歴史を精神分析する
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歴史を精神分析する (中公文庫)
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紙の本
精神分析は個人よりも社会の分析に向いている
2008/12/13 21:14
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:GTO - この投稿者のレビュー一覧を見る
個人の病の治療法としては精神分析は信用できないと思うが、社会や文化の分析には有効な道具であると感じた。それは、市井の個人の歴史は検証の方法がなく、患者個人に自覚のない偽りの記憶の可能性も高いが、民族や国家の歴史はその民族や国の史書だけでなく、関係した国々の記録としても検証できるからだ。
さて、昨今勝谷誠彦なども昭和初期の軍官僚と現在の官僚の類似を指摘し、警鐘を鳴らしているが、本書はすでに1997年の時点でその両官僚の同質性を鋭く指摘し、その原因である日本人の国民性と日本の歴史を掘り下げて解説している書である。彼の官僚制打破の方法に関しては、納得できないものもあるが、その分析は慧眼であり、官僚内閣制こそ日本そして日本人が乗り越えなければならない壁であると再認識させられた。
また、百済=任那=日本論は、言語の視点から考えるとすとんと腑に落ちるものであった。しかし、それが日本神話に与えた影響に関しては疑問が残る。天孫降臨的な物語は世界各地の神話の一類型として多数存在し、その国や民族が日本と同じような歴史を持っているわけではないからだ。ただ、中国及び米国に深いトラウマを持ち、コンプレックスを抱いていることが、日本社会や国民性に多大なる影響を与えてきたことには、まったく異論はない。ペリーを廻っての対米関係に関する考察は、石原莞爾の東京裁判での「A級戦犯はペリーである。」発言を思い出させた。
アメリカ、中国、ロシアといった大国がヘゲモニーを失いつつあり混沌としてきた世界情勢の中で、日本のこれからの外交はどうあるべきか考えさせられる素晴らしい本であった。
紙の本
国を食べつくす官僚
2010/06/01 06:43
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:四十空 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「官僚病の起源」の文庫版改題。(原題のほうがいいと思うが)
どうもこの国は官僚、ならびにその手の勢力が網を張って権益を覆っているなあとは感じていたが、それを精神分析という手法で解析するというもの。筆者岸田秀氏は、「魂の殺害者」で正義の教育と称する(役人的教育者の)トンデモぶりを描いたドキュメンタリーの訳者でもある。キレがいい文章、秀逸な着眼点、現実から遊離せず、問題点をあぶりだすクローズアップ力に長けた、精神分析医の中では「稀有」な方だと思われる。
「・・・誠実な人なら、自分が国民の期待に沿えないとを恥じて支配者をやめるであろう。あるいは、はじめから支配者になろうとしないであろう。
結局、残るのは、現実感覚を失って自分は聖人君子であると思い込むことができる誇大妄想狂か、聖人君子と見せかけるのがうまい偽善者か、何もわかっていないと国民を馬鹿にし、そこにつけ込んで大儲けしようとするズルイ人か、国民のことなど気にせず、国民の期待を裏切っても平気な冷酷無情の人かのいずれかである。」
まごうことなく、わが国の総理大臣ならびに幹事長ならびに閣僚を指しており、その正確な「予言能力」(1997年初版)に拍手を送りたいが、総理大臣だけでなく、ここ20年くらいは「この手」の人間が闊歩しているように思うのは私だけだろうか。そう、「失われた20年」が始まってから、「官僚病」的なる人物の天下になり続けていると実感する。
心ある人たちは階段を降りる。一方、誰からも求められなかった「病的」な人々が、逆に階段を上り続け、国という果実の木を食べ続け、食べつくそうとしている・・・