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薔薇盗人
著者 浅田次郎 (著)
「親愛なるダディと、ぼくの大好きなメイ・プリンセス号へ」──豪華客船船長の父と少年をつなぐ寄港地への手紙。父の大切な薔薇を守る少年が告げた出来事とは──「薔薇盗人」。リス...
薔薇盗人
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薔薇盗人 (新潮文庫)
商品説明
「親愛なるダディと、ぼくの大好きなメイ・プリンセス号へ」──豪華客船船長の父と少年をつなぐ寄港地への手紙。父の大切な薔薇を守る少年が告げた出来事とは──「薔薇盗人」。リストラされたカメラマンと場末のストリッパーのつかの間の、そして深い哀情「あじさい心中」。親友の死を前にして老経営者に起きた死生への惑い「死に賃」。人間の哀歓を巧みな筆致で描く、愛と涙の6短編。
著者紹介
浅田次郎 (著)
- 略歴
- 1951年東京生まれ。日本ペンクラブ会長。95年「地下鉄に乗って」で吉川英治文学新人賞、97年「鉄道員」で直木賞、2000年「壬生義士伝」で柴田錬三郎賞を受賞。
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紙の本
泣きたいときもある・・・
2005/09/06 19:36
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:どんぶらこっこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
短編集。さまざまな小説作法を楽しめるお得本である。例によって「泣かせる技」の浅田次郎。私は、中学生の女の子の切ない心を描いた「ひなまつり」が好きかな。「佳人」は最後のドンデン返しがおもしろい超短編。「奈落」は会話だけで進むところがおもしろかった。表題作の「薔薇盗人」は男の子が父にあてた手紙文という趣向。「あじさい心中」はラストの風景が印象的。
紙の本
なじみの小料理屋でくつろぐ気分が味わえる
2003/09/06 23:40
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:とみきち - この投稿者のレビュー一覧を見る
浅田次郎の短編集を読むのは、なじみの小料理屋のカウンターで過ごすひとときと同じく心地よい。黙って座れば、熱いおしぼりと冷たいビール、心のこもった酒肴と手料理がほどよいタイミングで並べられ、心地よく酔わせてくれるから。
大手出版社をリストラされて精気を失ったカメラマンと、旅先で出会ったストリッパーとの間に交わされる淡い交情を描いた『あじさい心中』。
「五感で幸福を味わいつくしながら、やがてうららかな春の陽射しを浴びるように、ゆっくりと人生を終える」至福の死を大金をはたいて買い取った主人公は、死ぬ間際に果たして契約どおりの瞬間を得られるのか。タイトルは『死に賃』。
万年総務課長代理の死をきっかけに、彼にかかわりのあった人間たちが自分の胸に手を当てて襲われる自責の念や恐怖を、会話のみで描き切った、芝居の脚本のような『奈落』。
『佳人』は、お見合い世話好きの母が紹介したがるお嫁さん候補に、いまだ独身の有能な部下を紹介したところ、思いもかけぬ恋に展開していくお話。
水商売の母に女手一つで育てられている6年生の少女の、ひとりぼっちの夜の寂しさと、父を求める切なさをリリカルに描いた『ひなまつり』。
表題の『薔薇盗人』は、船長として世界周遊の船に乗る父親にあてて息子が書いた手紙形式の作品。ストーリーに仕掛けがあるのはご愛敬。三島由紀夫への嫌がらせみたいな小説だと作者が語ったという逸話が、解説に紹介されている。
作品に出てくる人たちは皆やさしく、人生の切なさ、心のふれ合いを描く浅田節を心ゆくまで堪能できる。ああ、ここで泣かせるわけねとわかっていながら、いつもの手じゃないの、あざといなあと感じながらも、すっかりお任せの客となる。出された料理一つ一つを味わいながら、思うまま泣かされ、うまいとうならされる。期待どおりのひとときを供してくれるからこそのなじみの店である。
おなかいっぱいになって、一呼吸。安心して通える店を持つ贅沢を感じつつ、「ごちそうさま」と立ち上がる。暫くしたらまた来ようという思いを胸に、家路に着く。
私好みの一品を挙げるとすれば『あじさい心中』。場末の人情を書かせたときのうまさは、天下一品。