紙の本
イカをたずねて三千里
2013/08/24 18:31
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投稿者:Tucker - この投稿者のレビュー一覧を見る
「海は好き?」
「あ、はい!」
そんな他愛無いやりとりが、全ての始まりだった。
本書はNHKスペシャル深海プロジェクト取材班がダイオウイカを追い続けた2002年から2012年の10年間のドキュメント。
言った方も言われた方も、その後10年、苦闘する事になるとは夢にも思わなかっただろう。
ダイオウイカは深海に住む巨大イカで、触腕も含めると6.5mにも達する。
天敵はマッコウクジラ。
マッコウクジラの体にダイオウイカの吸盤の跡が残っている事が観察される事がある。
そのため、海中では、マッコウクジラvsダイオウイカの死闘が繰り広げられている、と思われるが、その瞬間を見た者はいない。
実際の取材ではダイオウイカに振り回されっぱなしだが、「奇跡」は3度起こる。
まず、取材を始めて2年後、2004年に海中のダイオウイカの静止画撮影に成功する。
が、ビギナーズラック、とでも言うべきもので、謂わばダイオウイカからの「挨拶」
次に、2006年、2度目の奇跡。
今度はダイオウイカそのものが釣れてしまったのだ。
(ちなみにダイオウイカは食べると不味いらしい)
結局、船上に揚げる時に死んでしまうが、海面近くで必死に抵抗するダイオウイカの動画の撮影に成功する。
しかし、その後、長い試行錯誤&苦闘の日々が続く。
結果が出ず、プロジェクト存続の危機さえ訪れる。
その間、じつに6年。
自分なら成果が出ない期間が6ヶ月でも耐えられるか分からない。
そして、2012年、最後で最大の奇跡が起きる。
海中のダイオウイカとの「接近遭遇」だ。
この時の調査は、国際協力体制が敷かれ、潜水艇も使った、かなり大掛かりなものとなっている。
そして、NHKスペシャル「世界初撮影! 深海の超巨大イカ」 のクライマックスでもある。
海中でダイオウイカの撮影に成功した時、潜水艇に乗っていたのは窪寺博士。
NHK取材班より前からダイオウイカの研究をしていた専門家。
その専門家の前にダイオウイカが姿を現したのには、運命的なものを感じる。
長年、研究していた博士へのダイオウイカからの「褒美」だったのかもしれない。
ただ、その時の博士の気持ちは
「見つけた!」
なのか
「見つけてしまった!」
なのだろうか?
海中で撮影されたダイオウイカの目は、まるで
「人間風情が、よく頑張ったな。」
と言っているかのよう。
欲目かもしれないが、その目には知性すら感じる。
それに威厳に満ちている。
まさに「大王」
3度目の奇跡の場面では、新書にしては珍しくカラー写真が何枚もある。
また、本書の先頭と末尾にも、この時の「奇跡」の写真が多数、掲載されている。
この事だけでも、著者達の力の入り方が分かる。
また、本屋の科学雑誌のコーナーではダイオウイカをはじめとした深海生物を取り扱った様々なムックが並んでいるし、国立科学博物館では特別展「深海 -挑戦の歩みと驚異の生きものたち-」が開催されている。
関係あるか分からないが、2013年6月には、深海生物のダイオウグソクムシ(別名、海の掃除屋)の実物大ぬいぐるみが発売当日に3時間で売り切れた、という。
深海ブームらしいが、ダイオウイカがこれを知ったら、
「たかだか23分ほど撮影させてやっただけで、人間界では”ブーム”とやらが起きるのか・・・」
と呆れかえるだろうか?
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臨場感が最高のドキュメント。TVで見て、これはじき、書籍化されると予想、少し遅めだったかもしれないが、発刊後即入手、即読んだ。実に面白い。数年にわたり、何度ももぐりながら、1点集中で目標を達成していく様子が、ありありと伝わり、感動。かつての某番組風に、一見淡々と進むかのごとくの描写(ちょっとわざとらしいかも)。しかしながら、登場人物の熱さを前面に出す点など、つい突っ込みを入れてしまいそうになりつつ、引き込まれてしまった。
潜水艇の手配等、裏方シゴトにも多くの説明があるのが良かった。一般向けの書物にしたのだろうが、ぜひ、専門書も刊行してもらいたい(論文誌をみればいいのかもしれんが)。本書後半のイカ図に、とにかく感動、驚き、電車内で読んでたのに、おぉ~とかもらしてしまった。
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今年1月に『NHKスペシャル』で放映されるや大反響を巻き起こした、深海の超巨大イカ、ダイオウイカ。その撮影に賭けたNHKのスタッフたちの、10年にわたる戦いを綴ったドキュメントがこの本。
船、カメラ、おびき寄せる装置……。ありとあらゆる工夫や困難を乗り越えて、ついに2012年7月10日、世界で初めて、23分間のダイオウイカ撮影に成功。その瞬間、自分も潜水艇の中にいるような興奮と感動を味わえた。
イカを撮影するために知恵や経験を結集して開発したカメラに「イカメラ」と名づけたところで、ちょっとニヤッとしてしまった(笑)。
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テレビを見ない僕にも伝わってきた、生きたダイオウイカの映像撮影。しかしこの裏にはなんともいえない苦労がつまっていた、という話。
ダイオウイカの企画だと通らないけれど、マッコウクジラの企画なら通る、なんてのは、笑っていいやら悲しんでいいやら。
テレビ嫌いだし、近頃すっかりドキュメンタリー番組など見る機会がなくなったけど、がんばって突き抜けていく人たちもいるのだなあ、と改めて思う。でもこれは、テレビの作り方、というよりも、やっぱり謎の生物を追う、という科学的、冒険的楽しさのほうが大きいなあ。
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10年ががかりでついに実現したダイオウイカの水中撮影の舞台裏。
わずか23分間。しかし、その23分間を実現するために投入された様々な資本、労働、時間・・・。
気まぐれな大自然、しかも人類の手では遥かに届かないような深海の世界を相手にする大変さが身に染みてわかったように思います。深海にはまだまだ想像を絶するような生物が生息しているのかもしれません。
320度透明なアクリル球で囲まれた潜水艦って素敵ですね。
一度でいいから乗ってみたい!
イカの飼育が難しいという話が途中で出てくるのですが、
言われてみれば確かに水族館とかでもあまりイカを目にする機会は無いなー。
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ダイオウイカについて詳しく知ることができるドキュメンタリーかなと思って読み始めたけれど
夢を諦めない気持ちを描いた小説のようだった。
「はやぶさ」の描かれ方とすごく似てるなあ
NHKさんだからむずかしいのかもしれないけど、はやぶさの時みたいに映画化されても不思議じゃない感じ。
10年、いろんな人から反対されながら続けるというのは、尋常ではない情熱。
その熱い想いとダイオウイカの対面に、ぞくっとしました。
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NHKスペシャル「世界初撮影!深海の超巨大イカ」の制作現場の舞台裏を詳細に記した一冊です。
テレビで見たそれぞれの現場がより詳しく理解出来て興味深かった。
それにしても、10年もの歳月をかけ何度も挫折し、半分あきらめながらも初心を貫徹した研究者やNHKスタッフの想いには感動した。
現在、上野の国立科学博物館で開催中の「特別展 深海ー挑戦の歩みと驚異の生き物たちー」に直ぐにでも行きたくなりました。
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NHKの、そして研究者の、
カメラマンであれ、ディレクターであれ、博物館の研究者であれ、
プロである人たちが本気で夢を追いかけた。
成功するという保証がない中で粘り続けた。
そんな日々の様子がよく伝わってきます。
視点がNHKサイドなので、
研究者側の視点からのドキュメントが乏しいのが残念ですが、
その分、ブレてはいないのかなとも思います。
天文の世界でも、そして学芸員の世界でもそうなのですが、
知識や考え方を伝えることに負けず劣らず大切なのが、
本気で自分が好きなことに取り組んでいる姿を見せること、
これはこんなに面白くて楽しいんだぞ、って思っている顔を見せること、
それが大事です。
その点、この本は成功しているな、と思いますね。ー
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NHK深海プロジェクトのダイオウイカを追いかけた10年間の撮影舞台裏のドキュメンタリー。いやー、凄い執念です。これだけ集中できるものを見つけたいな。
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2002年から10年がかりのプロジェクトは2012年ようやくダイオウイカの海中撮影に成功した。
予算の制約もありラストチャンスだったがみごと。成功の鍵には10年間にすすんだ技術、例えばイカが認識しない赤い光を出すLEDや新型のハイビジョンカメラ(宇宙の渚にも使われたやつ)なども貢献している。
一方で生物データロガーをマッコウクジラに取り付ける試みは学習した仲間のクジラに外されて失敗し、はえ縄にダイオウイカ化け(イカ釣りで使う疑似餌のようなもの)と言うアナログな方法も駆使している。
マッコウクジラ対ダイオウイカはマッコウクジラの圧勝。ダイオウイカはマッコウクジラの大好物だった。
ちなみに浮力を増すために細胞中にアンモニアの液胞が有るため臭くて食えたもんじゃないらしい。エイやサメのように干物にするしかないか。ダイオウイカの好物はこれも体長1mほども有るソデイカなど。
NHKスペシャル見たかったなあ。
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チェック項目11箇所。ダイオウイカが現れた時間は、わずか23分間、誰も成し得なかったことを、やりとげてしまった23分間、この物語は、その23分間のために10年の歳月と情熱を捧げた人々を負ったものだ。ダイオウイカの映像が放送された後、「世界で初めてダイオウイカを撮影して何の意味があるのですか?」と誰かがテレビで話していた、その通りなのかもしれない、でも、10年の物語は-変わらぬ夢をもち続け、逆境を跳ね返し、時にはばかばかしいほど熱くなる物語は-そこに意味があるということを、きっと教えてくれる。小笠原は世界でもっとも遠い場所なのだ、小笠原は東京都の島だが、東京からは1000kmも離れている、だが、問題は距離ではない、小笠原にはなんと航空便がない、船で行き来する以外に選択肢がないのだ。1998年、マッコウクジラの目の下に、くっきりとした巨大な吸盤の痕を発見したのだ、クジラの黒い皮膚に、丸い模様が点々と筋のように残っている、科学的には、マッコウクジラの胃の内容物がダイオウイカとの対決の決定的な証拠となるが、多くの人にそれをイメージさせるには、マッコウクジラに付いた吸盤痕の映像ほど明快なものはない。ダイオウイカの筋肉のなかには、液胞と呼ばれる、アンモニアを多く含む水の入った微小な袋が、多数分布している、その微小な袋がダイオウイカのグニャグニャとした身体の柔らかさを生み出している、イカ類は、そのままでは身体が海の底へ沈んでしまう、海水より身体の比重の方が大きいのだ、比重の小さいアンモニアを含んだ液胞を身体にもつことで、やっと沈まずに浮力が保たれる。じつは私たちが食用にしているスルメイカなどは、アンモニアを含む液胞をもたない、こうしたイカたちは、とにかく高い遊泳力で、沈むより速く泳ぐことで、生息環境の水深にとどまっている。「タコは8本、イカは10本」とはよく言うが、大人になると自然に2本の触腕が取れてしまう、8本腕のイカもいるのだ。2009年秋、小山と河野は、次こそはなんとか撮影を成功させようと、新しいカメラを開発した、その名も「期待の星・イカメラ4号」だ、期待の星・イカメラ4号は、1日にして、サヨナラとなった。数センチほどのダイオウイカの赤ちゃんは、わずか3年ほどで、10mを超えるまでに成長するという、生物のなかでも驚きの成長速度だ。マッコウクジラは社会性の高い動物で、仲間同士助け合って生きているとされる、捕鯨の時代には、1頭のマッコウクジラを撃つと、撃たれたものの周りを仲間が囲むため、一度に何頭も捕ることができたという、切ない話だ。
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おもしろかった~。
泳いでいる動画が撮影されるまでは、まさに伝説の怪物だったダイオウイカ。
深海での撮影に成功したのは、プロジェクト最後の年、2012年。挑戦を始めてから10年!困難を極めたその過程を、ドキドキハラハラと読み進みました。
世界で初めての偉業を成し得た理由は、情熱や努力ももちろんだけれど、世界中の英知の結集と、そして「奇跡」。
それにしても半端ない大きさのダイオウイカを想像しながら、ギラギラとした表紙の写真の彼の眼をみると…迫力です(笑)
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NHKで好評だったダイオウイカの番組ができるまでのドキュメント。なんと、このプロジェクト10年もかかっている。テレビを見ていると苦労は見えるが、こんなに時間がかかっているとは。今年は、深海モノが書籍でもよく売れているが、その発端がこの番組だったと思う。その裏に隠れていた苦労がよくわかる。
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ダイオウイカ。長期にわたり謎につつまれた生物を追い続け、ついに世界初の動画撮影をなしとげた舞台裏に迫る本。
しかし本著の中にもあるように、「静止画よりも動画を」とこだわった関係者の心理が、皮肉にも読み手にも理解できてしまう。
この本一冊で動画の感動を共有するのは難しいかもしれない。
是非Nスペ配信の動画を見ることオススメ。
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研究者の立場ではなく、番組制作者の立場でダイオウイカの撮影に成功するまでを綴った本。
なので、ダイオウイカの詳しい生態等が知りたいという人向きではないかと。
放映された番組では、美味しいところだけを1時間程度にぎゅっとまとめているのでわからないが、ダイオウイカを撮影するまでに10年近くを費やし、手探りで試行錯誤を繰り返す姿はぐっとくる。
ダイオウイカはそれだけの情熱を注ぐに値する、魅力あふれる生物であるということなんだと思う。
個人的には、撮影に使用された機材をどうやって開発したのかも気になるところ。