紙の本
大津波で亡くなった御霊の鎮魂譜のように
2012/07/04 19:38
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投稿者:あまでうす - この投稿者のレビュー一覧を見る
地元函館の強みを生かした母子情愛と女の生き方模索とミステリー、それに洞爺丸遭難事件という一大海洋サスペンスを足して4で割った大衆読み物です。
東京の表参道で有名デザイナーの愛人兼アシスタントをしていたヒロインが、その愛の不毛に疲れて郷里の北の港に帰り、余命いくばくもない母親の生涯の恋人探しに巻き込まれてゆくというストーリー展開は良くできてはいますが、その「いかにも」なぶん、いつかどこかで読んだような気がして通俗的です。
しかし久しぶりに郷里に戻ったヒロインが老いた母親に初めてのように向き合い、その知られざる秘めた情念に接するなかで自分を取り戻していく辺りは堂に入った描写となり、そこでは観光客が知らない函館の夜の街の表情や住人の姿が鏤められていてなかなかに興味深いものがあります。
しかし圧巻は1954年、昭和29年の台風マリーで海没した洞爺丸の惨劇で、この巨大な連絡船が嵐の海に呑まれてゆく光景を、作者はあたかも3月11日の大津波で亡くなった御霊の鎮魂譜のように、痛々しくも厳かに描破してのけたのでした。
十二所神社のバス停で座りこんでたあなたが待っていたものは何 蝶人
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「洞爺丸沈没」を柱に描いた恋愛小説だけれど、なんだかムリムリの設定、ロマンも感じないし、文体も古く繰り返しが多すぎ、東城人物のどの人も描ききれていない。
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時代背景、土地の特徴、事故の歴史、などなどよくよく調べていなければ書けないだろう部品がたくさんあります。さすが手練れという感じ。
主人公にはちょっと共感できないところも私にはありましたが、主人公の母の追う、こういう「忘れられない恋」、きっとでも現実にもあると私は信じます。
これから更に年をとって、自分は最早これまで、と思った時に思い返すのはどんな恋なのだろう…ということを考えました。
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平凡に暮らしてきた人と思い込んできた母美月には、かつて真剣に愛した人がいた。死を目前にしてその思いをうちあけられた李恵は、失踪した母の恋人の行方を追う。
もしかしたら秘めたままだったかもしれないことが、しだいに明らかになる。有名なアパレル会社のデザイナーのパートナーだった李絵の再生物語でもある。
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死期が近い母が、最期に会いたい人がいると娘に告げる。
50年前に突然姿を消してしまった恋人。
住所も大学もわかっていたから、探そうと思えば探せると思っていたのか…でも彼に許嫁がいたこと、自分も彼をあきらめて結婚したこと、彼の嘘や不信感もあった。
会えたらどうだったんだろう。彼は駄目な人だと思った。
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先日ドラマ化されたものを見て、少し物足りなかったので原作も読んで見た。やはり何かが物足りない。それは人物の掘り下げ方なのか?私が求めていた物がもっと熱を帯びた物だったからか?恋人や親友がいきなり失踪した時にはもっと死に物狂いで探し回るのが本当なんじゃないのかとの思いが捨てきれなかったからか?読後感はどうしても何かが物足りないんだよww
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私だったらやり切れないなぁ。
母の今も秘めた恋バナを聞くのも無理だなぁ‥
この寿司やとバゲットは是非食べてみたいし、トラピストバターの飴も買ってみよう
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舞台はやはり函館。主人公と恋人の機微がうまい。お父さんはけして嘘をつかなかった、のひとことで、母の人生は間違っていなかった、と言えよう。それにしても、なぜいつの時代も、恋には嘘と不誠実が溢れているのか。そして、選ばなかったとしても、いつまでも、気持ちの奥底に残る、愛しい想い。この作者、根っからの恋愛体質。そこが好き。
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末期癌の母のもとに帰ってきた主人公、李恵は思いがけず母の結婚前の恋愛の話を聞き、突如行方知れずになった男を探してほしいと頼まれる。
李恵の母、美月と相手の大橋の物語、李恵の恋愛とが時代が違うにも拘らず、同時に描かれていて不思議な印象です。
女二人の恋愛模様が主体ですが、母娘二人の情も良い感じに描かれています。
ラストは、ちょっと夢のようなふんわりとして哀しいエンディングです。
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函館を舞台とした洞爺丸沈事故と青函連絡船が絡んだお話。とにかく懐かしい気持ちでいっぱいになった。
以前に住んでいた場所でもあるし、さらに先月訪れたばかり。具体的な地名追って物語が進んでいくうちに
情景はっきりと浮かんできたのもよかった。
失踪した好きな人がいながら結婚生活を送ることは
その想いを墓場までもっていく覚悟が必要なのかとも。
病床で告白されても娘の立場では複雑なものがあったかと思うがいかがなものだろうか。
葛藤がありつつも一生懸命すぎる母娘のありように
やっぱりこういった結末かなってある程度予想できてしまったのが残念。
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洞爺丸をめぐる事故のあれこれはドラマチックではあるが、それを追いかける現在の人間ドラマは少々退屈。
2015/09
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恋人と別れた李恵は、末期がんの母の世話をするために、東京から故郷の札幌へ戻って来た。ひょんなことから母の若い頃の話が始まり、初恋の相手が急に失踪したことを知る。先の短い母は彼が今だに行方不明のままでいるのがとても心残りだという。彼との思い出の文通の手紙の束を手掛かりに、李恵は彼の行方を捜すことになる。
子育てを終わり夫に先立たれた後、
余命を悟った母親が突然娘に語り始める
若かりし頃の大切に仕舞っておいた悲恋話。
聞きたいような聞きたくないような…
複雑な心境で「李恵」も聴いていたのだろう。
ストーリーは、函館の街を舞台に、
母と子、昭和と平成、二つの時代を挟んで展開していく。
台風による北海道洞爺丸転覆事故を旨く取り入れ、
初恋の彼が、失踪しても今だに生きているのでは。という
強い絆を感じさせる作品だった。
遠い彼方に置き忘れた母のロマンス。
ちょっとしたすれ違いから、悲恋は始まっていたのだろうが、
そんな誤解さえも、この時代ではセピア色に輝く思い出となっている。
老いても一生胸に残る
そんな恋愛をした李恵の母をうらやましく思った。
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美月の大橋への想いの深さ、というか執念には感服した。
余命僅かなのもあるだろうけど、50年も経ってしまううちに、自分に都合のいいように思い出を美化してしまうことはなかっただろうか。
自分の母親から同じような告白を受けたら、自分はどうしてあげただろうか。
母と娘、わかっているようで一人の女性としては理解していない方が多いかも。
結果は悲しいものではあったが、これほどまでに知りたかった真実を知って旅立てるとは…まさに思い残すことないだろうな。
洞爺丸の事故はあまり知らなかったが、全体の一部としてはかなり詳細な表現となっており、映像として受け入れるのが辛い場面だった。
全体に流れる閉塞感と、それでものんびり流れる時間、舞台が函館というのがお話を大きく引き立てていた。
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内容がめっちゃ面白かったわけでもないのに、いつのまにかのめり込んでいたので4。これで内容面白かったって思てたら5にしてたけど。
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最期に知りたい行方。
長くないとわかっているからこそ、長年心の中に居続けた想いに終止符を打とうとしたのだろうな。
自宅で介護しきれるならいいが、何かあった時など考えると中々難しいものがあるのかもな。