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移動動物園
著者 佐藤泰志 (著)
復活した悲運の作家、幻のデビュー作。『海炭市叙景』で奇跡的な復活を果たした悲運の作家、佐藤泰志のデビュー作の文庫版を電子化。山羊、栗鼠、兎、アヒル、モルモット…。バスに動...
移動動物園
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移動動物園 (小学館文庫)
商品説明
復活した悲運の作家、幻のデビュー作。
『海炭市叙景』で奇跡的な復活を果たした悲運の作家、佐藤泰志のデビュー作の文庫版を電子化。山羊、栗鼠、兎、アヒル、モルモット…。バスに動物たちを乗せ、幼稚園を巡回する「移動動物園」。スタッフは中年の園長、二十歳の達夫、達夫の三つ上の道子。「恋ヶ窪」の暑い夏の中で、達夫は動物たちに囲まれて働き、乾き、欲望する。青春の熱さと虚無感をみずみずしく描く短篇。他に、マンション管理人の青年と、そこにするエジプト人家族の交流を描く「空の青み」、機械梱包工場に働く青年の労働と恋愛を描写した「水晶の腕」を収録。作者が最も得意とした「青春労働小説」集。
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紙の本
作者の確かな実力を感じさせる短篇集、佐藤泰志「移動動物園」。
2011/07/25 12:38
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オクー - この投稿者のレビュー一覧を見る
さて、今大注目の作家、佐藤泰志。3編の小説が収められた「移動動物
園」を読む。文庫で3冊目の佐藤作品だが、やはりこの人は力のある作家
だと再認識した。もう少し早くその存在に気がつくべきだったのかもしれ
ないが、仕方がないのかなぁ…ううむ。表題作は1977年発表でこれが佐藤
の文芸誌デビュー作。2編目「空の青み」が82年、「水晶の腕」が83年の
発表だ。
「移動動物園」はデビュー作といってもとりたてて気負いのようなもの
は感じられない。とはいえ、この3編の中では今一つの感が強い。描写が
あまりにこまかすぎるし、登場人物に魅力がない。飛び抜けてよかったの
が最後の「水晶の腕」だ。この3編に共通し、佐藤泰志の小説のひとつの
パターンともいえるのが、不安定な現状、その現状をていねいに描く事で
見えて来る心理的な不安、そこに差すかすかな希望、というような流れが
あるのだが、それが一番うまく描けているのがこの「水晶の腕」だ。機械
梱包工場で働く青年を主人公に職場の仲間たちや恋人とのやりとりを通し
て、彼の刹那的な暮らしが見えてくる。職場の様子が見事に活写されてい
るのがいい。仲間たちの造形もなかなかだ。「空の青み」はマンション管
理人とエジプト人一家との出来事を描いた都会的な一編で作者としては珍
しい作品だ。
紙の本
抜け出せなかった作家
2015/09/06 05:28
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書には表題作のほかに第88回芥川賞候補となった「空の青み」、同じく第89回芥川賞にノミネートされた「水晶の腕」がおさめられている。これらの3編に共通するのは肉体労働の繰り返しに鬱屈とする青年の姿だ。西村賢太の作品に感じられるようなユーモアもなく、中上健次の本を読み終えた後僅かにみえてくる希望もない。何度となく芥川賞を手に入れかけながら、ついには自らの死を選んでしまった著者の姿が見えてくるだけだ。