紙の本
資源問題の中核としての「水」
2008/03/03 23:52
9人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:CAM - この投稿者のレビュー一覧を見る
平成19年版「日本の水資源」によると、平成16年における全国の水使用量(取水量ベース)は、全国で約835億立方メートルであり、用途別にみると、農業用水が約552億立方メートル(66.1%)、生活用水が約162億立方メートル(19.4%)、工業用水が約121億立方メートル(14.5%)である。 食料自給率が40%台にとどまる我が国においてさえも、水使用量からみると全体の66.1%が農業用水であり、農業用水の比率が極めて高い。 「水問題」は「農業問題」と極めて密接な関連があることに注意しなければならない。
20世紀は「石油の時代」であったが21世紀は「水の時代」であると言われる。そして、21世紀の戦争は水をめぐるものが多くなるだろうと言われている。しかしながら、水の使用量比率を見ると、水をめぐる争いとは、同時に食料をめぐるものということにもなるだろう。こうした事実を踏まえてであろう、本書の書名は「水戦争」となっているが、取り上げられているのは「水問題」だけにとどまることはなく、「穀物をめぐる争奪戦」から、さらに原油関係に至る「資源問題」一般にまで及んでいる。
なお、最近エタノールによるガソリン代替が話題になることが多いが、Economist誌3月1-7日号(p.38)は、エタノールが発生するエネルギーとほぼ同量のものがエタノール製造のために費やされることも問題であるが、ほとんど認識されていない最大の問題点が、エタノール製造のために要する大量の水消費であるとする。そして、水使用の効率化により10年前に比べると必要水消費量は半減しているものの、エタノールは一般に考えられているほど環境親和的な存在ではないと結論している。
著者は、21世紀初頭の資源マーケットを取り巻く環境は、エネルギー・資源が「安い時代」から「高い時代」へと「均衡点の変化」が生じた1970年代によく似ており、それを一段スケールアップしたかたちで展開している、と述べる。 そして、類似点として、ドル不安、米国の国際収支赤字問題、金などへの国際的な資金シフト、米国の中東政策、モノ作りをベースにした新興工業国の台頭、一次産品輸入大国の登場、世界的な需給の逼迫、米国株価の調整局面入り、環境問題の深刻化などを挙げている(p.136)。この点も納得させられる指摘である。
「水」問題についての書物を何点か求めた中の一冊であり、購入前は内容についてそれほどの期待があったわけではなかった。しかし、本書を通読することのよって、「水問題」が「資源問題」の中核に位置するものであることをあらためて理解できた。 約200頁で800円程度の新書にしては予期以上の収穫であった。本書は、最近の「水問題」「資源問題」を理解するための簡易な入門書として、推薦に価するものであると考える。
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柴田明夫の著作。来るべき水不足の問題をバーチャルウォーターという概念を用い、単なる飲用水だけでなく、工業製品や農作物という観点から分析している。
人間が生きていく上で飲用水は微々たるものであり、工業用水も大量に必要だが再利用がなされている現状を見ると、もっとも問題となってくるのは農業用水である模様。ただ、そういった点から農業にフューチャーする必要性はわかるが、ともすると水戦争ではなく食料戦争の食が強い。また、具体的にどのような水の輸入をめぐる対立が起こるかは今一見えてこなかった。
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水資源をめぐる紛争は世界的にみれば珍しくないけど、日本にいるとなんとなく対岸の火事。食料自給率のさらに奥には、水の需給率の危機がありますな。
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新興国の発展に伴う穀物需要の増加。穀物を育てるためには大量の水がいる。ただし、水資源は非常に限られている。世界が継続的に発展を成し遂げるためには、いかに水を効率的に活用していくかが鍵になる。
日本に限っては、水利用のほとんどを占める第一次産業をほぼ輸入に頼っているため、水需要が逼迫していない。ただ、異常気象が続き、穀物生産が減少もしくは需要に伴う増加が見られないことにより世界が逼迫すれば、日本には価格高騰という形で返ってくる。
ちなみに世界には「水男爵(ウォーターバロン)」と呼ばれる会社がある。フランスのスエズ社、ヴィヴェンディ社、およびドイツのRWE社。
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データも多いしちょっと難しかったけど、いい本でした。日本は水を「食糧」という形で大量輸入してて、決して水が豊かな国ではない、ってのが本書の肝かな。鉱物や化石燃料と同様に水も資源であるという認識を日本人は感覚的に理解しにくいと思うし、一読してみては?
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異常気象による不作やバイオエタノールブームにより穀物は消費財から戦略物資へ!!
穀物を作るために必要な水も汚染が続き、また農業用水や工業用水に使われて戦略物資へ!!
日本は水を有効活用しないといけませんよ、という話でした。と、思う。
相変わらず本を読むのが苦手で、あまり内容を理解してないような気がします。
まあ、ちょっとデータの読み取りがおかしかったり恣意的だった気もするけど
こういう警鐘を聞くのはちょっと楽しいね。水とか食糧なんて生きるために必要不可欠だもんね。
今まで食糧なんて日本にいればどこでも手に入れられるなんて思ってたけど
実際はそうじゃなくなる時代がもしかしたら来るかもしれないね。
海の水から塩分を抜き取ったり汚水を浄化する技術は存在するんだけど
まだ実用化するにはコストがかかりすぎるとか書いてあったかな。
まあ来るべき食糧や水危機のために、
日本は現在の自給率(たった39%)をもっと向上させるべく手を打たないといけないと思うんだけど。
東洋経済によれば農家の大規模化を目指したりコメではないものを作らせるよう政府は何かしらしてると書いてあったけど
なかなか進まないらしい。特にコメから他の作物への生産切り替え。
コメだけは日本の中に余剰が存在するし、昨今のFTAブームで外国産のコメもたくさん入ってきてるから
値崩れするのは当然の帰結だと思うんだけどなんで農家の方々はコメの生産にこだわるのか。
そこらへんを知りたかったなと思った。(東洋経済のお話ですが)
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地球上において、人間が利用しやすい水は、全体の0.3 % しかないらしい。20世紀は「石油」をめぐる争いだったが、21世紀は「水」をめぐる争いが起こるかもしれない・・・。
著者は丸紅経済研究所所長。この話題は、テレ東のカンブリア宮殿で、丹羽宇一郎氏も同様の発言をしていたと思う。
日本にいるとなかなか水不足を感じることはないが、実は日本もやばいらしい。なぜなら、日本は食料を大量に輸入しているから。食料を輸入するということは、その食料を育てるための水を輸入していることにもなるから。実は、日本はたくさんの水を輸入している国だった。
水を使うとは言っても、なくなるわけじゃなくて循環してるんだから問題ないのでは?とも思ったが、そう単純ではないらしい。長い年月をかけて蓄積された地下水が減少している。自己再生能力を遥かに超えて、水をくみ上げている。無計画な生産は、塩害などを起こして不毛の地としてしまうらしい。アメリカの穀物地帯の水源は、地下水なので、地下水が枯渇すれば食糧危機になりかねない。また、人間が使うことで水が汚染される。汚染された水を飲まなければいけない人びと。さらに必要な水は増えている。生活が豊かになる。人口が増える。事態は想像以上に深刻だ。
一方で、水を利権ビジネスと考え、世界を席巻する巨大企業。水が不当に安すぎるから、みんな無駄遣いするという彼らの主張は一理ある気がする。
今後、人類はどうすべきか?簡単に言えば、無駄なく、計画的に使って、なるべくキレイにして流そうってことを提案している。日本は、まあまあ出来ている方だが、日本を含め、今後世界各国で取り組むべき課題だ。水質管理や、汚染除去なんかは日本は強いみたいだ。今後に期待。
感想としては、官なり、民なりが適正に管理して、大事に使おう、無駄をなくそうという流れは大いに賛成。でも、その後はどうするんだ?地球の大きさと水の絶対量は限られている。従って、生産できる食糧も限られる。まだ余裕はありそうだけど、このまま人口がどんどん増え続けて良いのか?2050年は90億突破らしいぞ。水の利用効率も耕地面積も、食糧生産効率もMAXになるまで、増えちゃってから、「これ以上は容量オーバーなので、もう産まないでね」なんて無理だと思うんだが・・・。
僕は、全くの素人で、偉い人たちはちゃんと考えているとは思うんだけれど、人口を減らすことは、増やさないことより大変だと思う。ちゃんと考えてくれてるんだよね。その頃は、もう自分たちは棺桶の中だから関係ないとか思ってないよね。それとも、やばくなったら宇宙でなんかやるのか。とりあえず、モロに生命に直結するモノに関する、暗い話題は読んでいて凄く不安になる。
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20世紀は「石油の時代」でしたが、21世紀は「水の時代」と言われています。
日本にいては、水不足などを切実に感じることは(地域によりますが)あまりありません。
世界では、水不足に苦しんでいる国がたくさんあります。それと同時に、安全な水を飲めない地域が多数存在し、そのために病気が蔓延しているところもあります。
著者は、水の危機を少々煽りすぎているのではないかと思います。
仮想水のくだりとかは、特に。
そして、この本、本としてまとまりがないです。
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食料自給率が極端に低い日本にとって、世界の水不足はとても深刻な問題。
水利権を争ったり枯渇してる地域があれば、ウォータービジネスが急成長したり‥不均衡というか何というか、考えさせられます。
ちょっと穀物に関してが長い気もするけれど、要点が押さえてあって読みやすかった。
そーつーろーん、の第一歩としての本。これを皮切りに、どんどん読もうっと。
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★やや手抜きか★水の問題では、経済面では水道民営化とボトルウオーター、さらには淡水化の話が相場。ここに貧困の話題を加えるのが定石で、この本はまさにそのとおり。それも孫引きの内容が多い。後段に著者得意の食糧の話題を無理やりくっつけている。立ち読みしただけだが、ちょっと造りが安直のような気が…
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地球上の水資源を風呂桶一杯とすると、私達が使える淡水は片手ですくえる量にも満たない。そのことがよくわかる本。
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水質工学読書課題で。
人間は自分たちの発展のために自然を汚し、
限りある資源を無計画に使いすぎた。
それなのに今度はその残り少ない資源を
人間同士で奪い合おうとしてる。
いつまで経っても成長しない。
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「食糧争奪」を土台にして、さらに議論を深めた感のある本。
穀物貿易についての部分は実際重複が見られる。
バーチャルウォーターという概念が新しい。
穀物を取引することは、間接的にそれを栽培するために必要な水を取引することになるのではないかという議論。
日本の食糧自給率が低い事を考えれば、それは間接的に日本がバーチャルウォーターを輸入しているということ。
豊富な水資源を持ち、工業用水のリサイクルシステムを構築しながら、なおかつ手持ちの資源を活用しきっていないということになる。
国土の大半を森で覆われながら、タスマニア・東南アジアはじめ各国の森林をチップとして輸入している現状と重なっていく。
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(2009/11/27読了)タイトルに偽りあり。水問題の概略について知りたい場合は、『水ビジネス 110兆円水市場の攻防』をオススメします。
この本は水っていうか穀物のことについて延々書いてあって・・・まあそれが「バーチャルウォーター」問題に繋がるのは納得なんですが、とにもかくにもタイトル違うやん(笑)
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読んでおくと、とても参考になる1冊。
投資視点で言っても、実は会社名がたくさん出てくるので、人によっては銘柄選定の参考にしている人もいるかもしれません。
少し怖くなる内容ではありますが、いかに無造作に水を使っているか?と気づかされる1冊です。
エコを語るなら、この辺の知識は持ってないとですね。