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嫁の遺言
著者 加藤元 (著)
満員電車でふと自分の手に触れた冷たい手。間違いなく、それは、38歳で死んだ嫁の手だった。生前からちょっと変わったところのある女だった嫁が、どうしても伝えたかったこととは―...
嫁の遺言
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嫁の遺言 (講談社文庫)
商品説明
満員電車でふと自分の手に触れた冷たい手。間違いなく、それは、38歳で死んだ嫁の手だった。生前からちょっと変わったところのある女だった嫁が、どうしても伝えたかったこととは――。不器用だけれどあたたかい人情に溢れ、人間がいっそう愛おしく思えてくる全7篇を収録。(講談社文庫)
目次
- 嫁の遺言
- いちばんめ
- あの人への年賀状
- 不覚悟な父より
- あんた
- 窓の中の日曜日
- おかえり、ボギー
- あとがき─『嫁の遺言』というおとぎ話
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紙の本
語りのうまい作品。
2015/09/29 12:10
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:紗螺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
話自体はどれも何ということもないのだが、底辺に生きる人たちといっていいのか、豊かさや上品さとは程遠い人たちの猥雑さやエネルギーが伝わってくるような書き方がうまい。語り手自身というより、語り手の周りの環境がまざまざと伝わってくる。「あんた」での下町の中の薄汚いおでん屋、「おかえり、ボギー」のラーメン屋、「窓の中の日曜日」の酒場…、どれも小さいし立派ではないのだけれども、確かに生きている。
話としては、美容室を営む年老いた母親の秘密を息子が知り、美容室を続けたいという母親の意志を受け容れる話がよかった。表題作や「不覚悟な父より」は語り口がうまい。直截語りかけたり、つぶやいたり、そういうスタイルをとっている話は、噛み合うとおもしろい。