紙の本
韓流ブームのスターの微笑みの背後にある歴史の真実
2006/01/15 05:41
19人中、14人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:未来自由 - この投稿者のレビュー一覧を見る
韓国ドラマが空前のブームとなった「韓流」を経て、韓国は日本人にとってかつてない身近な国となった。しかし、韓国のスターたちの微笑みの背後に、人々がまさに生き死にを賭けて築いてきた現代史の営みがあることに思いをめぐらせる日本人は少ない。
著者の「はじめに」の一部である。「冬のソナタ」以降、韓流ブームは空前のブームとなった。隣りの国でありながら、これまで遠い国だったのが、これほど身近になった韓国とはどんな歴史をもっているのか。
日本による植民地化、解放後の信託統治、南北分断、朝鮮戦争、その後の軍事独裁政治、そして血塗られた民主化運動。今日の韓国はそうした歴史のうえに、条件付の民主化を国民自身の闘いの中で実現した。
だからこそ、「いま、韓国社会は、歴史の見直しが一つのブームとなっている。とりわけ、第二次世界大戦後の歩みをあらためて問い直そうするこの国の人々の姿勢には目をみはらせるものがある」という。
盧武鉉現大統領の「国家がみずから率先して真相を明らかにし、謝罪し、賠償や補償の責任をつくさなければならない」との決意は、過去に無反省な日本の政権政治家と対照的であると同時に、そこまで大統領が発言できる政治を実現した国民の結実としてみることができる。
韓国での戦後半世紀に及ぶ歴史は、人として生きようとした闘いの歴史と、それを武力で押さえつけた軍事政権との歴史でもあった。これほど血塗られた歴史をもつ国も珍しいが、ついに、不徹底ではあるが一定の民主化を実現した国民の過去の闘いに頭が下がるおもいである。
いまだに「国家保安法」など、国民の自由を縛る法律が存在していたり、あれだけの民主化運動があったのに現在では選挙の投票率が下がっているなど、危惧することも多々ある。
しかし、歴史の見直しが進む韓国が、過去の歴史から「人が生きる」ことの意味をどの国よりも考えていることを願いたい。そんなことを考えさせてくれる書である。
生きる人、の視点に立った著者の研究に共感を覚えた。歴史の主人公は、一部の英雄や独裁者のものではない。そこに生きる一人一人の人間こそ主人公である。そんな歴史観を誰もがお互いの立場から持ったとき、暮しやすい社会が実現するのだろう。
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学部時代の指導教授の著。
韓国の現代史を、上から、中央(ソウル)から見るのではなく済州島・全羅道などの疎外された「周辺」から見るという視点で描いている。
岩波新書なので、現代史を市民運動やその思想などから簡単簡潔に書き出しているが、韓国に対するある程度の基礎知識がなければ多少複雑。
しかしそのぶん、入門的な部分だけでなく、韓国政治の少し入り組んだ部分まで整理することができる。
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光復節以降、盧武鉉政権までを、民衆の視点、周縁の視点、特に韓国の地域主義について詳細に書かれた本。
済州等4・3事件、光州事件について詳細に書かれています。
「鉄条網〜」の前に読んどけば良かったと思いました。
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3/11
民主化運動、そして中心ではなく疎外された地域にスポットを当てかかれた本。
韓国現代史と銘打つだけあり、現代史の流れを整理するのに役立った。
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意外と、日本の隣の国である韓国の歴史は知らないものです。
今でこそ、それなりに先進国のような雰囲気である韓国ですが、ほんの20年ほど前までは軍事政権でした。
この本は、朝鮮半島解放から軍事政権までの「政府と、それに対抗する民衆」のことについて重点的に触れられています。個人的には結構深い内容まで踏み込んでいる、と感じました。政治や経済などの幅広い分野も含んでいます。
韓国について議論するためには、まず知ることからはじめなければならない。そんな気がいたします。韓国近現代史を専攻にするのでないのならば、この本で事足りると思います。
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【内容】
基本的には韓国の平易な戦後の歴史を解説した本である。
政治史ばかりではなく、歴史学的な観点や社会学的な検討も行われている。
何かとこじれがちな日韓関係であるが、その日韓関係史を知ることで、自分の意見を持つことができると考える。
【感想】
今でこそそれなりの先進国的な色合いを見せている韓国ではあるが(意外とすぐ通貨危機になるんだね、とも思うけど。)、ほんの20年前まで軍事政権であったことを、隣の国の国民で有る我々が、まずなにより知っておくべきである。
韓流が一時期はやったが、正直韓国をそこまで深く知っている人はいないのではなかろうか。
中国近代化の父である「鄧小平」を知っている人はいても、韓国近代化の父(と同時に冷酷無比な独裁者)である「パク・チョンヒ」を知っている人は中々いないのではなかろうか。
韓国の近現代も、中国の過酷な人権弾圧の影に隠れて、中々どうして、血生臭いものである。
「未だに韓国には、徴兵制が存在する。」それが、韓国の暗い歴史を考える契機となるであろう。
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戦後の韓国史を、韓国内の地域主義および階級対立という視点からまとめた本。地域主義を産んだ、古代からのエリア分断、地域間の経済格差の説明に詳しい。また、その中で生まれた戦後すぐの済州島での四・三事件、全斗煥政権時の光州事件の経緯にも詳しい。さらに、一般的に民主化運動と呼ばれる中に、マルクス派などの左派勢力も大きく入っており、その派内での対立や変遷なども書かれている。
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[ 内容 ]
日本の植民地支配から解放されて六〇年。
韓国の歩みは分断、戦争、独裁、軍事政権、民主化運動、そして経済破綻など日本では想像を絶するような波乱に満ちている。
三〇年余りの歳月を隔てて起こった二つの悲劇―済州島四・三事件と光州事件を軸に、ダイナミックに描きだす激動の現代史。
[ 目次 ]
序章 朝鮮史における中心と周縁(韓国の“地域葛藤” 朝鮮王朝時代の中心と辺境 ほか)
第1章 傷ついた“解放”(人民委員会と米軍政 一〇月人民抗争 ほか)
第2章 軍事政権の時代と光州事件(四・一九学生革命 朴正煕とその時代 ほか)
第3章 分断を超えて―民主化と南北和解(六月民主抗争 地域主義の時代 ほか)
終章 過去へ、未来へ(過去への眼差し―周縁の復権 e‐politicsは未来を切り開くか)
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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日本の植民地支配から解放されて六〇年。韓国の歩みは分断、戦争、独裁、軍事政権、民主化運動、そして経済破綻など日本では想像を絶するような波乱に満ちている。三〇年余りの歳月を隔てて起こった二つの悲劇―済州島四・三事件と光州事件を軸に、ダイナミックに描きだす激動の現代史。
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ベトナム、ドイツなど、第二次世界大戦で分断された国家で、
まだ統一が果たされていないのは、朝鮮半島と台湾だ。
朝鮮半島は、まだまだこれから10年、
経済発展とともに、統合される機会があるだろう。
統合されるためには、韓国がまだまだ反映する必要がある。
将来、北と統一国家ができても、反映できるだけの基礎が必要だから。
そんな視点で眺めると、韓国のこれからに期待が持てる気がする。
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あまりよく知らない韓国の現代史。知りたいと思うと、まず変な本をフィルタしなくちゃならなくて面倒くさい。嫌韓も好韓(?)もとりあえずはどうでもいいんで。そういう意味でこの本は当たりだった。戦後から始まるので、日本がほとんど出てこない。北朝鮮もほとんど出てこない。
で、やっぱり知らなかった。光州事件の名前だけ知っているぼくのような者にとっては、読んで良かった一冊。韓国の戦後って大変だったんだな。戦争に負けた日本より、ある意味大変だったんじゃないだろうか。こういう大変さは、もう終わったのだろうか?
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やや表現は難しいと思うところもあったが、第二次世界大戦後の韓国の歴史を知るには良い本だと思った。特に、下から(民衆視点)の歴史の観点、地域主義の観点を重視してまとめている。韓国の歴史の複雑さの一端が垣間見えるように思えた。
内容は、次の4章構成である。
1章 傷ついた「解放」
2章 軍事政権の時代と光州事件
3章 分断を超えて―民主化と南北和解
終章 過去へ、未来へ
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読んで良かったなあ、と思いました。
恥ずかしながら、ほんとに判っていませんでした。韓国の現代史。
一八九四年日清戦争。一九〇四年日露戦争。
「坂の上の雲」な日本の歩みは、要するに「朝鮮や台湾、そして満州を植民地にすることで、後発ながら帝国主義の勝ち組の仲間入りをする。アジアで唯一の帝国主義勝ち組になる」。
ということに尽きるんですね。
ハッキリ言って、植民地に売るほどの製品も無いんですけど、そこは工業化と無茶苦茶な同時並行で突き進んだ訳です。
それが善とか悪とかという価値判断は別として。
ものすごくざっくりと。間違っていたらごめんなさい。
日本の植民地にされてしまう以前の朝鮮は、大まか李氏朝鮮でした。王朝ですね。
それが日本に支配されてしまって、一九四五年八月、終戦を迎えます。
その後、自由独立民主主義を求めるコミューン的な動きが散発でありましたが、要するにアメリカとソ連にわっしわっしと蹂躙されます。
「中国」に比べると、小国で征服しやすく、海に突き出た半島という地理条件が、そういう流れを産んでしまったようですね。
バルカンもそうですけど、やはり海に向かってにらみを利かせられる。もっと言うと、日本にとっては(つまり、アメリカにとっては)どうにもここが敵国だと落ち着かないんですね。
一方でソ連にとっては、凍らない海な訳ですから。
で、その後。
韓国(朝鮮半島の南側)は、日本と同じ、戦後アメリカの間接的属国というか。対米従属で歩んでいきます。
もちろんその途中で朝鮮戦争があります。
朝鮮戦争っていうのも、良く知ってみると、もうむちゃくちゃですね…。
一度、朝鮮全域がほぼ北のものになって。反攻で今度は全域が南のものになって。また反攻で38度線…。
もちろん、そんなダイナミックな戦局には全て、朝鮮人以外の強大な勢力、アメリカやソ連や中国が絡んでいる訳です。
結局地元の朝鮮人としては、操られ、憎しみ合うようにされ、殺し合いさせられ、国土はずたぼろに…。
うーん。
酷過ぎる話です。
そして、南側はアメリカ従属路線で、韓国になる訳です。
その過程では、アメリカ従属型の国政に反対する人々も多く、時代の流れとしてそのほとんどはいわゆる左翼的な嗜好になります。
そしてそういう左翼的な嗜好に対して、ヒステリックな共産主義批判、弾圧、殺し合いまでが起こります。
そして。
●李承晩イ・スンマン
●朴正煕パク・チョンヒ
●全斗煥チョン・ドゥファン
と、少なくとも一九八八年くらいまでの40年間。もっと言うとその後の盧泰愚ノ・テウ政権の1993年まで、簡単に言うと韓国には、戦後の日本におけるような民主主義や自由は無かったんですね。
(戦後の日本だって、建前は別として、権力による弾圧や不審死というのは多数ありますけど、まあ、総論に於いて、です)
その間はつまり。
アメリカの都合に反しさえしなければ、時の権力者の都合で、反対勢力(特に左翼的な民主化運動)は徹底的に弾圧されました。
そのほとんどが、「北朝鮮と密かにつるんで悪いことをし��いる」というでっちあげ。
正直に言うと、2015年の日本がいくら公権力が巨大化していて民主主義が危ない、と言っても、比較すると口あんぐりの凶悪さです。
で、やっぱりさすがに、北朝鮮型の独裁でもないですから。
やっぱり経済、暮らしが発展しないと苦しい。
そして、アメリカは韓国に経済成長という飴を与えないとしょうがない訳です。親分ですから。この辺は日本の戦後史と同じです。
そして結局、経済が発達していこうとすると。
アメリカ型ですから自由資本主義なんです。
資本主義と言うのの素敵なところは、基本的に民主主義や言論の自由と相性が良い、ということですね。(素敵じゃないところもあるわけですけど)
韓国も徐々にそうなっていきます。そして資本主義として栄えていくために、ソウル五輪があります。
なんですけど、五輪をやるとなるとさすがに、無茶苦茶な弾圧とか暴力とかは、国際的に顰蹙を買っちゃってどうにも行き詰っちゃうんですね。
そして、民主化に至るまでには、何十年にもわたっての、時の若者たち、インテリ大学生を中心とした、青春の情熱を傾けた市民運動があります。
もはや運動というよりも戦いと呼びたくなるくらい、その都度に弾圧され拷問され、死人がすごい数、出てます…。
そして1990年代以降、金大中政権を象徴として、ようやくの民主化。そして当然と言うか、皮肉のように経済成長も「無茶苦茶な高度成長時代」が終わり、都市化工業化輸出型の限界が諸問題となって現れる。
そしてまた皮肉なのは、民主化されたと同時に、すさまじいまでの勢いで学生政治運動が冷えて行きます。政治の季節が終わり、ノンポリと享楽の季節が来ます。
ですけれど。
その一方で、2000年代中盤から、世界最先端のブロードバンド大国になった韓国では、ネットの動向が政治を動かす事象すら起こっています。
マスメディアや政府の宣伝に流されない、ネット上の市民勢力とでも言うべき潮流もできている、ということですね。
(まあそれが必ずしも全般的に素晴らしいかどうかというのは難しいところですけれど。ネトウヨなんて言葉がある国もありますからねえ)
そういった流れを、かなりわかりやすく現代史の通史として描いてくれます。
無論のこと、こういうことは筆者の趣味や主義や立場によって変わった風景になる訳ですが、少なくともこの本は、「どうしてこうなったのか」ということを、感情的な善悪論ではなく、力関係と経済の理由を常に意識しているところが説得力があります。
(ま、それに加えて、なりふり構わない「権力欲」という人の営みの怖さを思い知らされますが)
市民運動の弾圧。政府により言い訳。陰謀や悪事のねつ造。
そして議会の勢力を削ぐような制度変更、選挙制度の変更。
選挙という言い訳を盾にしながら、その選挙をなるたけ無効化しようとする。
そして、憲法の変更。
仮想敵国を振り回しての脅威論。それを理由にしての公権力の増大。
実に、本当に、「うかうかしてると、こうなるねんなあ」という。たまりませんね。
そして、論を超えた仮想的の植えつけ方の怖さ。
日本で言えば沖縄のような離島である、済州島の、歴史からのもてあそばれ方。
左翼勢力が起こり、強烈な弾圧。殺戮。その後の「赤狩り」の陰惨な歴史。
そして、40年を経て、その歴史にようやくの陽が当たり始めています。
でも、これも沖縄が背負わされてきた道のりを考えると、あながち他人事ではありませんね。
実に面白かったし、勉強になりました。
欲を言えば、この本は2000年代の本なので、この本の続編が読みたいです。
歴史を面白いと思うためには、ゼッタイに現代史からさかのぼっていくべきです。
「今こうなっているのはなぜなのか」と言うミステリーを紐解いていく。その果ての果てに縄文人とかが居る訳で。縄文人から始めても、歴史なんて面白い訳がありません。
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韓国の現代史を簡潔にたどった本です。なお2017年現在、本書の改訂版である『新・韓国現代史』(岩波書店)が刊行されています。
第二次大戦の終結と日本の植民地支配からの解放を出発点として、盧武鉉政権の誕生とその後政権が直面することになった問題までを、分かりやすく説明しています。とくに著者が力を入れているのが、民衆の視点から民主化への動きを詳しく論じることです。同時に、地域間の相克が韓国国民の民主化の願いを分断することになった経緯や、インターネットの隆盛による国民世論の動きが政治にストレートに反映してしまうことの「光」と「影」について読者の注意をうながしています。
とはいえ、あくまで韓国現代史を概観するための本であり、特定の主題に基づいて韓国の政治と国民の歩みを検証したものではありません。韓国の歴史について一通りの知識を得ることができるコンパクトな入門書です。
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以前読んだものだったが、韓国訪問の機会を得て、再読。
改めて、近現代の韓国が、大変な時代を経験してきたということが分かる。特に、ソウル・オリンピックをやった1988年だって、まだ民主化運動の真っ只中だったのだ。そういうことを理解しておく必要がある。