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ハイペリオンの没落(上)
著者 ダン・シモンズ (著) , 酒井昭伸 (訳)
〔英国SF協会賞/ローカス賞受賞〕宇宙の蛮族アウスターの侵攻に対抗すべく、連邦の無敵艦隊が投入され、熾烈な戦火の中にとり残された惑星ハイペリオン。この星にある、時を超越し...
ハイペリオンの没落(上)
ハイペリオンの没落 上 (ハヤカワ文庫 SF)
商品説明
〔英国SF協会賞/ローカス賞受賞〕宇宙の蛮族アウスターの侵攻に対抗すべく、連邦の無敵艦隊が投入され、熾烈な戦火の中にとり残された惑星ハイペリオン。この星にある、時を超越した遺跡〈時間の墓標〉を訪れていた七人の男女の眼前で、ついに幾多の謎が解明されるときが近づいていた! 傑作未来叙事詩第二部
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紙の本
マクロの物語とミクロの物語のタペストリー
2010/02/13 16:37
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yjisan - この投稿者のレビュー一覧を見る
未来から時間を遡行して出現する謎の遺跡〈時間の墓標〉を擁する惑星ハイペリオンを宇宙の蛮族・アウスターの侵略から守るべく、連邦首星タウ・ケティ・センターからFORCE(連邦軍)無敵艦隊が出動した。この突発的に起こったかに見える戦争は、実は〈テクノコア〉による人類支配に懸念を感じた連邦CEOマイナ・グラッドストーンが、ハイペリオン併合のために意図的に仕組んだものであった・・・! グラッドストーンは、〈テクノコア〉の人格復元プロジェクトによって19世紀イギリスの詩人であるジョン・キーツの肉体と人格を与えられたサイブリッド、ジョセフ・セヴァーンの「夢」を通じて、巡礼たちの動静を探ろうとする。
一方、ハイペリオンでは、連邦の密命を受け、また各々の思惑によって巡礼に参加した男女が、ついに目的地〈時間の墓標〉に到着した。彼等は1人、また1人と、〈苦痛の神〉シュライクと邂逅する・・・・・・
傑作SF『ハイペリオン』の続篇。異なる境遇に生まれ異なる目的で〈時間の墓標〉を目指す巡礼たち個々人の物語に焦点を当てた前作に対し、本作では狂言回しとして「神の眼」を持つバイオロイドたるジョセフ・セヴァーンが加わり、巡礼たちの苦闘のみならず連邦中枢での政治情勢も同時進行的に語られていく。前作では断片的に提示されただけであった銀河連邦史が徐々に明らかにされるところが興奮を誘う。前作のおさらい的な説明も多く、読者に親切な作りとなっている。
それにしても壮大にして緻密な舞台設計には、物語が進めば進むほど感心させられる一方である。〈テクノコア〉に依存した結果、快適な生活と引き替えに活力を失った連邦と、〈テクノコア〉の軛から脱して独自の進歩を遂げるアウスターを対置するという構図は、アシモフのイライジャ・ベイリもの(ロボット長編3部作)の影響を受けているのだろうか? また、作中で繰り返し語られる「人類の進化」「神」というテーマはクラークを意識しているように見受けられる。SFというジャンルを丸ごと再構築した野心作、という世評に恥じぬ構想力である。
紙の本
とりあえず作品の全貌が見えてきます、、、。
2005/07/11 23:22
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kokusuda - この投稿者のレビュー一覧を見る
前作「ハイペリオン」のすべての謎が解明される解決篇と銘打たれて発表された作品です。
しかし、謎が謎を呼ぶ展開だった前作の謎がすべて解明されたわけではありません。
とりあえず、普通の続編、後編ではなく別バージョンか、姉妹篇、補間篇というべきでしょうか、、、。
辺境惑星「ハイペリオン」の謎の遺跡「時の墓標」へ向かう巡礼たちを夢見る者がいた。
画家のセヴァーンと自称しているが、なぜか連邦の最高指導者に招かれていた。
ハイペリオンで放浪集団「アウスター」との戦争を控え大変な時期なのに、なぜ、、、?
ハイペリオンに端を発した戦争は瞬間転移網で結びついた200の惑星世界「連邦」へ拡大していく。
独立人工知性群「テクノコア」は「連邦」へ支援を申し出た。
半径数光年の人類を抹殺する超大量殺戮兵器を提供する、というのだ。
つまり、戦地に残された一般人を犠牲にして「アウスター」に完全勝利しろ、と、、、。
追い詰められた連邦は超大量殺戮兵器の使用を決定する。
200の惑星世界で構成される連邦、独立した存在でありながら連邦を支援するテクノコア、
接触を拒む謎の人類集団アウスター。
謎の遺跡「時の墓標」の封印が開く時、各勢力の思惑と人類の未来をかけた運命が動き出す、、、。
作品的に面白いのですが伏線が多すぎて少し判り難くなっています。
謎を解明しても別の謎に置き換えただけだったり、伏線の結末が暗示されるだけだったり、、、。
イェーツやキーツの詩、禅問答やキリスト教の教義、人工生命や人工知能についての用語などを知らないと
読んでいてツラそうだな、と思う個所もありました。
普段の会話には登場しないであろう用語が多々ありますし、、、。
シモンズ氏が勢いで書き飛ばしてしまったのでしょうか?
解かる人だけ解かれば良い、と開き直ったのか?
実は次回作への伏線、という見方が正しいような、、、(笑
前作とと合わせて2000ページを一気に読むことを奨めたいのですが金額的、時間的、体力的にキツイ(笑
でも、読んだ後に報われた気分になることは確かです。
紙の本
未曾有の物語に身を委ねよう
2001/03/21 22:54
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:旅歌 - この投稿者のレビュー一覧を見る
言わずと知れた大傑作『ハイペリオン』の続編である。時間経過からいえば続編なのは間違いないが、読み終えた率直な気持ちは訳者が巻末解説でおっしゃっておられるように、『ハイペリオン』と一対を形成する片割れを考えた方がしっくりとくる。前作で散りばめられた幾多の謎に翻弄された読者は、全ての謎に回答が得られることを期待してこの物語に臨むことでしょう。ところが、またしても期待は裏切られるのだ。どう読んでも、明快に理解できない点がかなりある。SF小説を読み慣れている読者ならば、断片をつなぎ合わせてそれなりの納得ができるのかも知れないが、いかんせん硬直した脳味噌を有するハードボイルド読みには理解の及ばない個所が多々あった。
この物語を読むと、『ハイペリオン』が単なるSF小説に留まらない物語として、いかに優れた美点を備えているかがとてもよくわかる。SF小説であることは間違いないが、重要な登場人物にスポットを当て、どちらかというと人間を主眼に描く姿勢が貫かれているから、読者はSF小説を意識せず物語に没入することができるのだ。残念ながら、『ハイペリオンの没落』はそうはいかない。SF小説を読み慣れていない旅歌が、両手を上げて降参するシーンの連続だ。それもキーとなる部分がすんなりと染み込んでこない。感覚として肌で感じればいいだけなのかもしれないんだけどね。
もっと率直に言っちゃえば、かなりSF小説を読み込んだ読者でも、この物語を理解するのは至難の技じゃなかろうか。バックボーンとなる洋の東西を問わない広範な哲学及び宗教に関する予備知識や、具体的なモチーフである詩人ジョン・キーツに関する予備知識と文学的理解…。才人ダン・シモンズが仕掛けた物語の醍醐味が常人に味わえないのはつらい。もっとも、この手の焦燥感はSF小説を知っていようがいまいが関係なく読者全員に降りかかる。この物語に限ったことでもないしね。旅歌の場合はそれ以前の問題で、SF的言い回しやSF的観念、SF的哲学としか言いようのない渦に飲み込まれて、SF的思考あるいはSF的読解を要求されて固ゆで卵型の粗雑な脳髄はパニック寸前であったのである。
ここまで読み返してみると、しきりと旅歌は自分は馬鹿だ馬鹿だと繰り返して、言い訳に終始しているように見えるな…(^^;;;。実際その程度の旅歌でありますが、それでも相当に楽しめる内容であったことはキチンと報告しておきましょう。宇宙大戦争のスケール感に素直に身を晒して、ため息をつくだけでもこのシリーズの愛読者になる資格は充分だから。あるいは、悲運のCEOマイナ・グラッドストーンに感情移入するもよし、美形のサイブリッドで物語の語り部であるジョゼフ・セヴァーンに身を焦がすもよし、人類の辿る数奇な運命とAIの関係に哲学的示唆を読み取るもよし。ともかく、さまざまな読み方のできる物語だ。この搦手の物語を深く追求するのも楽しみのひとつであろうが、あまり頭でっかちににならずに素直に波乱万丈の物語を堪能すればそれはそれでよろしいのではなかろうか。
『ハイペリオン』でほの見えた対立の構図が、実はもっともっと複雑に絡み合っていることがわかってくると、時系列の果てしないタテヨコナナメに翻弄されつつ、あらゆる側面があらゆる輝きを伴って読者の前に忽然と姿をあらわす。緩急自在の作者の筆が、ときにじれったく感じることもあるだろう。冗長とさえ感じる読者もあるかもしれない。だがしかし、とにかく身を委ねるのだ。心を平らかにして、作者が仕掛けた惑星ハイペリオンを巡る未曾有の物語に身を任せてみてはいかがだろうか、例えば永劫の大河を下る小さな艀のように。