商品説明
深井家には禁忌(タブー)があった。本棚の本の位置を決して変えてはいけない。九歳の少年が何気なくその掟を破ったとき、書物と書物とが交わって、新しい書物が生まれてしまった――! 昭和の大阪で起こった幸福な奇跡を皮切りに、明治から現代、そして未来へ続く父子四代の悲劇&喜劇を饒舌に語りたおすマジックリアリズム長編。
著者紹介
小田雅久仁 (著)
- 略歴
- 1974年宮城県生まれ。関西大学法学部政治学科卒業。2009年「増大派に告ぐ」で第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞、デビュー。
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紙の本
読後感最高の壮大なご近所ファンタジー
2013/02/26 09:09
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:べあとりーちぇ - この投稿者のレビュー一覧を見る
先日読了して、いまだに胸の中で「おもろかったなァ」と反芻が止まらない1冊。こんな読書を味わったのは久し振りで、誰かと「ねえねえあの本おもろかったよねえ」と語り合いたくてうずうずする気分もまた久し振り。
読むきっかけはタイトルでした。
『本にだって雄と雌があります』???
なんちゅうトボケたタイトルやと気になってたまらず手に取って、ぱらりと開いて少し驚きました。
この本の前に読んだ小野不由美さんの『残穢』のページ面が真っ白だったように思えるほど(実際はかなりみっしりした本だったにも関わらず)字でいっぱい。改行も会話文も少なく、語り手がどこの誰でどういう人なのかの設定説明も思い切り良く省かれたまま問答無用で本題に突入するので面喰らいます。
しかもその語り口がおっちゃん。
ただのおっちゃんじゃありません。滅多に会わない親戚の、日頃は影が薄いのに喋り出したら止まらない、おまけに笑っていいのか悪いのか判断に困るようなオヤジギャグをドヤ顔で頻出させながら滔々と語りまくる、そういうタイプのおっちゃんです。
そのおっちゃんが「深井家の歴史はなァ」と、もちろん顔も知らない昔の人たちのことを延々と語るのです。「ちょお待って、その人誰やったっけ?」と饒舌を遮りページを遡り、該当箇所を拾い出して「ああそうそう」と元に戻る…そういう繰り返しに、この本を読み終えるのは難儀するだろうなあと覚悟しました。
が、不思議とつまらなくはないのです。いや、つまらなくないんじゃなくてちゃんとすっごく面白い。
過去と現在を行ったり来たり、行き当たりばったりに語られる物語の主人公は深井與次郎。今はもうこの世を去った、元大学教授であり膨大な蔵書の所有者でもあったその男性は、語り手である土屋博のお祖父さん。この本そのものは、博さんがまだ幼い自分の息子、つまり與次郎の曾孫に当たる恵太郎くんが大きくなってから読む時のために恵太郎くんに宛てて書いているという体裁です。
なんでそんな面倒くさいことをするのか。
與次郎とその妻ミキの馴れ初めとか、與次郎の永遠のライヴァルであった鶴山釈苦利のこととか、與次郎と釈苦利が共に血道を上げる幻書とか、幼い頃の博に與次郎が言い聞かせたこととか象牙の蔵書印が2個ある意味とか、諸々がどこでどう繋がってるのか全然判んないけど何故それらが語られなければならないのか。
首を捻る読者(=恵太郎くん)に対し、語り手の博さんは「判らんやろうけどちょお待っとってな。そのうち判るようになるねん」とはぐらかすばかり。
読むほどに深まる謎は、後半、與次郎の戦争体験が語られる頃から一気に収束して行きます。
クライマックスの美しい一瞬を目指して、ミリ単位の隙間もないほどすべてがぴっちりとはめ込まれる展開は見事のひと言。そこへ至って初めて、あああの時のあれこれにはそういう理由があったのかと、膝を叩く勢いで納得出来るのです。そしてさらに、この本を博さんが、まだ3つかそこらの恵太郎くんに宛てて書かなければならない理由も最後の最後に明かされます。
その瞬間広がる、深井與次郎から土屋恵太郎まで4代にわたる時間の流れには、胸をじんとさせられずには居られませんでした。
最初は「読み切れるかな」と心配だったのが、最後の方は残りページを惜しみつつ一気です。裏表紙を閉じた瞬間にもう1回最初から読みたくなる、装幀にもにっこり出来る、そんな素敵な1冊でした。
万人受けするとは思わないのですが、本好きな人にはお勧め。趣味が合う人とはニヤニヤ笑いで頷き合いたくなること請け合いです。
紙の本
再チャレンジします
2021/11/13 22:58
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kochimi - この投稿者のレビュー一覧を見る
最初の読みにくい壁を越えられなくて、
あえなく撃沈……
皆様のレビューがとても良いので、
いつか再チャレンジします。