紙の本
ナショナリズムから脱した「世界史」の構築を!
2002/06/16 18:21
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:のらねこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
西洋には地中海文明から始まった「正統史観」があり、東洋には司馬遷から始まった「天命史観」がある。この二つは本来相いれないものであって、年代別に輪切りにして折衷する型「世界史」は、構造的に無理を抱えている。という指摘から始まる。そこから、それ以外に、インドやマヤなど、「歴史」という概念さえもたない文明、歴史をもつ文化と隣接し、それらとの対抗上、歴史をもたざるを得なかったイスラームの事例などが紹介される。
ここまでが、全体の三分の一の部分。
次に、「モンゴルの発展と伝統」とある副題にたがわず、西洋/東洋の別なくユーラシア大陸のほぼ全域にまたがって興亡を繰り返した遊牧民の歴史を、周辺の文化圏とのかかわりとも含め、かなり公平、かつ広範に叙述していく。
広範な版図をもつ帝国には「大陸帝国」と「海洋帝国」との二種類があって、前者のほうが後者より、物品の移動コストが高くつく。現在、経済的に台頭している勢力は、日本、EU諸国、アメリカと、基本的には海洋での交易を基幹としている、と指摘する。
そして最後に、「西洋史と東洋史とでは、そもそも用語の用法がまるで違う」と、「封建」という語を例にあげて述べる。
中国史では「封建」とは武装集団が新しい土地を占拠して都市をつくること、西洋史の「フューダリズム」は、騎士が君主と契約を結び、所領の一部を献上し見返りに保護をもとめることで、概念的にほとんど重なるところがない。
このような「誤訳」は、西洋史の専門家は東洋史をしらず、東洋史の専門家は西洋史をしらないから発生するとし、今まで使用してきた「用語」を概念別にすべて整理する。という作業から「単一世界史」の構築を始めるべきだ、と説いている。
紙の本
偉大な著作
2015/10/20 08:01
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タヌ様 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は歴史学の分野で26歳の学士院賞受賞者というのは脅威の業績である。
文献解読のトレーニング、対象言語の理解を考えれば飛び抜けた能力者にしかできない仕事である。
ほぼすべての歴史学の書籍で引用されることの無い名前でもある。引用するのは政治学かその他であり、学会で孤立しているのはその通りであろう。
読んでみればわかるのだが、文献や資料把握という作業からの歴史を飛び越え、世界史とはなにかをズバッと書いている。こういうのは文明の衝突のハンチントンか歴史の研究のトインビーといった、世界レベルの文明史というべきものであり、恐るべきセンスと概念構築力である。
この洗礼ともいうべき衝撃を与える学者は日本の至宝であると、歴史学の門外漢思うのである。
電子書籍
歴史に関わる専攻の、或いヮ関心のある、大学生の必読書か
2023/03/17 23:06
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投稿者:719h - この投稿者のレビュー一覧を見る
個人的にヮ、E・H・カーの
「歴史とは何か」よりも、
ずっと強い印象を受けた一書です。
歴史の定義と起源とについて述べている
冒頭部だけでも、若いうちに読んでおいて
損ヮないと思います。
この書で示した歴史の定義に、
著者ヮかなり自信を持っていたらしく、
他の自著でも使っています。
この部分の叙述の明快さを、
歴史関連の類書の類似部分と比較してみると、
本書の著者を仰ぎ見たい気持ちに
なってしまうかもしれませんよ。
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モンゴルの発展と伝統から世界史を読み直す画期的な書です!
2016/08/08 09:19
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、モンゴル帝国を中心に、これまでの世界史をもう一度読み直してみようという画期的な書です。本書は、「世界史はモンゴル帝国から始まった」と言い切ります。地中海文明と中国文明を変え、東洋史と西洋史の垣根を越えた世界史を可能にした中央ユーラシアの草原の民。モンゴルの発展と伝統から世界史を読み直す書です。
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地球規模でものを見た好著
2001/06/06 10:39
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投稿者:ぽん - この投稿者のレビュー一覧を見る
Jared Diamond著の『銃・病原菌・鉄』Guns, Germs, Steel とあわせて読むとさらに面白さが加わるかもしれない。地球規模でものを見た好著である。
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エデンをつきとめるまで我々の旅は続くのだろうか
2001/05/19 02:00
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:牧 - この投稿者のレビュー一覧を見る
文明が内的な法則により自律的に発展してきたなどという幻想を捨てて、文明を創り出し変型してきた中央ユーラシア草原からの外的な力に注目して、それを軸としなければ、事実に即した偏らない歴史は叙述できない。
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モンゴル帝国誕生の前は、世界史というものは存在しなかった、みたいな説明から始まる大胆な本。
蒙古にとって南は前だから、世界地図の南を上にして(つまりひっくり返して)見て、それが彼らの視点からの世界だ、という説明が斬新で好き。逆さまだという見方を捨てて、これはこういうものだと見れば、ほんとに違う地図に見えてくる。
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歴史は文化である。歴史は単なる過去の記録ではない。歴史とは、人間の住む世界を、時間と空間の両方の軸に沿って、それも一個人が直接体験できる範囲を超えた尺度で把握し、解釈し、理解し、説明し、叙述する営みのことである。地球上にうまれたどの文明のなかにも、歴史という文化があったわけではなかった。
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[世界史の誕生]。岡田英弘歴史学
●岡田歴史学の本を紹介します。
岡田英弘先生の本を読むと
今まで疑問に思ってきたことが
すきっとわかる部分が、かなりあります。
まず[世界史の誕生]
では基本前提です。
●世界史は、モンゴル帝国とともに始まった。
●民族という概念は、19世紀に発生した新しいもの。
国家の概念も、フランス、革命、アメリカ革命から起こったもので
、それまでは、国家イコール君主の待ちものであった。
ーーーーーーーーーーーー
●モンゴル帝国が作った諸国民は、インド、イラン、中国、
ロシア、トルコ人である、すべて、モンゴル帝国の産物、遺産である、
●モンゴルはウルスという単位で構成され、
それぞれのウルスは、遊牧君主の所領であり、
大ハーンも、自分のウルスしか直営できず、他のウルス内政には干渉できない。
●モンゴル帝国によって、中央ユーラシアの遊牧民は、すべてモンゴル人の社会構成へと
入った。
モンゴルの東半分は清帝国となり、
西半分は、ロシア帝国となる。インドムガール帝国、
オスマン帝国(トルコ、西アジア、北アフリカ)もモンゴル帝国の
継承者である。
●中国という概念も考え直さればならない。
皇帝を中心とする世界で、出身の種族には関係なく
中国人という概念が、できた。
●中国の歴史は、ほとんど中央ユーラシアの遊牧民による
征服王朝である。
●清は、正式なるモンゴルの継承者であり、
中華人民共和国も、このモンゴル帝国の領土の継承者である。
●中央ユーラシアの遊牧民が、それまでの世界史に
も影響を与えた、西欧を襲ったのフン族は、中国の匈奴であり、
ゲルマン民族の移動を引き起こし、西欧の原型を作った。
一方、東洋では、中国と遊牧民帝国の戦いであり、
現在までの中国の歴史は、ほとんど中央ユーラシアの遊牧民により
支配王朝である。
(これに関しては、別途、岡田先生の詳しい本があります。)
●日本の国家成立は、668年を持ってする。
白村江の敗戦によって、世界の孤児に
なってしまった倭人が、当時の日本列島にきていた
華僑といっしょになって、唐、新羅と対抗するために
作った国家である、天智天皇を持って初めての天皇の号を使い
、日本という国号をもち、近江令を持って初めての成文法となる。
(日本史に関しても、別途、岡田先生の本があります。)
●資本主義もモンゴルから始まる。
遊牧民の政治プラス定住型の経済の結合システム
により、治安と交通の便がよくなった。
経済活動が活発化する。信用取引の原理が稼動氏始まる。
世界最初の紙幣も、モンゴルが作った。
以上、モンゴルおよび、その継承国家は
すべて、大陸国家である。つまり、陸上運輸コストが
かかる。それに対して海洋国家は、港を抑え、小さい海軍力でも
制海権を握れる。大量の物資を低コストで
稼動できる。貿易により、��きな利益をうける。
●21世紀の覇権国家は、海洋国家であり、アメリカ、ヨーロッパ、
日本である。軍事力を持つアメリカと、歴史で武装した、
日本と西欧との対立構図である。
●西欧の大航海時代も、モンゴルにユーラシアを押さえら得たために
ポルトガル、スペインが、直接交易を求めてインド洋、東洋にやってきた結果である、
しかし、東シナ海は、それより先に、大航海時代に入っていた。
日本人倭寇である。後期倭寇は、中国人がほとんどで
その王が王直である。(鉄砲伝来は彼の仕掛けであると前に書きましたが)
●歴史観としては、ヘロドトスに始まる地中海ー西欧型歴史観と
司馬遷の『史記』、司馬光による「資治通鑑」に始まる中国方の歴史の
枠組みがある。地中海ー西欧型歴史観は、
ヘロドトス、旧約聖書、ヨハネ黙示録が中心的な歴史認識として
あり、アジアを敵として認識している。それが
キリスト教とあいまって、異教徒に対する思想となる。
要約です。この本を、是非お読み下さい
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岡田英弘氏の著書を読んだのはこの「世界史の誕生」が初めてでしたが、非常に独特な歴史論を展開される方だと思いました。おそらく歴史学者の中では異端とされるのではないかと思います。岡田史学という言葉もあるそうで、普通の歴史学者とはひと味違うようです。この本を読んで、他の作品も読んでみたくなりましたし、講義を受けたくなりました。
この著書で「世界史の誕生」は1206年だと主張します。
1206年はチンギスハンが即位した年です。
この年を世界史の誕生とする理由は、モンゴル帝国出現以前は、文字として残す歴史は地中海と中国にしかなかったが、モンゴル帝国がこれらを結びつけることで初めて世界史が誕生したからだという論旨です。
モンゴルは現代ではマイナーな国家になっていますが、かつては膨大な版図を有した国です。私の印象ではモンゴルは中世に登場して世界を駆け巡り、パッと消えてしまったという感じなのですが、モンゴル帝国はその後の国々に大きな影響を与えているそうです。例えばインドには19世紀半ばまでムガール帝国が栄えましたが、ムガール帝国とは「モンゴル人の国」の意味で、王はチンギス・ハンの血統だそうです。
この本を読んでて、日本という国が世界史に登場したのは19世紀後半からなんだなと思いました。明治維新後世界史にデビューしてメキメキと頭角を表し、第2次大戦では世界中を相手にして派手に戦い、ボコボコにやられて(児島襄 「太平洋戦争」によると第2次大戦時の日本の作戦版図はモンゴル帝国最盛期の領土より広大であったといいます)、もう駄目かと思ったら経済大国として見事に復活。。 人間に例えたら相当波乱万丈な人生を歩んでる国だなと思います。
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”世界史”の定義が面白い。
モンゴル帝国はあまり世界史の中で、特別大きな存在感がなかったが、
この帝国によって初めて東洋と西洋をつなぐ歴史が誕生した、という解釈は自分にとっては新しい視点だと思った。
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岡田英弘氏独自の史観による世界史素描の試み。
世界史に複数の歴史を無理矢理つぎはぎしたような違和感を覚えるのは、異なる史観によって編集された西洋の歴史と東洋の歴史を同じ軸でまとめようとしているからだと指摘し、モンゴル帝国を中心とする史観によって初めて西洋史と東洋史の完全な統合が可能となると言うのが基本的な考えになります。
歴史が成立するための前提条件や、中国の得意な史観など、岡田氏ならではの斬新な指摘も多く、読みごたえがあります。
ただ、密度が濃い分、地名や人名を列挙した文章を長々と読むことになり、この部分は正直なところ歴史に詳しくない私には少しばかり苦痛でした。
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前半の中国論、ヨーロッパ論は贔屓目に見てもあまりに粗っぽいが後半のダイナミズムは群を抜く。今まで軽視されてきた遊牧民族から改めて世界史を見直すとここまで面白いとは
モンゴル帝国こそが東西世界史を繋げた立役者にして後の国民国家や民族の原型を各地に残したという
節々に挟まる日本歴史学会への警鐘は独断かあるいは緻密な検証のたわものか、危うさこそあるがモンゴル史関連じゃー間違いなく最高の本の一つなのは間違いない
岡田英弘の長所と短所が露骨に現れてるので、彼を好きな人にも嫌いな人にも、一読の価値ありだろう
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2002年11月26日読了
“すばらしい。この岡田さんって人、すごいです!
この本を読んで、古代の世界史の認識が変わった。
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歴史は中国と、古代ギリシアからはじまり、モンゴル帝国の誕生をもって世界史の誕生となる。という視点は興味深かった。
ただ、中国が今後資本主義を取り入れずに発展しないと記述していた点は、時代を感じた。