紙の本
思考。切り取られた言葉で、一瞬の世界は美しさを留める
2007/05/12 02:54
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ねねここねねこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
思考は世界を顕す。イメージの喚起、そして歓喜。
具象と抽象の光。遠くの星が歌い煌く。
輝きの光、理知と思考の文字の感触。
詩。ちいさな世界の切れ端のものが86篇。
それぞれ鉱石のような、星のような、水分子が胎動するような、
固まって、きらめくことばと世界に酔う。
世界そのものであること。見えるもののなかに見えないものがあり、
見えないもののなかに、ひっそり耀くものがあること。
そのものを思う。見つめる。
時折あらわれるそれらは、
きらきらした光ですべてを映してそっと消える。
対象に永遠はない。消える。
だけど僕たちは消えない残像に息を止め、
ひっそり見つめてため息をつく。
美しいものを思う。
切れ端で残った、世界の光をそっと思う。
透明で冷たい、遠くから在る直線の光。
ページを捲る度に、はっとして時が止められる。
あるものは、そんな結晶の言葉たち。
夢想、パイロットのような感情。
現実を見つめ、夢を思う。
その魔、硬質だが融けていくような夢想。融解。
意味と無意味の狭間で、行間を通した美しい思考が時空に漂う。
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森博嗣の詩に決定的に足りないのは、
苦悩とか悲しみとかそういう負の感情。
ここに収録されている詩もきっと、
さらりと書いてしまったのだろう。
それが悪いというのではなく、
そういう時代なのかな。
嫌いだという意味ではない。
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綺麗で冷徹。熟語が多い。己の内的衝動によって書かされたというような詩とはまったく違う作風だと思う。それゆえに、「うまいこといいますなー」「いい表現ですなー」という感想はあるんだけども、読んでるこっちがうろたえるようなイタさは、いい意味でも悪い意味でも感じなかった。
「飛ぶと飛ぶ」「都会」とか、いい詩はいくつかある。
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綺麗な詩集。言葉の選び方、や連なりに響き。そういうものが味わえるシャープさ。
激しい内的衝動よりも周りの世界と相対する人間を切り取っているようなイメージ。私は美しい言葉の連なりが好きなので結構好きですが、その反面そのさらりとした感触はとっかかりがないようにも思えます。
ただよく引用される「ハウリングする思考」は特別。
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走れば巡り進めば戻る
過去と未来が今どこか
遠いところで重なり合って
《巡り会い》
森氏の作品と対面したのも、あれは実に“出来すぎた”偶然だったのかと思ってしまうほど、森氏にはなんだかとても大きなものを感じています。離れたりくっ付いたり、さも興味なさそうにしていたり、興味あるかのように近付いたり、それは一種の魔法のようで。
さらっとしていて的確に突いてくるその鮮明な言葉遣いが好きです。
ぱらぱらと読んでいて、ふと気が付いて目次を見て「あっ」と思う。
そんな沢山の作品あるとても楽しい詩集です。
(2009.01.31)
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詩を読んだことはほとんどないが、そんな人間の心をもふるわせる言葉の数々。リリカルなだけでないのが性に合った。
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森博嗣の作品は、ミステリ要素よりも詩的表現が好きだったりするのですが、納得しました。
言葉だけの文庫の方がわたし好みです。
心に残る言葉たち。
良いです。
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森先生の美学senceがキラリと光る一冊。
「落ちていくとき」
「焼ける太陽」
「誰が僕を騙したのか」
が好きです。
一種のアポトーシスを感じる
この本に私は何かを捧げたい。
この本に合うのは、
妖精帝國「Ira」かな。
詩なんて中原中也以来、
読まなかった。
久しぶりに詩という
美に
出会った気がした。
ありがとう。
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森博嗣(もり ひろし)唯一の詩集。
もともと、森博嗣の小説は詩的な要素が滲み出ているように思う。
僕の森博嗣のイメージは、ほぼ「スカイ・クロラ」で固定されている。
純粋で静かで、無駄がなく飾りがない。心にスッと這入り込んでくる感じだ。
中原中也のイメージもそうなんだけど、詩的に類似した匂いがする。
森博嗣らしいコトバとテーマ
対象の観察、自己の観察…広がってゆく感じと、収束してゆく感じと。
お気に入りの一冊に登録だな。
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『いつも通る道でも
違うところを踏んで歩くことができる
いつも通る道だからって
景色は同じじゃない
それだけでは、いけないのか?
それだけでは、不満か?』
『後悔エトセトラ
思慕コンパクタ
逡巡パラメータ
憂鬱ストラクチャ』
『胸の上に手をのせていると
悪い夢を見るよ』
『飛べないことを
知らない連中が
飛んでいるのだよ
生きられない理由を
知らない連中が
生きているように』
『かすかな奇跡と軽やかな予感と
生きているという呪文にかかった君と』
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詩集。 通過するだけで捉えきれない言葉たち。非常に悔しい。もう少し、想像力を鍛える必要がある。 お気に入りは「拒絶」と「しくしく思考」。拒絶はとても強い言葉で、そのままでは耐え難いけど、その裏にあるものにざわっとなる。境界はとても残酷で…。 「くみくみと思考し ていていと微笑した」しくしく遊びは、好きだなぁ。 がちっと掴まれる感覚。そのひとつに期待しよう。 「人間に要求される すべてのうち ただひとつを除いて 君は拒絶する」
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森博嗣の言葉は難しく理解し難い。詩は特に受け手の感受性が求められるように思う。彼の詩は無機質だけれど重さがあって、透明で、とても綺麗だ。
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刊行は10年も前なんだなあ。時間の分なのか、重みを感じる。よくも悪しきも。今詩集を書かれたらどんな風でしょうか。
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森博嗣で初めて読んだんが詩集て。
銀色夏生の詩集ぐらいしか日本人のものはまともに読んだことないです。
詩集出すような作風だと思ってなかったから、むしろ興味本意の冷やかし読書。
だけど後半の作品の盛り上がり方すごい。詩集や短編はどう考えても作品の順番が評価に大きく繋がるけど、これは成功してる。畳み掛けて、ちゃんと落ちる。強いて言うなら助走がながい、かなあ。
でもぜひ小説も読みたいと思いました。
「胸のうえに手をのせていると悪い夢をみるよ」
「海の向こうにはなにがある?」「夜と粉と髭と泥」
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作者のノベルスカバーそでや文庫栞で見なれた詩がまとめて編まれており、手頃である。ただイラストが無いのが残念。作品的には冷たさや慧敏さを与えるような言葉の多用によるイメージの一辺倒が見られる(詩の初出がそういうものだから仕方がないとはいえ)、ファン向けに徹した一冊かと。