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地理政治学と外交戦略
2002/08/23 10:51
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投稿者:三四郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
地政学とは,地球全体を常に一つの単位と観て,その動向をリアル・タイムでつかみ,そこから現在の政策に必要な判断の材料を引きだそうとする学問であり,高度な政策科学の一種である.誤解されがちな観念論でも宿命論でも決してない.国際政治学が国際関係を静態モデルの連続として,その間の変化を細かく捉えようとするのに対して,地政学は国際関係を動態力学的な見地から捉えるものである.
必然的に備わる地理的な環境を外交事項に最大限に活かすには,地政学的な要素を抜きに議論できない.例えば,海洋勢力(シ−・パワ−),大陸勢力(ランド・パワ−)とは何か? 大陸国家,海洋国家,半島国家の探るべき外交戦略とは何か? 著書を精読するとその国々が持つアイデンティティ(自己規定するもの)や風土,民族の性格や気質などまでもが行間に読み取ることが出来る.歴史や地理の現実を直視して科学的に捉え,戦略基礎を引き出すための入門書として著書は興味深い.
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外交問題の本質を学ぶ本
2017/01/07 19:46
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投稿者:和兄ィ - この投稿者のレビュー一覧を見る
現在の外交問題のベースはすべて国境がもたらす利権の交渉にほかならない。このジオポリティクスのしっかりとした概念を理解することが重要。ということが非常によくわかる本である。ハートランドといわれる地域がどこかわからない方はぜひお読みください。
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入門だけど
2017/09/08 21:20
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投稿者:藤和 - この投稿者のレビュー一覧を見る
入門という事なのだけど、そもそも政治学自体にある程度触れてないとかなり難しめ。
ハートランドを掌握した国が世界を制するくらいしかわからなかった……
19~20世紀あたりだと、海軍の力がとても重要だったとかそう言う事だけれども、取り敢えず個人的には2回は読まないとわからない本だと思った。
今度もう一回読み返してみようと思う。
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なんとなくトンデモ臭い感のある地政学。しかし、発想や着想を得る元としては、地政学的な考え方は非常に面白い。
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地政学とは聞きなれない学問だが、地球規模での外交・軍事・国家戦略には不可欠な学問。能動的に海外へ進出してこなかった戦後日本で一番必要な学問とも言える。本書はそんな地政学についての入門書。学史を踏まえた上で地政学についてわかりやすく解説しており、外交・軍事・国家戦略に興味がある人は読んでおいて損はない。
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日本語で出版された地政学の入門書で有用なものは少ない。というのも冷戦以前に出されたものが多く、基礎的な概念はつかめるものの現在の状況分析はほぼ皆無…
それはさておき、地政学入門としては倉前氏のものよりは断然良いかと思われる。
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1980年代から再評価され、かつての負の遺産としての地政学が、批判的地政学、もしくは政治地理学として再構成された。それを受けて、日本でもわずかに地政学に関する書籍が出版される運びとなった。しかし、本書はいわゆる旧来的な地政学の概要書でしかなく、批判的地政学の書籍ではない。その意味で価値は低いが、日本では地政学自体が旧来的な負のイメージしかない中で地政学とは何か理解することができる(但し、地政学と現在の批判的地政学は異なる)
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主に20C初頭のドイツ、アメリカを中心に書かれています。日本についても戦前の話がありましたが、現代の日本の地政学についてはは当たり前ですが少なめ。歴史を知るうえでは日本の地政学自体がそんなに議論が進んでいるわけでもないので、出版日時は古いけどそんなに内容は変わらないはずです(ソ連とか宇宙開発論争はでてきますけど)。現代地政学@JAPANだと中国周りがもっと出るんでしょうけどね。
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地政学を新書という形で紹介した本。
はじめは、地政学とは何か、を対話形式で記述している。続いてマッキンダーの記述、ハウスホーファーの記述と続く。これらに関しては、「地政学―アメリカの世界戦略地図」の方が詳しい。
一方、この本で評価できるのは、南米やソ連から見た地政学が書かれている点であろう。まぁ、古すぎるんだけど…。
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中盤は「地政学」というイメージから期待していた内容とはやや向きの異なる、歴史のおさらいみたいになってしまっている部分もあったが、面白かった。
取り上げられている範囲としては、ユーラシア〜アメリカ大陸で、時代は19世紀後半から20世紀。
これらの範囲を例題にして地政学の考え方みたいなものは大体見えてくる。時代も古いので、概要をつかんで終わりになるのは致し方ない。
個人的には、もう少し時代を遡って歴史の流れを地政学的視点から説明してほしかったかな。
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地政学には前々から興味があったので、思わず手に取った一冊。
なるほどBalance of Powersを重視する一般的な国際政治学とは一線を画す面白い視点である。
19世紀以来の対外政策を各の国家がおかれた地理的な条件を重視しながら、文化論・民族論を交えて論じるのが「地政学的」アプローチと言えるだろう。
本書はイギリス、ドイツ、アメリカの地政学研究のおおまかな潮流を解説しながら、地政学全体の概説を行おうとしている。
ただ、普段歴史的(政治力学的)なアプローチに慣れている人間からすると論証がやや表面的になってしまっている(実証性に欠ける)と感じてしまう部分があり、その点では筆者が言う地政学の誤解されがちなイメージを完全に払拭するには至らなかった。
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初心者の私には適度に難しく外交を考えさせてくれる良い本です。この手のものは国際政治学や政治地理みたいな類似の学問が沢山あってまぎらわしいけど、地政学が一番とっつきやすいというか、草の根かつマクロに考えるのに適していて独学には良いなと。現代のことを考えるには歴史だけでなく地理的なお勉強もしないとなぁ。
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少々古い本だが、地政学の流れをなんとなく理解するのにはいい。
麻生太郎が提唱した、「自由と繁栄の弧」は地政学的にも的確な政策だったとあらためて感じることができる。
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地政学入門、というより、地政学史入門、と表現したほうがしっくりくるような気がする。著者の、地政学に対する愛着と思い入れを感じる。
著者は、地政学とは、との問いに、こう答えている。
(厳密には、「B」に、こう答え「させて」いる。)
「サア、それは答えるのに非常に難しい質問ですね。まず、ひとくちにいって政治学の一種であることは確かです。それもかなり手の込んだ現実的な政治学の形態と言えるでしょう。ふつう政治学では、よく日本の議会政治のあり方とか、またそれと外国の政治との比較とかいったことを問題にします。が、地政学ではそれもさることながら、常に地球全体を一つの単位とみて、その動向をできるだけリアル・タイムでつかみ、そこから現在の政策に必要な判断の材料を引き出そうとします。つまり、常に地球を相手にする政治学だから地政学だというのだと、まあそう簡単に言っておきましょうかね」
この地政学の祖として位置づけられるのが、ハルフォード・マッキンダー(英、1861-1947)である。彼が記した『デモクラシーの理想と現実』(1919)は、「現代地政学の古典中の古典」であり、アメリカ合衆国が第一次世界大戦に参戦した際に掲げた「デモクラシーのために」というスローガンに対して、現実的には、大陸(この場合はユーラシア~アフリカの一体的なもの=世界島world island、を指す)の‘ハートランド’が、最大のハードルとなることを示唆している。彼の出身であるイギリスの視座に立ち、当時賞賛されていた(そしてイギリスにとって最も誇るべき国力である)海軍力(=シー・パワー)を脅かす存在として、大陸・内陸=ハートランドの力、ランド・パワーを唱えた。言い換えれば、英国はこれまで、そのシー・パワーを利用して、大陸(ハートランド)を独占する国家権力が出現しないよう勢力均衡balance of powerを維持してきたが、二十世紀に入ってからは、もはや英国独力では均衡の継続が不可能となり、世界の安定のためには、英国に代わる(或いは英国を含む他国籍の)新たな海洋勢力sea powerの編成が必要だ、と論じたのである。常に彼は、均衡balanceを平和、自由の手段として位置づける。これこそが海洋国家・英国のお家芸であろうし、我々日本も学ぶべきところは多いように思う。
また、彼は、さらに突き詰めた考察として、「西欧世界とその文明の発達は、とどのつまり内陸アジアからの衝撃ないし圧力に負うものであった」(本書P40)という、「まさにコペルニクス的転回のような」理論を展開した。これも、あくまで西洋主義(欧州主義)的な視座を離れてはいないが、それでも「向こう側」から世界を見たという点では特筆すべきではあったのだろう。この考察も、結局は、いやだからこそ、均衡が重要だ、という論旨に繋がっているように思える
一方、地政学におけるランド・パワー側の雄が、ヒットラー、ナチス・ドイツにも多大な政治的影響を与えたと言われるカール・ハウスホーファー(独、1869-1946)である。本書では、ハウスホーファーの地政学に影響を与えた要素として、①フリードリヒ・ラッツェル(1844-1904)が提唱した「生活圏」(lebensraum)の思想、②マッキンダー��シー・
パワーとランド・パワーの対比論、③日本の大陸政策の具体的な展開(韓国併合の過程)、の3点を挙げている。
このハウスホーファーの理論そのものについては、本書ではあまり詳細には触れられていない。但し、理論の骨格はマッキンダーとの相似形であり、であるからこそ、ハウスホーファーは「ドイツはソ連と共同すべきである」(両者で‘ハートランド’を占有すべきである)と主張したのであり、その点でヒットラーと相容れなかったのであろう。彼は、戦後、妻とともに自殺(息子はヒットラー暗殺に関わったとして終戦前に処刑されている。)
地政学そのものは、やはり陸海軍の時代に生まれた理論であり、空軍やゲリラ的テロリズムが主戦場となろうとする今日においては、その意味合いは副次的でしかなくなってしまったように思う。また、それぞれの論者の視点に縛られる点はどうしても否めず、マッキンダーは英国の、ハウスホーファーは独逸の、そしてモンロー主義アメリカの論者はやはりアメリカの論理を正当化するために論理を構築しているように感じる面もないわけではない。
今、何故その地政学がもてはやされているのか、その理由は正直よく分からない。しかし、経済社会における先進国から新興国への大きなうねりの中で、まさに地政学的な、全世界の情勢を「巨視的」に把握する視座は、今後非常に重要であるように感じる。
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マッキンダーの考えを紹介することでイギリスを中心としたヨーロッパのシーパワーの地政学的考え方を、ハウスホーファーの考えを紹介することでドイツを中心としたヨーロッパのハートランドの地政学的考え方を、アメリカのモンロー主義の考えを紹介することでアメリカを中心としたシーパワーとハートランドの融合という地政学的な考え方を紹介し、最後に旧ソ連の地政学的考え方を紹介している。
あくまで、学問的なこれまでの実績を紹介する入門書であって、新しい視点や独自の視点、さらには肝心の日本の地政学の視点が著しく欠如している。
地政学という「学問」はどういう学問なのか・・・を知るために、これまでの学問の歴史を知るには良い一冊。
地政学の本質には一切ふれていないため、評価は分かれるところ。新書という分野の欠点がそのまま出ている一冊。
まぁ、読んで損はない、といったところでしょうか。