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アナザーフェイス
著者 堂場瞬一 (著)
大友鉄は警視庁勤務のシングルファーザー。幼い息子を育てるため、捜査一課から刑事総務課へ異動して2年がたったある日、銀行員の子供の誘拐事件が発生。大友も、特捜本部に駆り出さ...
アナザーフェイス
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アナザーフェイス (文春文庫 アナザーフェイス)
商品説明
大友鉄は警視庁勤務のシングルファーザー。幼い息子を育てるため、捜査一課から刑事総務課へ異動して2年がたったある日、銀行員の子供の誘拐事件が発生。大友も、特捜本部に駆り出されることになった。犯人が要求する身代金1億円の受け渡し場所は、5万人がごった返す東京ドーム横の公園。犯人の特定は困難を極める。大友は久々の前線復帰に高揚しつつ、一方では事件の裏に“ある違和感”を抱いていた…。警察小説のヒットメーカーによる、異色の刑事登場の新シリーズ!
著者紹介
堂場瞬一 (著)
- 略歴
- 1963年生まれ。茨城県出身。青山学院大学国際政治経済学部卒業。「8年」で第13回小説すばる新人賞受賞。ほかの著書に「複合捜査」「夏の雷音」など。
『アナザーフェイス』オススメポイント!!
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紙の本
これだけ大量の作品を書きながら、一定のレベルを保つ、っていうのはなかなかできることじゃありません。それにしても出版社別にシリーズをあつらえるっていうのは、エライというか・・・
2011/05/19 22:22
7人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
刷り込みされやすいタイプのせいか、中公文庫の「警視庁失踪課」シリーズで堂場作品と出会った私の頭には、堂場作品=中央公文庫っていう式が出来上がっていて、それが突然(実は、突然でもないらしいのですが)、同じ中央公論新社でもB6版で『沈黙の檻』だとか、まさか既にシリーズを書いているのも知らないで角川春樹事務所から文庫で『策謀』だとか、今回のように文藝春秋から文庫で本が出ると、混乱するわけです。
まず、この作品は既に単行本で出ていたものの文庫化なのか、旧作の文庫化ならばオリジナルはいつ、どこの出版社から出たのか、書き下ろしだったのか連載だったのか、初出は、なんてすぐ考える。ま、最近は出版案内でも短い紹介分の最後に、初文庫化とか、この本のように書き下ろし、とか書いてあることが多いので安心ですが、『策謀』なんて絵だけ見ると完全に時代劇、おお、堂場がついに時代小説? なんて私は得意の早とちりをしてしまいました。
で、です。『アナザーフェイス』、今までの堂場作品とは一味違った、実にセンスのいいカバーなんです。このまま海外小説に使ってもいいし、まさにオールマイティ。写真・柳沼浩胆、デザイン・征矢武というコンビのものですが、これからは全く内容がわかりません。新シリーズなのか、続編なのか、遅れてきた堂場読者にはそこのところが全くわかりません。
ただ言えるのは、この2010年だけでも12冊も本が出ているということ。具体的に書くと1月に『虚報』(単行本)『交錯』(文庫)、2月に『漂泊』(文庫)、3月に『青の懺悔』(文庫)、6月に『裂壊』(文庫)、7月に本書、8月が『逸脱』(単行本)、10月『水を打つ 上』(文庫)『沈黙の檻』(単行本)、11月『水を打つ 下』(文庫)『長き雨の中の烙印』(文庫)、12月『チーム』(文庫)、となっています(bk-1 検索、発行日順)。
これは今野敏なみのことで、しかも殆どが新作です。まして、堂場は『アナザーフェイス』の一月前に『裂壊』を出したばかりです。フツーであれば書き下ろしだとは思わないでしょう。私は『漂泊』『裂壊』を読んでいますから、いくらなんでもこのペースでの書き下ろしはない、と思う。だから旧作の文庫化だと思ったわけです。ところがですカバー後の内容紹介を見ると
*
警視庁刑事総務課に勤める大友鉄
は、息子と二人暮らし。捜査一課
に在籍していたが、育児との両立
のため異動を志願して二年が経っ
た。そこに、銀行員の息子が誘拐さ
れる事件が発生。元上司の福原は
彼のある能力を生かすべく、特捜
本部に彼を投入するが……。堂場
警察小説史上、最も刑事らしくな
い刑事が登場する書き下ろし小説。
*
とある。最後にきちんと「書き下ろし」と記載されています。最盛期の清張だってこんなことはなかったはず(知らないですけど)。今で言えば西尾維新の『刀語』くらいしか思い当たりませんが、一冊のボリュームが違います。維新で言えば『化物語』のシリーズが比較できそうですが、出版ペースが違います。しかもです、堂場の場合、このハイペースの出版が作品のレベルを落とさない、「警視庁失踪課」シリーズなんて逆に上がっているんです。
なんだろ、これは? 似たような展開をした門田泰明の場合は、出版ペースが明らかに作品の質に悪影響を及ぼしていたのですが(というか、もともと内容が軽かった)、堂場は全く違う。新聞記者だからでしょうか。むう、本日は内容そっちのけで堂場作品出版報告みたいになってしまった。いかん、イカン、遺憾・・・
とはいえ、このお話、いつもの堂場作品のように一気に読めるので詳しい案内はカバーのコピーで十分でしょう。ということで、今回は新機軸であるシングルファーザーである主人公を中心に主な登場人物について書いておきます。
主人公は大友鉄、ダサい名前です。大友はともかく、鉄はないでしょ、今時。江戸時代の侠客じゃあないんだから。刑事部刑事総務課刑事特別捜査係主任で巡査部長、35歳ですが、四捨五入して40歳なんだそうです。二年前まで捜査一課勤務でしたが妻・菜緒を交通事故で亡くした後、育児のこともあり刑事総務課に勤務を変えています。今回は、以前の上司・福原の命令で二年ぶりに特捜本部に入っていますが、大学時代、心理学を学び、演劇をやっていた人当たりのいい二枚目という変り種でもあります。
その鉄が一緒に暮らしているのが大友優斗、鉄と菜緒との間にできた息子で八歳、小学二年生です。少年は父親の仕事も、自分の立場がdぷいうものであるかもよく理解しています。とはいえまだ八歳、江戸時代の七歳の女の子、と比べればまだまだ子供。父親の帰りが遅くなればガッカリもし、寂しがりもする。ちなみに、私が比べているのは宮部みゆき『ばんば憑き』の「野槌の墓」に登場する加奈のこと。いや、本当にしっかりものであす。
で、鉄、優斗父子を厳しく監視しているのが矢島聖子、鉄の今は亡き妻。菜緒の母親で義母になります。65歳で、今も町田でお茶を教えている元気な老人ですが、鉄が優斗の父親としてちゃんとやっているのか、仕事にかまけて子供のことを疎かにしていないかを見守っているわけで、ただ厳しいというのとは違います。むしろ、いつまでも娘とのことを忘れられずにいる義理の息子に、早く再婚をして優斗とともに幸せになって欲しい、そう思っているのです。
まだ幼い一人息子を抱えて孤軍奮闘している鉄を見守る人は、職場にもいます。その代表が刑事部特別指導官の福原聡介です。二度にわたり鉄の上司になったことがあり、菜緒がが亡くなった時も、上司で捜査一課課長でした。今まで、鉄が子育てのために職場を替えたことにも理解を示してきました。その福原が、今回は鉄を閑職から再び捜査の第一線に戻したのです。その理由がタイトルの「アナザーフェイス」です。この言葉について、堂場はインタビューで
*
――すると「アナザーフェイス」とは、大友のことですね。
堂場 はい。大友の父親としての顔、刑事としての顔。あと、物事にはだいたい別の顔があって、今回の事件でも、皆が気づかなかったところを大友だけが見抜くという意味をこめています。
*
と書いていますが、どうでしょう。私は、大友が大学時代、心理学を学び、演劇をやっていたことから自在に振り当てられた役になりきり、自然に振舞う、その顔のことだと私は思います。ま、作家自ら明言していることに対して反論したところで詮ないことなんですけれども、私は自分の考えのほうが自然ではないか、そう思っています。
ま、もう『アナザーフェイス2』がでていますから、それについては正しい裁きが既になされているのかもしれません。堂場瞬一と誉田哲也、どうもこの二人からは目が離せないような気がします。
紙の本
シリーズで楽しめる作品
2016/01/14 08:03
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:szk - この投稿者のレビュー一覧を見る
【ネタバレ】初めての堂場劇場。最も刑事らしくない刑事、ってのが看板だったけど、ごめんなさい。刑事の中の刑事です。テツ氏は。もっとほんわかで、ギャグ路線かと思ってたらけっこうシリアス。お話としてはそこそこ面白かったけど、内海が怪しいんじゃないの?って私も推理できちゃったから、そこらへんは詰め甘かった?あとあの女記者の登場も中途半端だったし。記者と刑事の関わり合いを書かせたらやっぱ横山秀夫さんには敵わないか!それはそれとして、シリーズで楽しめそうな作品に出会えたのは嬉しい。時を忘れて没頭できるからこその娯楽、それが読書!