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西行と清盛―時代を拓いた二人―(新潮選書)
著者 五味文彦 (著)
1118年生まれの二人の男。片や二十三歳で出家し、中世を代表する歌僧となって往生し、片や十代から出世街道を走り、武者の世の栄華を極めたすえに滅亡した。文と武、聖と俗――い...
西行と清盛―時代を拓いた二人―(新潮選書)
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西行と清盛 時代を拓いた二人 (新潮選書)
商品説明
1118年生まれの二人の男。片や二十三歳で出家し、中世を代表する歌僧となって往生し、片や十代から出世街道を走り、武者の世の栄華を極めたすえに滅亡した。文と武、聖と俗――いかにも対照的な彼らは十二世紀の日本をいかに生き、新たな時代の文化と政治をどう拓こうとしたのか? 中世史研究の泰斗、渾身の書下ろし。
著者紹介
五味文彦 (著)
- 略歴
- 1946年生まれ。放送大学教授。東大名誉教授。「中世のことばと絵」でサントリー学芸賞、「書物の中世史」で角川源義賞を受賞。
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紙の本
西行法師の和歌を年代ごとに紹介、解説
2012/01/31 09:46
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あまでうす - この投稿者のレビュー一覧を見る
奇しくも元永元年(1118年)に生まれた文武2つの領域に激しく生きた人物の生涯をその生誕から死亡まで淡々と叙述した書物である。ちなみに清盛は治承5年(1181年)に64歳で、西行は文治6年(1190年)に73歳で亡くなっている。両者とも当時としてはかなり長寿であり、長きにわたって本邦の武家政治と歌道に決定的な影響を与えた偉人といえるだろう。
清盛については最近毎回6千万円の製作費を投じて製作されたという大河ドラマが始まったので逐次そちらを見物して頂くとして、この本では元は清盛と同じ武人で後に出家して勧請僧兼歌僧となった佐藤義清(のりきよ)こと西行法師の和歌を年代ごとに紹介、解説しているので参考になった。
彼の歌は「山家集」「聞書集」「残集」の3つの家集や後鳥羽上皇が勅撰した「新古今和歌集」などに治められており、とりわけ「年たけて又越ゆべしと思ひきや命なりけりさやの中山」、「願はくは花の下にて春死なんそのきさらぎの望月のころ」、「こころなき身にもあわれは知られけり鴫立澤の秋の夕暮」などが名歌として知られている。
その他にも「死出の山越ゆる絶え間はあらじかし亡くなる人の数続きつつ」、「あはれあはれこの世はよしやさもあらばあれ来ん世もかくや苦しかるべき」、「きりぎりす夜寒に秋のなるままによわるか声のとほざかりゆく」などが現代に生きる私たちの心情にも響く繊細な歌心を伝えているが、それ以外の膨大な和歌の大半は今日の私(たち)の目で見れば、正岡子規の習作と同様ほとんど月並みの凡歌であり、天才実朝の鋭い感性に及ぶべくもない平凡な作風である。
ところで偉大な歌人や芸術家にとって最も大切な要件は、富士の高嶺を人知れずゆるやかに支える広大な麓を備えていることであって、その枢要さは天を突き刺す一点の錐におさおさ劣らない。彼に高貴な頂点あることを熟知している私たちは、彼の広大な中下層ヒンターランドのゆるく凡庸な世界に安んじて遊ぶことができるのである。
一握りの名作あまたの凡作込みにして名人はつねに名人 蝶人