電子書籍
いろんな事件が一気に起こり謎が解かれていく
2017/11/24 22:45
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投稿者:かんけつ - この投稿者のレビュー一覧を見る
体験的記憶、学習記憶を遺伝させる能力。心臓の筋細胞に含まれるある種の酵素が記憶の封印を解く鍵。この4巻では謎解きがどんどん進み新たな自体が巻き起こり、悲しい別れもあるのだが、ちょっと急ぎ足な感もある。それがスピード感を生み出してはらはらドキドキするので悪いとは言えないのだが、じっくり描いてもっと延ばす手も選択肢だったかも。
紙の本
重ね描きされた世界
2005/10/11 15:52
10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る
バルバラの謎が明かされる最終巻を読んでいる間、とりわけ夢先案内人・渡会時夫の記憶が上書きされていく場面では、私自身の脳内過程が二重化されたかのような眩暈に襲われ、軽い頭痛と嘔吐感をさえ感じた。読み終えた刹那、一瞬のことだったけれど、目に見える部屋の情景が夢の世界の出来事のように思えた。北方キリヤへのトキオの思いが切なく迫ってくる。自我の孤独と「ひとつになること」。
記憶の「上書き」というと、ボードレールが『人工楽園』で人間の脳髄や記憶に準えた「パランプセスト」(書かれた文字を抹消して重ね書きされた羊皮紙)を想起する。夢と現実の重ね描き。ここで「夢」とは「未来」(死後の世界)のことで、エズラ・ストラディの語るところによると、「人間のもつ抽象思考能力は未来の出来事に影響をおよぼす いわばみる夢は──実現するのだ」。この言葉はこの作品そのものの成り立ちを告げている。
いや、漫画そのものがパランプセストなのだ(あるいは日本の藝能、文藝に通底するものとしてのパランプセスト)。岡野玲子の『陰陽師』と萩尾望都の『バルバラ異界』。ほぼ同時期に完成したこの二つの作品世界を縦横に遊弋し、そこに重ね描かれた観念や形象を存分に論じきった批評を読みたい(書きたい)。
とりあえず『バルバラ異界』については、先の抽象思考能力云々と、死者の心臓に宿る記憶物質(福岡伸一『もう牛を食べても安心か』を参照すべし)、そしてケルトが手掛かりになる。「わたしの一族の発生は古い エルベ川ぞいで鉱脈をさがしながらヨーロッパを南下したケルトの古い末えいだ……男も女も早く老いた 20歳をすぎると老人になった 背も低く そう…「白雪姫と七人の小人」の物語の鉱脈堀りの小人のような ハハハ…」。
あらためて思う。『バルバラ異界』には萩尾望都が書き得たすべての作品の記憶、そしてこれから書かれるであろうすべての作品の予感がパランプセストのように重ね描きされている。
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投稿者:がんちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
あらゆる人々の思いが、過去、現在、未来へとめぐる。
各人物について、読むたびに新たな発見を感じる作品。
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9歳で両親の心臓を食べてから7年間眠りについたままの少女青羽、他人の夢に入ることを生業としている度会、その息子キリヤ。青羽とキリヤが夢の中で作り出した島バルバラを巡って、青羽の夢と現実世界が交錯する。巨匠萩尾望都の最新近未来SFロマン。その世界観は既存の小説、映画の類を完全に凌駕しており、圧倒される。1〜3巻までの謎が4巻で一気に解ける様は快感。もう言葉にならないくらいスゴイ。同時代に同じ国に生きられたことが本当に嬉しい。この人はスゴイ。
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萩尾先生の最新単行本のはず。
残酷〜の後、またこんなすげー作品を世に送り出しちゃう頭脳というか感性に感動してしまう。。
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こんな結末を迎えるとは…。時夫とキリヤの間でやっと始まりかけていた親子関係が…、せつない。しかしこれってよく考えると、やつらの侵攻を手助けしたってことにもなるのか? SFでした。
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何で死んじゃうわけ?そして彼は伝説になるみたいな…?キリヤ君のことは時生しか覚えてないのかなキリヤ君自身すら忘れちゃってるのよね。なんかハッピイエンドだけど願いも叶ったはずだけど思うとおりにはならなかったと言う…何が本当なのかって結局わからないと言うか、自分の見ていることだけが本当で時生はいろいろ見たものが残っちゃったから…面白かったです。
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一気に1〜4巻まで読みました。
ファンタジーな感じで始まりながら、それは親の心臓を食べたあと昏々と眠る少女の夢の世界で、現実の世界で夢の中に入れる渡会が彼女を起そうと夢に干渉しはじめたところから、夢と現実が交錯しあい・・。
いやはや、なんというか4冊で終わるには内容が詰まってます。若返り、不老不死、親と子、遺伝子、試験官ベビー、未来、火星・・・
そして萩尾ファンなら見覚えのある欠片があちこちに・・
4巻ラストで一気に収束していきます。
感じとしてはモザイクラセンを彷彿としましたが、より親と子の関係に重点が。結局、親にとっての「子」子にとっての「親」は、個別の生に対する愛情なのか、それともそれぞれの役割を果たす者への固執なのか。渡会とそのかつての妻にはそんな対比もみえる気がします。
しかし萩尾作品はせつない。
(せつなさでは「モザイクラセン」が私は上なので★4つにしました。)
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今年度SF大賞を受賞した萩尾望都の最新作。さすが萩尾望都…テーマが広くて深すぎるぅ…ていうかよくわからない…。夢、カニバリズム、前世の記憶、パラレルワールド、火星、若返り…そして親子関係。それにしてもすごい話の密度で4巻にまとまっちゃっていることにまず驚く。先が気になる一気読みで、ラストに急転直下の収束感が味わえます。やはりこの人の構成力は余人に真似できるものではない。
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(2007.07.13読了)
2006年 『バルバラ異界』で第27回日本SF大賞を受賞
出版されてすぐ購入したのに、1年半も積んでしまいました。バルバラ異界(3)を読んでだいぶたつので、もう一度3から読むのがしんどかったのか、漫画を読むことに興味を失ったのか。活字中毒とか言いながら、読書スランプになり読んでいる本が全然頭に入ってこなくなる時期があります。
漫画も一定期間読むとしばらくぜんぜん読まなくなる時期があります。バルバラ異界を読まずにおいたのもそういう時期だったのかもしれません。「山へ行く」を読んで、バルバラ異界を思い出し、3を読み直してから4にかかりました。
バルバラ異界は、一度だけ読んでもわかりにくく、2度読んでやっと理解に近づく本かもしれません。(決してわかったとはいいかねます。)
萩尾さんは、「銀の三角」「モザイク・ラセン」で、歴史修復の試みを行っていますが、「バルバラ異界」も心理学を学んで、タイムトラベルなしで、未来修復を試みたようです。
火星での生命体の記憶の継承がどうして心臓で行われるのでしょうか?
心臓は、生命の源ではあるけれど、記憶は脳で行われるはずなので、脳で行われるのが自然と思われるのですが。
再生治療により若返った世羅ヨハネ(エズラ)が鶴亀センターから十条青羽のいる東中原研究所へ。ちょうど散歩中のキリアに入れ歯に埋め込んだチップを渡す。
「心臓筋のたんぱく質には不思議なものが含まれている。ある条件である特定の心臓を食べると記憶の封印がとかれてしまうことがある。」と言い残す。
エズラと菜々実は若返った姿で出会いエズラは一気に老いて衰弱し死んでしまう。
キリアがエズラから受け取ったチップをパソコンに接続するとエズラが何をしてきたのかが語られていた。
エズラは子供のころ母親から「赤い星の夢を見るものは未来の夢を見ることができる。見る夢は実現するのだ」と聞いたことがあるという。青羽が見る夢は・・・。
バルバラに住む青羽、パイン、タカは、エズラの遺伝子を受け継いでいる。
大黒先生の調査によるとキリアが保育園に通っていたときアレルギーショックで病院に運ばれニューヨークに転送され、1週間後には回復し元気で東京に戻った、そのニューヨークでキリアが入院していた隣のグリーン・ホームのタカという少年が同じ病院でしているという。タカは、エズラの精子と北方明美がボランティアとして提供した卵子により代理母によって誕生した可能性が高い。キリアもタカも北方明美の子供だが、キリアの父は渡会時夫、タカの父はエズラ(世羅ヨハネ)だ。
キリアとタカは入れ替わったのか?
青羽の夢のバルバラもジェノサイドで消えてしまった。
キリアは東京に帰り、お祭りの屋台から転落し死亡した。
ここから先は、読んでのお楽しみ。
(2007年7月16日・記)
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おぉ。
すべての謎が、しっくりと収まって、ここまできれいに完結するとは。
しかも、タイム・パラドックスなテーマまでしっかりとかききって。
さすがというか、お見事です。
テーマ的には、夢の話ということで、わたしは「銀の三角」を思い出しました。
夢の中の夢の中の夢の中の夢……。
合わせ鏡のように、クラクラしながらも、お話の迷宮をあるいた気分です。
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萩尾望都作品と私の好みにだんだんズレを感じていましたが、やはり凄い(絶句)。カニバリズムや人形が逆さに落ちてきてつぶれる描写は80年代のホラーSFのよう。ラストはパズルのピースがぴったり嵌りながら、ピースのかけらである人間の心だけが納得しない。複雑な心理をうまく描写しています。
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夢と現実の入り混じった世界は萩尾望都ワールド炸裂。複雑でいったいどうなるの?というほど絡み合った物語、最後は納得させる終わり方。さすが萩尾望都・・・。一気に全4巻読まないと話が分からなくなります。
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他人の夢に入り込んで調査することを仕事とする渡会と彼の家族、そしてバルバラの夢を見る少女青葉を中心に織り成す、久しぶりに読んだ萩尾望都の本格的SF。
相変わらず登場人物がべらぼうに多く、相関関係が分かりづらい。別に覚悟して読んでるからいいんだけどね。この人の場合、それが醍醐味だし。
少女版手塚治虫と呼ばれる萩尾望都の本領発揮という感じです。ディテールがやたら細かく、話の広がりが途方も無いです。これをよくまとめますな。本当に。
話は発刊がフラワーの割になのか、だからなのか、わりと大人向け(すぐ寝ちゃうしね)。けど萩尾望都読んだことの無い人にはちょっと抵抗あるかもしれないマニアックな出来。
個人的にはとても知ってる場所で話が展開するんで、なんかむずがゆい。
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萩尾望都の神髄みたり、といった作品
この凄さは自分ごときには説明出来ないが、こういう話の組み立て方が出来る作家さんはあまり類をみないと思う
緻密に組み立てられた5次元構造のストーリーを2次元(平面)で見せられてる感じ
好きか嫌いかといった判断というよりも、凄いか凄くないかという評価基準において星5つ