電子書籍
紅雲町珈琲屋こよみ
著者 吉永南央
北関東の紅雲町（こううんちょう）で、コーヒー豆と和食器の店を営む大正生まれのお草（そう）さん。彼女は、常連たちとの会話から街で起こっている小さな事件に気付き、ひとり捜索に精を出す。ある日、とあるマンションの一室で虐待が行われていると気づいたお草さん。ひとり捜索まがいのことを始めるが…。悩む人たちの心に彼女の言葉は届くのか？ 行動するお婆ちゃん探偵・お草さんを主人公に「老い」と「家族」を正面に据えて描く、期待の新鋭のミステリ短篇。
萩を揺らす雨 紅雲町珈琲屋こよみ
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紙の本萩を揺らす雨
2011/09/19 09:18
コーヒーの香りと、風雅な和食器
12人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者：紫月 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「紅雲町のお草」はオール讀物推理小説新人賞受賞作。
その他
「クワバラ、クワバラ」
「0と1の間」
「悪い男」
「萩を揺らす雨」
を収録した短編集。
主人公の草さんは76歳。
「古蔵屋」という和食器とコーヒー豆の店を営んでいる。
店を手伝っているのは、元スキー選手の久実ちゃんだ。
一人暮らしの草は、店を営みながら毎日散歩をし、ポトフを煮込んだりちらし寿司を作って友人の由紀乃さんに届けたり。
また、「萩を揺らす雨」では、草のひっそりとした恋が語られている。
そんな静かな暮らしの中、草はささやかな謎を解いていく。
和服姿の草はしっかりとした、落ち着いた女性だ。行間からはコーヒーの香りが立ち上ってくるような気がするし、和食器の風雅な形は目に見えるよう。
しかし草の暮らしはそれほど優雅でもなく、忍び寄る老いの気配に怯えたり、物忘れが始まりつつある友人を見て悲しんだりと、かなりリアルだ。
老いて気楽に一人暮らし、とはよく言うけれど、夜に一人歩きをすれば徘徊だと間違われるなど、草は厳しい現実の中を生きている。
しかしそれを必要以上に嘆いたり、後ろ向きになることなく、淡々と受け止て日々を過ごしていく姿には、ある種の強さが感じられる。
古家を改築したコーヒーの薫り高い「古蔵屋」を舞台に、コーヒーを入れたり、久実ちゃんと談笑したり。そしてたまに、近所の小さな事件に首を突っ込んでみたり。
終盤に差し掛かった人生のあれこれに立ち向かいながらも、しっとりと生きていく草。
ほっと気持ちが落ち着くコージーミステリだ。
紙の本まひるまの星
2018/04/02 09:46
お草さんのお店にいきたいな
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者：nako - この投稿者のレビュー一覧を見る
お草さんのお店、本当にあったらいいのになあ・・・。是非行ってみたいお店です。本の内容はご近所の謎解きといった感じで楽しく読めました。このシリーズ、大好きです。
紙の本薔薇色に染まる頃
2023/03/05 16:48
ますますハードボイルド風に。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者：タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
お草さんの物語はもう何作目なんだろか？シリーズ1作目から読み続け、最初は、日常の中に潜む事件がテーマだったのが、近ごろ、どんどんハードボイルド風になってくなぁ...と。本書はタイトルが美しいから油断するけど、帯には、殺人とか逃避行とか。そして、読みだしたら、ホントにとんでもない事件に巻き込まれてしまった！
落ち着いた思考と度胸と、仲間の手助けで、どんな風に解決されてゆくのかがいちばんの読みどころ。
紙の本薔薇色に染まる頃
2023/01/01 21:47
お草さん巻き込まれる。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者：咲耶子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
京都出張へ行くんだけど、東京駅に行く前に寄り道。その辺からお草さんは何事かに巻き込まれつつあります。
そして、品川駅で流血事件が。わけが分かんないうちに男児を託されます。
お草さん、京都に着けるのか！？
今回、ちょっとヤバい組織がらみ。これから先のお話に影響してくるのか？楽しみ。
紙の本初夏の訪問者
2022/01/27 09:42
お店を訪問させて頂きたい
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者：笑う門ふう - この投稿者のレビュー一覧を見る
「あ、きっと素敵なお花を活けられてる」と描写だけで分かるってなんて素敵
夫婦って一緒に縄跳びを飛んでるような…のくだりに
ほぉ～と納得
初めての著者作品でしたが、出会えて良かった
シリーズ読み続けさせて頂きます
素敵な読後感をありがとうございました。
紙の本月夜の羊
2021/11/13 22:11
ヒロインお草さんの活躍もさることながら、新キャラの存在にもココロ躍りました。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者：タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
毎年、新刊が出るのを楽しみにしている紅雲町珈琲屋こよみシリーズ。9作目も、いつもと変わらず、社会問題となるテーマをめぐる暮らしのミステリー仕立て。本作で、ヒロインお草さんが立ち向かうのは、ご近所で打ち捨てられるように起こっていた中年の引きこもり問題。そして、その地区の中学校に起こっている「教育現場の右傾化」。どちらもシリアスでありながら、解決するにはハードルの高いこと。そこに齢70歳すぎたお草さんの経験値と知性、行動力にて、いったんの解決へ向かう面白さ。本作では、新しいキャラクター、ユニークな個性を持った中2女子・渡辺聖が登場し、次回作以降の活躍にも期待したく。
というか、もう次回作が読みたい気満々です。
紙の本初夏の訪問者
2021/11/01 19:42
初版で読んだけど・・・。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者：nako - この投稿者のレビュー一覧を見る
ハードカバーの初版本で一度読んだけど、また買っちゃいました。お草さんシリーズは何度読みかえしても面白い。今回はお草さんの亡くなったはずの息子と称する人物の出現でお草さんが大変でした。
紙の本初夏の訪問者
2021/06/03 15:05
ひとくぎりした感じ。次作は、何か新境地に行きそうな...個人的な勝手な期待ですが。
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者：タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公のお草さんは、北関東の街で、小蔵屋というコーヒー豆と雑貨の店を営んでいる。彼女のセンスの良さと、知的な考え方に出会う読書ももう8冊目。
いつも、日常的だが抜き差しならない事件が起こって、物語はミステリーテイストで展開するのだが...。
本作の事件は、幼くて亡くなったはずの息子が成長し、50代の感じのいい男性として登場する。彼はホンモノなのか偽物なのか？読者もお草さんとともに、こころかき乱されつつも読み進む。そうして立ち上がってくるのは、お草さんの若き頃、旧家に嫁いでの苦労と苦悩の思い出。第一作でも触れられた過去が、ここでもう一度視点を変えて語られる。読了して思うのは、もう一度、一作目から順に読み返そうかなぁ...と。
紙の本初夏の訪問者
2020/10/06 08:36
今回はお草さんが大変！
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者：nako - この投稿者のレビュー一覧を見る
このシリーズ大好きです。毎回、紅雲町の人たちを巻き込んだちょっとした事件が起こる。今回はお草さんが大変。亡くなったはずの息子を名乗る男が出現、さてどうなるか？読んでのお楽しみです。結末は大体予想出来たけど、どんなふうに問題が収まるのか楽しみながら読みました。
紙の本黄色い実
2020/09/17 19:39
お草さんシリーズ大好き。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者：nako - この投稿者のレビュー一覧を見る
お草さんのシリーズ、面白くて大好きです。今回は、久美ちゃんにとって、なんか切ない内容でしたね。久美ちゃんにはいつも元気印でいてほしいな。
紙の本初夏の訪問者
2020/09/12 17:41
お草さんの過去
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者：咲耶子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
お草さんの前に死んだはずの息子の名前をかたる男が現れ、何やら不穏な雰囲気に。
近所のお寿司屋夫婦のゴタゴタ、医者薬剤師兄弟の確執などいろいろ絡んできます。
いくつになっても後悔を清算して新たな一歩を踏み出せるんだ、若い人はなおさらだって感じで元気が出ます。
だって、高齢のお草さんがこんなにも元気なんだから。
紙の本まひるまの星
2020/07/11 23:06
ヒロインのお草さんは、一本通った清い筋の持ち主。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者：タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
シリーズ５本目の本作も、お草さんの深淵なる謎解き物語。
殺人とか爆発とか、大仰な事件は起こらないけれど、物語の大きな柱は、じわじわと人のココロや営みを壊してゆくような事件。そして、それを粘り強く解決に導く、お草さんの冷静で静かな活躍ぶりが描かれている。
また、物語の本流をさまざまに彩る美しいモノやコトを楽しむのも本シリーズの楽しみ方と思うけど、今回は夏の着物の柄がさまざまに登場。テキスタイル好きの私は、そこも楽しかった。
紙の本名もなき花の
2020/06/09 23:19
お草さんのささやかな暮らしがキャッチするミステリｨを本作も堪能
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者：タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
杉浦草の日常の謎解きシリーズ３作目。主人公お草さんの凛としたキャラクターはそのままに、本作は、円空が掘ったといわれる仏像にからんだシリアスな事件が、物語の大きな流れを作る。その謎を明かす過程で、日常のさまさまな諍いがかかわってくるという展開になっていて、読み応えが増した感じでした。
紙の本花ひいらぎの街角
2020/05/17 22:04
シリーズ6作目。一番好きな一冊。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者：タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
紅葉町珈琲屋こよみシリーズの6作目。主人公杉浦草さんの魅力に惹かれ、書店に並べば必ず読むを繰り返していますが、本作が、いちばん好きな一冊である。
旧友・初之助から届いた小包には、彼が若き日々に書いた短編小説『香良須川（からすがわ）』を絵巻物にしたものが入っていた。絵巻物は2巻あり、もう一つは、珈琲の師匠であり、やはり古い友人の寺田博三のもとに送られていた。そこからそこから始まる懐かしい3人の交流。そして、絵巻物のもととなった短編小説を単行本にする物語に繋がってゆく。その私家版を作る過程が個人的な好み。
紙の本黄色い実
2020/04/09 21:57
センスある器と珈琲のお店を舞台に繰り広がるシビアな事件
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者：タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
近所にあったらいいなと思う、器と珈琲のお店。その店のオーナーであるお草さんが、この店を舞台に、日常に起こった大小の事件の謎ときに奔走する物語は7作目も健在。しかも、今回のテーマは、“レイプ”。...いつもよりちょっとシビアである。いや、思い返せば、一作目の「萩を揺らす雨」にも、親による児童虐待事件がテーマになってた。Metooムーブメントなどもあり、ここ数年は、レイプの被害が多数明るみに出てきた時代でもある。
作家は、そこを意識したのだろう。お草さんは聡明なうえに、70代半ばを越え、豊かな人生経験の持ち主でもあり、事件に対して、彼女が示した「解」に今回も納得。さりげない日常のセンスも十分に堪能しました。
