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京の花街 「輪違屋」物語
著者 高橋利樹 (著)
京都・島原といえば、かつて興隆をきわめた、日本でいちばん古い廓(ルビ:くるわ)。幕末の時代、新選組が闊歩したことでも有名である。その地でたった一軒、現在でも営業を続けるお...
京の花街 「輪違屋」物語
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京の花街「輪違屋」物語 (PHP新書)
商品説明
京都・島原といえば、かつて興隆をきわめた、日本でいちばん古い廓(ルビ:くるわ)。幕末の時代、新選組が闊歩したことでも有名である。その地でたった一軒、現在でも営業を続けるお茶屋が、輪違屋(ルビ:わちがいや)である。芸・教養・容姿のすべてにおいて極上の妓女(ルビ:ぎじよ)、太夫(ルビ:たゆう)を抱え、室町の公家文化に始まる三百年の伝統を脈々と受け継いできた。
古色なたたずまいを残す輪違屋の暖簾をくぐれば、古(ルビ:いにしえ)の美しい女たちの息づかいが聞こえてくる。太夫のくりひろげる絢爛な宴は、多くの客人たちを魅了し続けている。
本書では、輪違屋十代目当主が、幼き日々の思い出、太夫の歴史と文化、お座敷の話、跡継ぎとしての日常と想いを、京ことばを交えてつづる。あでやかでみやびな粋と艶の世界――これまでは語られることのなかった古都の姿が、ここにある。
著者紹介
高橋利樹 (著)
- 略歴
- 1948年京都生まれ。京都・島原に現存する置屋兼揚屋である輪違屋十代目当主。
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京都の花街は読了後もあこがれのまま
2008/05/16 21:00
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:JOEL - この投稿者のレビュー一覧を見る
京都の花街と言えば、だれしも一度は京都観光で楽しんでみたいと思わせる場所だ。しかし、敷居が高く、実際に花街で遊ぶことはかなわない。したがって、その実情は、なかなか知られないままでいる。
ひとつの勘違いに、女性と遊べる、端的に言えば床を同じくすることができるというものがある。著者の経営する京都・島原の廓では、それは一切ない。京都の花街とは、太夫(たゆう)や芸妓に伝統芸を見せてもらいながら、飲食を楽しむ大人の高級な遊びである。舞妓さんは芸事を習得する手前の人なので、芸妓に付き添って場を楽しませる役回りとなる。
高級な遊びであるから、花街で大人の遊びをたしなむマナーについての理解がないと、客は恥をかくか、帰ったあとで、「あのお客さんは、なんも知らはらへんわ」となる。
客の側でも、芸事についての理解があり、いくらほどのチップを誰にどのタイミングで渡せばいいかを知っておかなくてはならない。客もまた、太夫や芸妓さんに、粋な人と思われるような振る舞いをしなくてはならないのである。
京都の花街は、著者が10代目当主を務める輪違屋(わちがいや)のある島原、祇園東、祇園甲部、先斗町など6箇所ほどある。それぞれに踊りの違いがあるなど、なかなかに興味深い。また、著者が輪違屋に抱える太夫とは、最上クラスの芸妓さんで、芸事につけ美貌につけ、その道を究めた人とのことである。
今では、東京に呼ばれたり、海外に呼ばれたりと、幅広く活躍しているらしい。太夫さんは髪を立派に結い上げるので、維持するのに気を遣うとのことである。海外に招待されたときには、髪結いさんを同行しなかったので、結い上げた髪を保つべく特別な枕で、ベッドではなく絨毯に布団を敷いて5日間を過ごしたそうだ。それはたいへんだったらしく、「もう海外は堪忍しとくれやす」と嘆いたらしい。
本書は、輪違屋当主の口述筆記と思われ、読みやすいが、やや深みに欠ける。京都の花街について多少なりとも理解が進むものの、今ひとつ物足りなさを感じる。もっと歴史的な変遷についての資料を盛り込めば、手元に置いておく価値が増しただろう。さらに。太夫さんや芸妓さんへのインタビューなどがあれば、臨場感も増したに違いない。もったいない気がする。
しかし、このもったいなさ、あと少しで本当の姿が分かるのに・・・という一歩手前で止めてしまう流儀も京都独特のものという感じがする。
本書を読んでも京都花街の全貌は明らかにならなかったが、「いちげんさんお断り」で、なじみ客に連れられて少しずつ遊びのマナーを身につけていく世界がどういうものか、好奇心をくすぐられた。
評者にはあいにく、花街につながる知人はいないので、縁がないのであるが、一度くらい、座敷に上げてもらいたいという思いが募った。
著者に言わせれば、東京のクラブでホステスと飲むのなど、何の芸を見せてくれるわけでもないホステス相手に高いお金を使うだけで野暮なこと、となる。
ちなみに、10代目当主には跡継ぎがいないので、この方を最後に島原の廓は歴史の幕を閉じてしまうおそれが高い。だれか、跡継ぎに手を挙げるだけの格のある方はいないだろうか。京都のほかの花街とのつき合いも欠かせないということなので、相当な財力がないと無理なのであるが。