紙の本
少年が少女に出会い、恋に落ちるのは、やっぱり当たり前のことなのです
2009/11/15 19:48
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mayumi - この投稿者のレビュー一覧を見る
「少年は少女に出会う」
それは、宇宙の真理なのかもしれない。
主人公は、大学を中退してぷらぷらしている男の子(22歳だけと、感触はやはり<男の子>なのだ)
彼は偶然素敵な女の子(彼女も成人しているけど、主人公の視点で描かれる彼女はやはり<女の子>なのだ)と出会う。と、同じころ、主人公の家族の問題が急浮上してきて…。
すんなり主人公と女の子の話にならないところが、樋口有介らしいのだろう。そして、彼の家の問題が結構ハードなので、まるでそれがメインであるかのような錯覚さえ覚える。
が、そのトラブルさえもものともしない彼女への思いと、同時に見送ることのできる強さ、その矛盾こそが物語の核であり、主人公の人物造形のすべてなのだろう。
恋は素晴らしい、けれど、それは人生のすべてではない。そして、全てではないと知ることは、決して敗北ではないのだ。
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樋口有介の小説は語り口の波長が合うということもあるのだが、同工異曲の小説群でありながら、ときどきその作品だけの印象的な科白がある。この『11月そして12月』(舞台が私の地元だったので、実映像が正しく目に浮かぶというオマケの楽しみはあるが)では、「ほとんどの人間には、才能なんか、なにもない。だからって、他人の才能を羨むだけの生き方では、自分が可哀そうだ」という主人公の科白がそうだ。 この小説は、とっくに自分では分かっているのに、周りからあと一押しをしてもらわないと一歩が踏み出せない人物たちが登場し、その一押しの役回りを担うことになった主人公のほろ苦い「成長」が描かれている。客観的には他人に振り回されて元気を奪われるような「可哀そう」な状況にあっても、けして他人を貶したり、羨んだりすることなく、自分の「アフリカ」に旅立とうと決意する主人公自身は、じつは誰からも後押しされないで一歩を踏み出そうとする。その「変わり者具合」には共感するし、作者自身の投影なのだろうから、文庫になった樋口作品は必ず読まずにいられない。そう、そう、と頷くための読書には、あまり新しい発見はないのかもしれないが、趣味の読書はやはり「読んで気持ちよくなりたい」のである。分かっていることの後一押しを読書に求めるのでは、22歳の主人公以下ではあるが
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文章自体はさほど重苦しくなく、むしろ軽妙なくらいに
読みやすいのですが、なかなかにしてその内容は重たい。
重たく感じさせないようにされているのだと勝手に思いますが、
それだけに変に堅苦しくなくて、その想いは読み手側に
スッっと入ってきますね。
主人公のダメさ加減も、明確な目的を持って生きていないという
現実は、多くの人が持ち合わせているんだと思います。
その意識としては彼に比べれば、自分なんかはもっと低く、
色んなことを先送りにしてる...ってのは分かってるんですけどね。
こういう作品を読んで前向きな思考に至らないのは
あまりにも自分が歳をとってしまったんでしょうね。
ほろ苦い青春小説と思えるには余りにも読のが遅すぎた。
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高校も大学も中退したぼくは、カメラを手に都会の生き物を撮り歩いている。
退屈な人と言われ続けた二十二年の人生は、明夜と出会った頃から変わり始めた。
父親の不倫、姉の自殺未遂、そして「明夜とは二度と関わるな」という男の出現。
事件と真実に触れ、苦しくても確かな一歩を踏み出していく姿を鮮やかに描く傑作青春小説。
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長いのであらすじを。
高校、大学と中退した主人公・柿郎は、カメラを手に怠慢な生活を送っていたが、ある日公園で一人の女性・明夜と出逢う。それから、つまらなかった柿郎の人生に変化が訪れる――。
今まで読んだ樋口さんの小説では、主人公はかっこいいっていうイメージしかなかったけど、この話の主人公はなんていうか、可愛いです。今まで読んだ主人公よりも、恋に恋してるって感じ。ストーカーともとれる行動をしているのに、樋口さんが書くと、きもいと思わないから不思議。ヒロイン(なのかな?)の明夜の男前な性格が好きです。癖まで書かれていて、あれには感動した。
この作中に出てくる登場人物のほとんどが、問題を抱えています。姉の自殺未遂に、父親の浮気。ストレスでカルチャーセンターにハマる母親。肝心の主人公は高校・大学とも中退で、主人公の家庭にはなにかと問題が多いですが、シリアスっぽく書かれていないので、とても読みやすかった。
主人公が成長していくさま、問題をどう解決していくかも見どころです。あたり前ですが、すべてがめでたしめでたしで終わるわけではないということを思い知った。こういうのもハッピーエンドの内に入るのではないかな、と思いました。だってこれ青春小説だし。でもちょっと恋愛に期待してしまった感は否めないですが……。
この著者の文章の綴り方がとても好きです。話の展開も最後まで妥協しない。大袈裟ですが、映画化されてもおかしくない。隠れた名作だと勝手に思っています。
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「少年は少女に出会う」
それは、宇宙の真理なのかもしれない。
主人公は、大学を中退してぷらぷらしている男の子(22歳だけと、感触はやはり<男の子>なのだ)
彼は偶然素敵な女の子(彼女も成人しているけど、主人公の視点で描かれる彼女はやはり<女の子>なのだ)と出会う。と、同じころ、主人公の家族の問題が急浮上してきて…。
すんなり主人公と女の子の話にならないところが、樋口有介らしいのだろう。そして、彼の家の問題が結構ハードなので、まるでそれがメインであるかのような錯覚さえ覚える。
が、そのトラブルさえもものともしない彼女への思いと、同時に見送ることのできる強さ、その矛盾こそが物語の核であり、主人公の人物造形のすべてなのだろう。
恋は素晴らしい、けれど、それは人生のすべてではない。そして、全てではないと知ることは、決して敗北ではないのだ。
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やっぱり樋口には、ミステリーより純文学を書いてほしい。プロットは特におもしろくもないが、この雰囲気と文章だけで十分満足。
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うーん、村上春樹のできの悪い影という印象。
面白くないわけではないと思うけど、読んでいるとその点が気になってくる。
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高校も大学も中退したぼくは、カメラを手に都会の生き物を撮り歩いている。退屈な人と言われ続けた二十二年の人生は、明夜と出会った頃から変わりはじめた。父親の不倫、姉の自殺未遂、そして「明夜とは二度と関わるな」という男の出現。事件と真実に触れ、苦しくても確かな一歩を踏み出していく姿を鮮やかに描く傑作青春小説。
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不倫とハードボイルドなストーカー(しかもニート)と長距離走者の孤独。いつもの樋口節が邪魔に感じられたのは話のスケールが小さ過ぎたからか。
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しばらく新刊書店では入手できなかった作品が新装版で出ました。タイトル通り、ピッタリの季節に本屋さんに並んでいます。 樋口センセの作品を読んでいると感じるものの一つに「風」があります。『風少女』のイメージが強いせいかもしれません 『11月そして12月』はけっして風の描写が沢山出てくるわけではないのですが、何故なんでしょう?柿朗くんや明夜の心の揺れが風をかんじさせるのでしょうかね(家族が台風のようだ!ってのもあるかも笑)・・・あぁ好きだな〜やっぱり樋口センセLOVE〜♪(笑) 主人公 柿朗(シロウ)くんがお母さんに言われる一言に笑ってしまった【・・あなたには他人に存在感を意識させない、不思議な才能があるの。・・】センセ!新刊待ってますぅぅぅ〜
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晩秋の荒川の土手を走るランナーの姿が最後まで頭から離れなかった。高校も大学も中退してフリーター中の主人公。公園で偶然出会った女の子に一目惚れ。姉の自殺未遂、父の浮気発覚と平和な家族に突然持ち上がる問題を抱えながら、彼女の後を追う。別れがエンディングを務めているが、それほど悲しい感じがしないのは淡々と流れたストーリーの中に別れがテーマのトピックがたくさん出てきたからか。落ち込んでいる所にたまたま同級生と再会、クラスメートの消息を聞くシーンが唐突なのに何故か印象的だった。
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本書は高校も大学も中退した僕が、家族の事件を通して、確かな一歩を踏み出していく姿を描く青春小説である。
もともと、ミステリー色のうすい作家さんではありましたが、本書はタイトル通りの青春小説でした。
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樋口さんの描く主人公は不器用で口が悪く、面倒な性格だ。しかし、自分の気持ちにとても素直だ。
社会適応能力に欠ける晴川柿郎は、家族を含めた周辺の不条理さに悩みながらも、最後は自分の歩むべき道を見つける。
「世界のどこかで、ぼくが自分自身の無意味さを発見してしまったとしても、ぼくはもう、その無意味さを恐れない」・・・大人の階段を登る為の凄く大きな一歩だと思う。
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たった2ヶ月間の話だけどそれぞれの登場人物の生活や想いがぎゅっと凝縮されていた。結末ははっきりと書かれていないけど、きっと同じ様にたんたんとそれぞれの人生を歩んでいくんだろうなぁと思う。個人的にはお姉さんや父親側からの話も気になる。
こういう主人公の内面が細かく描写された作品はけっこう好き。