紙の本
自分の日本語が世にも美しいものであるために、日々の努力が求められている
2006/02/07 22:29
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
このところ何かと話題の書「国家の品格」の著者・藤原正彦氏(お茶の水女子大学教授)と、その小学校時代の図工教師だった安野光雅氏(画家)の二人による、日本語談義をまとめた書です。
意味が分からなくとも良いから幼いころから文語で書かれた書を読ませて、日本語のリズミカルな美しさを体にしみこませることが大切。小学唱歌や童謡などもその良き教材となりうるのであり、現代の生活にはなじみの薄い歌詞だからという理由で教えなくなった最近の風潮は嘆かわしい。などなど、いちいちごもっともと思える内容が満載です。
本書は日本人の言葉に対する自尊心をくすぐるエピソードも数多く載っています。1000年以上もの厚い歴史を持つ日本文学の流れ。江戸時代にすでに50%の高さに達していた識字率。英語やフランス語よりも日本語は日常使う単語が5倍も多いという事実。
しかし肝要なのは、そういう誇り高き日本語話者の一員に果たして自分を数えることができるかどうかを今一度見つめなおすことでしょう。確かに日本語は美しい。しかし自分の日本語が十分に美しいといえるほど鍛錬を積んでいるかどうかは別問題なのです。
自分もその一員であり続けたいという思いを新たにする一冊です。
紙の本
二人が好対照で面白い、日本語対談。
2007/04/23 17:49
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
文語体の文章や言葉の美しさを懐かしみ、美しい言葉を教え、残したいという気持ちが溢れた本である。
藤原正彦さんとその恩師、安野光雅さんの対談であるが、年齢差も関係するのであろうか、藤原さんはまだ「情緒が大事」と肩に力が入りすぎたような、安野さんはひょうひょうと「いいものはいいですよね」とさらりと力の抜けた自然体で発言していく。好対照な対談である。「二十四の瞳」の映画を観た話の中、藤原さんは「ガキ大将の私は、涙をみせては沽券に関わると、隠すのに四苦八苦しました。」と言うのに対して安野さんが「沽券に関わらないでしょう。私は池袋の映画館で立ち見でみましたが、目の前のねじりはちましの兄ちゃんがオイオイ泣いていました。」と応えるところなどにそれがよくでている。発言への好みが強く出てしまった結果だと自分でも思うが、いいことをいってくれるな、と素直に認められる言葉は安野さんの発言に多かった。
藤原さんが一寸強すぎるほどに思い入れがあるのは、「外国で剣が峰で戦うようなときには、他にすがるものが何もない、そうすると日本の昔からの伝統とか文化とか美しい情緒が、祖国の誇りを生み、自分を支えてくれます。(p46)」といった体験がそれを言わせるのだろうな、と思う。しかし、日本にも良い文学がある、というために「例えば5−15世紀まで日本が一番文学を生んでいる(p72」と書くのはどうだろうか。私には「なぜ5−15世紀だけを取り出したのか?」が気にかかる。「もっとも美しい言葉の中に、私たちは生れたのだと思います。p82」というのも、「世にも美しい」のは日本語だけでなく、それぞれの言葉を話す人々には、それぞれの言葉が「世にも美しい」ということも書いて欲しかった。更には、「世にも美しい」日本語にも、「美しくない」部分は必ずあることも。美しい言葉に惑わされ、危ない道に入っていくなどということもないではない。美しくなくても、いつくしみたいと思う。
ともあれ、古典と言われて残っている良いものを大事にしよう、という姿勢は大賛成である。この本に出てくる幾つかの古典をもう一度読んでみようか、読ませてみようか、と参考にするだけでもこの本は役に立つ。
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画家?の安野光雅と藤原正彦の日本語についての対談。ちなみに二人は小学校の先生と生徒の関係だったらしい。さらに、そこの藤原正彦の後輩として松田哲夫がいるらしい。むかしよく安野光雅の絵本を読んでいて好きだったんだけど、意外と理屈っぽくてイメージが変わった。内容は・・・微妙。藤原正彦が好きな人間としては最近露出がインフレ気味なので、この本はいらない気がする。国家の品格だけ読めばよろしい。関係ないけど、あの本で大事なのは「論理じゃすべて解決できない」という話をしているので、できるだけ論じようとしてはいけない(反論はもってのほか)。好きか、嫌いか、で良い。
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画家と数学者が日本語を語るのが面白くて購入。お二人のいずれにも日本語でインプットされたことが元になり、絵であり、数学でありのアウトプットになっている。面白い。
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安野光雅と藤原正彦の対談。
両氏が師弟関係にあったとは初めて知った。
かたや画家であり、かたや数学者で、
二人が日本語の美しさを語るのはへんな気がするが、
安野氏の美の根底には文学の叙情があり、
藤原氏の携わる数学と言う学問もまた美しいものであるらしく、
日本語の美しさを語るのになんら不思議はないらしい。
安野氏の絵本にはじめて触れたとき、じっといつまでみていてもあきない楽しさ、どこかに秘密が隠れていそうなわくわく感を感じた。
高い空の上から、ゆったり眺めているような、
奥深い感じは、彼の叙情に裏打ちされたものだったのだ。
二人は若いころから、名文に親しむようにと熱く語っている。
日本の文学作品、童謡、唱歌には美しい日本語があふれている。
もっとも美しい言語の国に生まれたのだから、
古典を含め、もっと本を読めと力説する。
美しい日本語に触れ、美しい情緒を培い、
祖国への誇りと自信を持つようにと説く。
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ひとりの数学者とひとりの画家が語り合う日本語の魅力。そのリズム・表記・文学… 失ってはいけない大切なものが、言葉の中にはあるんです…
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普段は手に取らない新書系。「しょうもない本ばかり読んでないで、こういう本を読め」と言われてカチンときながら怒りのままま半日で読破。日本語入門の名前どおり、読みやすい古典を挙げてくれています。対話形式なので、読みやすいとは言えませんが、得るものは多いです。森鴎外の『即興詩人』読んでみたい。
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図工の先生とかつての教え子である数学者が日本語について対談・・・1日で終わったようだなぁ,対談は・・・。
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日本人の必読本。抽象的な日本生まれの漢語を生み出した西周さんのこと。私は強制されて読書するのは天邪鬼だからこのまないけれど、読書ゼミというのは名著に出会う良いきっかけになるはずだ。宮本常一「忘れられた日本人」無着成恭「山びこ学校」新渡戸稲造「武士道」を読みたい。
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安野光雅(と藤原正彦の対談)にクラフト・エヴィング商會の装丁なんて素敵すぎる。両者とも齢相応のかたくなさが目についてしまって、対談内容だけを取り上げてしまえば藤原氏が小川洋子と語った「世にも美しい数学入門」よりも劣るけれども、「美しい日本語」が矢継ぎ早に出てくるのは流石。そう、本書にも取り上げられるが「花発多嵐雨 人生足別離」を「花に嵐の例えもあるさ さよならだけが人生だ」と美しく書き下したのは井伏鱒二だ。
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安野光雅と藤原正彦の対談。 両氏が師弟関係にあったとは初めて知った。 かたや画家であり、かたや数学者で、二人が日本語の美しさを語るのはへんな気がするが、安野氏の美の根底には文学の叙情があり、藤原氏の携わる数学と言う学問もまた美しいものであるらしく、日本語の美しさを語るのになんら不思議はないらしい。 安野氏の絵本にはじめて触れたとき、じっといつまでみていてもあきない楽しさ、どこかに秘密が隠れていそうなわくわく感を感じた。高い空の上から、ゆったり眺めているような、奥深い感じは、彼の叙情に裏打ちされたものだったのだ。 二人は若いころから、名文に親しむようにと熱く語っている。日本の文学作品、童謡、唱歌には美しい日本語があふれている。もっとも美しい言語の国に生まれたのだから、古典を含め、もっと本を読めと力説する。 美しい日本語に触れ、美しい情緒を培い、祖国への誇りと自信を持つようにと説く。
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画家・絵本作家の安野光雅と数学者・エッセイストの藤原正彦が、対談形式で、美しい日本語満載の古典や文学作品について熱く語り合ってます。
若い頃から名文に親しむことの大切さを痛感。
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画家である安野光雅氏と数学者の藤原正彦氏の対談。読書の大切さ、美しい言葉に触れる大切さ、そういったものをいろいろな例を取り上げて対談されている。日本語の豊かさ、素晴らしさを教えていただける一冊。
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(2006.04.21読了)(2006.04.18購入)
安野光雅先生は、藤原さんの小学校時代の図画工作の先生でした。この本の企画をした筑摩書房の松田哲夫さんは、藤原さんの小学校の四年後輩です。同じ小学校に通った人たちが協力して作った本です。(9頁)
由々しき問題は、若者が美しい日本語、すなわち文学を読まなくなったことである。(我が家でも、息子は、古典文学でも読むけど、娘は、口語体の会話の多い現代小説は読むが、古典や会話の少ない現代小説は読まない。)
美しい日本語に触れないと、美しい繊細な情緒が育たない。恋愛さえままならない。祖国に対する誇りや自信も身に付かない。深い誇りや自信は、祖国の生んだ文化や伝統、すなわち普遍的価値から生まれる。(11頁)
●「忘れられた日本人」宮本常一著
「忘れられた日本人」を読むだけで、農村も戦前、皆、逞しく生きていた。おばさんたちは田植えをしながらエロ話をしあい、貧困を笑い飛ばしながら快活に生きていた。そういうことがわかって、皆びっくりします。(18頁)
●加賀千代女
高校の頃、国語の時間に、加賀千代女の「朝顔に釣瓶とられてもらひ水」という句の意味を尋ねられました。「滑車の円、釣瓶の直線、朝顔のラッパ状曲線のなす幾何学的美しさを詠んだもの」と私が答えたら、・・・(26頁)
●漢字
「鳩」という字と、「鳥」という字と、「九」という字。子供の前に三つ並べると、最初に読めるようになるのは「鳩」、その次は「鳥」で「九」が最後になるという。子供にとって字画数は関係ない、具体的なものはアッという間に読めるようになってしまうという。(35頁)
●「即興詩人」アンデルセン著
これは、口語体(大畑末吉訳)で読むとたいしたことはなくて、文語体(森鴎外訳)で読むと実に美しいものになるという特別珍しい作品だと思います。とにかく波瀾万丈で、読み出したらやめられないし、日本語の美しさが誇らしくなるほどの作品です。(62頁)
●モラエス
明治から大正、昭和の初めにかけて、モラエスというポルトガルの作家が徳島に住んでいました。彼は日本人は歌ばっかり歌っているというんですね。大工はトンカチを叩きながら歌う。お母さんは洗濯をしながら歌う。行商人は歌を歌いながらやってくる。子ども達は学校の行き帰り、歌を歌っている。こんなに歌ばかりを歌っている国民はいないとびっくりしている。(90頁)
安野さんと藤原さんが、詩や童謡を取り上げながら日本語の美しさを論じています。小説類は出てこないのが残念です。藤原さんの「読書ゼミ」の話が出てきますが、物語は「即興詩人」ぐらいです。
著者 安野光雅
1926年 島根県津和野町生まれ
画家・絵本作家
☆関連図書
「わが友・石頭計算機」安野光雅著、ダイヤモンド社、1973.06.01
「絵のある人生」安野光雅著、岩波新書、2003.09.19
著者 藤原正彦
1943年 満州新京生まれ
数学者・エッセイスト
☆藤原正彦さんの本(既読)
「若き数学者のアメリカ」新潮社、1977.11.20
「数学者の言葉では」新潮社、1981.05.20
「父の旅 私の旅」新潮社、1987.07.05
「遥かなるケンブリッジ」新潮社、1991.10.15
「父の威厳」講談社、1994.06.27
「心は孤独な数学者」藤原正彦著、新潮社、1997.10.30
「天才の栄光と挫折」NHK人間講座、2001.08.01
「世にも美しい数学入門」小川洋子共著、ちくまプリマー新書、2005.04.10
「国家の品格」藤原正彦著、新潮新書、2005.11.20
「祖国とは国語」藤原正彦著、新潮文庫、2006.01.01
(「BOOK」データベースより)amazon
七五調のリズムから高度なユーモアまで、古典と呼ばれる文学作品には、美しく豊かな日本語があふれている。若い頃から名文に親しむ事の大切さを、熱く語りあう。
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数学者と画家の2名が、子供のことに触れた国語や童話・唱歌についてのエピソードを交えながら、豊かな語彙を持つ日本語をテーマに対談したもの。
上記以上の内容もなく、ただ日本語は美しい、現代の国語教育はおかしい、小学校から漢文や文語を暗唱させて日本や日本語を愛する心を育てなければならない、というのが要点。結局はおじいさんたちの懐古談のインパクトが強すぎて、それ以上の深みが感じられないのが残念。『世にも美しい数学入門』はとても面白く興味深い内容であっただけに、なおさら残念。(09/03/26)