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登山の誕生 人はなぜ山に登るようになったのか
著者 小泉武栄 (著)
古来ヨーロッパにおいて山は悪魔の棲家として忌み嫌われていた。一方、日本人にとっては聖地であり、信仰にもとづく登山は古くから行われていた。だが近代的登山が発祥したのは二百年...
登山の誕生 人はなぜ山に登るようになったのか
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登山の誕生 人はなぜ山に登るようになったのか (中公新書)
商品説明
古来ヨーロッパにおいて山は悪魔の棲家として忌み嫌われていた。一方、日本人にとっては聖地であり、信仰にもとづく登山は古くから行われていた。だが近代的登山が発祥したのは二百年ほど前のヨーロッパで、楽しみとしての登山が日本で普及するのはそれから百年後の明治末期になってからである。この差はなぜ生まれたのか。日欧を比較しながら山と人の関わりの変遷をたどり、人々を惹きつけてやまぬ山の魅力の源泉に迫る。
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紙の本
人間性溢れる行為、登山
2004/02/26 21:25
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:濱本 昇 - この投稿者のレビュー一覧を見る
私は、登山が好きである。登山により人生観を見直させられた。私は、何故、山に登るようになったのであろうか? 登山と言う行為が一般的な時にある現代では、その動機は容易である。つまり山という自然に魅せられたというのが答えだ。しかし、著者は、山に悪魔が住むと一般的に信じられていたヨーロッパにおいて何故、登山が行なわれるようになったか? 信仰登山が主だった我が国において、何故大衆登山が根付いたかに疑問を持ち、本書を書いている。
本書には、全く記載は無かったが、私は、山の存在自体に神の意志を感じる。それは、ヨーロッパにおいてスポーツ登山が発生し、そこにアルプスという課題を与え、技術を向上させた後に、ヒマラヤという人間の生存限界の自然にある山を用意して、それに挑ませる。つまり、登山という行為以上に人間性に満ちた行為は無いと思うのである。山の頂きに立っても、腹が膨れる訳でも、懐が温かくなる訳でも無い。しかし、人は、山に何かを求めて登るのである。この無償の行為、これが私が登山が人間の最高の趣味と考える所以である。
ヨーロッパにおいては、18世紀頃まで、山には悪魔が住むと信じられ、誰も近づかなかった。山に入ったのは、鉱山師、水晶取りくらいであった。しかし、徐々に「山の自然」に魅せられる人々が出てくる。一端、そのタブーが破られると登山の発展は早い。登山が人間性の発露と見る所以である。2000年以上の倦厭が僅か200年の間に現在の登山の域まで達するのである。
我が国における登山の発展は、ヨーロッパと事情が異なっている。我が国においては、古くから信仰登山という形で人々は山に入っていた。縄文時代の人々も山に入っていたような証拠もあるらしい。ヨーロッパとの違いは、やはり山の自然、風土に寄る所が大きいと思う。要するに日本の山は、アルプスに比べ、優しく人を包み込むところがあるのである。私は、ヒマラヤやアルプスに出かける事がよくある。ここで感じるのが、ヒマラヤやアルプスは、雪と岩の世界、それに対し、日本の山は、森あり、水有り、花あり、優しい自然に溢れていると感じるのである。古代から山に登った日本人も同じような事を感じていたに違いない。登山という行為が先に発展していた日本であるが、ヨーロッパの文化を取り入れるようになった明治以降、ヨーロッパの登山の姿を積極的に取り入れる事になる。それまで信仰登山の対象とならなかった日本アルプス等の険しい山々にも積極的に登山するようになる。ここでも、信仰登山という長い歴史が僅か100年という期間でスポーツ登山、大衆登山に取って代わられる。この現象は、ヨーロッパにおける200年の歴史と重なるように思う。
本書は、「登山」というテーマを元にヨーロッパと我が国との比較文化論であり、その文化の違いが浮き彫りにされ、とても興味深く読めた。
充実した昼休みを提供してくれた一冊である。
紙の本
2001/07/08朝刊
2001/07/12 18:16
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:日本経済新聞 - この投稿者のレビュー一覧を見る
人が山に登るのはなぜか。征服欲、未知へのあこがれ、冒険愛などが理由といわれるが、近代登山の歴史はわずか二百年ほどに過ぎない。本書はそのプロセスを丹念に追っている。
かつて欧州では山岳は悪魔の住み家とされ、人は山に近寄ろうとしなかった。一方、日本人は山を信仰の対象として親しんできた。それにもかかわらず、欧州で近代登山が生まれた理由として、著者は産業革命によって都市人口が急激に増えた結果、自然にあこがれ、旅を楽しむという新たなライフスタイルが生まれたことをあげる。
(C) 日本経済新聞社 1997-2001