうちに読んでおきたかったという気がする。
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主人公の孤児の少年を温かく見守る、若くて優しい女教師を、私たちも恋慕せずにはいられない!
この女先生の正義感にもまた胸打たれます。世のなかの偏見や大人の間違った価値観から子どもを守ろうとする姿には『橋のない川』の女先生にも重なるな、と思いましたよ。
ところでここに登場する少年監護施設「報徳学院」って実在したのだろうか?千葉県の松戸にあったような描写なんですが。
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たまたま戦中~戦後を生きた少年の話を2作続けて読むことになった。どちらも十代後半の孤児。ああ、なんかぐっと、くる。私は世界を何も知らないなぁと思った。
太平洋戦争は、日本に住む日本人の日常を変えてしまった。息子を赤紙でとられた母は国ではなく、戦場に行かずにすんだ母子を妬むだろう。どんなきれいごとを言ったって、それだけでは世の中は生きていけないのだ。
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本の惹句にあるように 「酷くて哀しい物語なのに、なぜこんなに」までは賛成だ。
でも その先の「ユーモラスなのだろう」については たぶん 読んだ人の意見が分かれるところではないだろうか。。
これがほとんど実話だということに隔世の感を覚える。
とある機会に、著者の話を直接聞く機会を得た。
今では、かなりのご高齢の方だ。
しかし、今でも子供みたいな心を持っておられることは伝わってきた。
この本は、弱虫だけど芯を強く持たざるを得なくなった少年の話だ。
少年の持つ芯のまま大人になった人の回顧小説だといってもいい。
その“芯”がしっかりしたものだっただけに 誰にでも読んでもらいたい、特に今の子供には読んでもらいたい小説になっている。
本当は ★4を挙げたいところだったが、
ちょっと終りのほうには 主人公がいい人っぽく鼻につくところと、
その後の逸話が知りたくなるので
★は3つにした。
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タイトルから想像した話とはだいぶ違ってたけど読んでよかったと思います。たまにこういう本を読まないとな〜。
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この小説はあえて評価はしない。
たった数十年前の話だが、戦争の時代を希望を持って生き抜いてきた子供の話。
文章力でもなく、創作力の鑑賞でもなく。 気持ちで読む本。
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戦時下を孤児として生きた作者少年時代の話。たくましい一辺倒ではなく、どちらかといえば不器用なほうで、しかしなんとも壮絶。
場面がすぐ変わるのでやめられなくなった。
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図書館にて。名前順に並ぶ文庫コーナーではなく、文化・風俗コーナーに並べられていたこの本。タイトルから甘党のおじさんの甘味巡り的な内容をイメージして手に取ったけど、全然違った。でも勘違いして良かった、この本に出逢えて良かった。
甘いお菓子。仕事の合間に食べるひとかけのチョコレートや、大事な人たちと食べる可愛いデザート、お祝いのケーキ。お菓子を食べる瞬間の多幸感。でも私がいくら甘いものに目がなくても、このシゲル少年ほどの熱い想いはないだろう。
7歳で生みの母を亡くし、10歳で父も亡くし、父の再婚相手は自分の子供だけを連れて失踪。孤児院を脱走し、空腹に耐えかねてお菓子を盗もうとしたところで捕まってしまい、ついには感化院に入れられてしまうシゲル少年。面会客すらない彼がお菓子を食べられるのは年に二度だけ、軍国主義のサディスト指導員にボコボコにされ、ミナシゴである自分の運命に打ちのめされながら、それでも必死に逞しく生きる…。遠山刑事がくれたアンパンふたつは、どれほど心の支えになっていたか。富永先生の弾いてくれる「お菓子と娘の歌」をどれほど愛していたか。
狂気じみた戦争に大切なものを次々奪われていった人々。シゲル少年には、元より親もなく金もなく学もなく…しかし、彼には甘く美しいお菓子がくれた希望があった。
でもそのお菓子すら闇取引され、汚い損得の道具に成り果て、美しいものでなくなってしまう戦争…
「世界のあらゆるこどもたちが、甘みのない人生を生きる日がないように」願う。
夜中にハーゲンダッツを食べておきながら体重の増加を嘆くことが出来るのも、丸みを増した身体のラインを眺めてため息をつけるのも、贅沢なこの時代のこの国に生まれたおかげなのだよなぁ。
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なぜこちからが全国青少年読書感想文コンクールの課題図書となったのか、また、青少年たちのみでなく、大人の私たちも今後を生きるために、心のお菓子を見つけていきたいと思いました。