電子書籍
時砂の王
著者 小川一水 (著)
〈時をめぐる大いなる戦いの果てに――著者が満を持して挑む、初の時間SF〉時間線を遡行して人類の完全なる殲滅を狙う謎の存在。絶望的な撤退戦の末、男は最終防衛ラインたる3世紀...
時砂の王
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時砂の王 (ハヤカワ文庫 JA)
商品説明
〈時をめぐる大いなる戦いの果てに――著者が満を持して挑む、初の時間SF〉時間線を遡行して人類の完全なる殲滅を狙う謎の存在。絶望的な撤退戦の末、男は最終防衛ラインたる3世紀の倭国に辿りつくが……
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紙の本
切なくも壮大な時間SF
2009/03/16 21:20
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kou - この投稿者のレビュー一覧を見る
謎の増殖型戦闘機械によって滅びに瀕していた26世紀の人類は、最後の希望を託して、人型の人工知的生命体―メッセンジャーたちを過去に向けて送り出した。自分たちの属する世界の人類はいずれ滅びる。ならばせめて改変された過去からつながる時間軸(つまりパラレルワールド)では、人類が生き延びられるように。
そして数多の戦いを経てきたメッセンジャー・オーヴィルは、西暦248年の邪馬台国…人類防衛の最終ラインに降り立ち、時の巫王・卑弥呼とともに戦うが・・・
ずっと気になっていた本をようやく読んでみました。
面白かった!
人類存続のために生み出され、戻れない旅へ送り出されるメッセンジャーたちは、それぞれの戦いの理由をそれぞれに見つけて旅立ちます。オーヴィルは共に過ごした人間の女性サヤカとの記憶と、彼女から受け継いだ「人に忠実であれ」という価値観を。
とはいえ過去に遡って繰り広げられる戦いは困難を極め、遡行に次ぐ遡行、戦いに次ぐ戦いを経る内に仲間のメッセンジャーたちも数を減らし、26世紀から持ってきた思い出も膨大な時間の彼方に薄れていき、それでも戦いつづけるオーヴィルの想いには、ただただ引き込まれるばかり。
そして、そこにさしはさまれる形で語られる3世紀日本での卑弥呼とオーヴィルの物語もまた同じくらいの勢いでぐいぐい展開していき、もう目が離せません。
戦闘が激化していく中で敗色が濃くなり、絶望の一歩手前まで行っても決して諦めない。その姿勢が生み出した未来と、けれど一抹の割り切れない哀しさに、忘れられないお話になりました。
この壮大な物語が、文庫でたったの300ページにおさまっているというのも驚異的です。過剰でも不足でもなく、しっかりと語りきられているその手腕にも拍手。
紙の本
おおらかな時間SF、ではないでしょうか。辻褄合わせに汲々とする作品が多いのですが、それは本末転倒。やはり話が求める時間、というものがあります。それがうまく合った稀有な例。日本の古代史が大嫌いな私ですが、今回は素直に脱帽です。
2009/06/20 20:13
6人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
恐るべきレベルの高さをもった作品で、出版された年にこの作品を読んでいたら、私のその後の読書計画は大きな変更を余儀なくされたにちがいありません。無論、時間SFのもつ難しさはあります。でも、私が読む限り、小川はそれを矛盾なく描くことに腐心してはいない、そんな気がします。
むしろ、小川は辻褄合わせに気づかうよりは、そこは軽く飛ばしてでも自分が書きたいことを書く。時間SFというのは、それを描く手段であって、けっして目的ではない、私は小川の姿勢をそう読みましたし、そこを評価したいのです。SF読みでもない私がいうのもナンですが、ハインライン『夏への扉』に匹敵する作品が、初めて日本にも現れた、私はそう言いたくなってしまいます。
舞台は各章のタイトルに見るようにいくつかの時代、場所を動きますが、基本は西暦248年の耶馬台国です。小川はここで邪馬台国畿内説を採っているようですが、時間SFという頭がこちらにあるせいか、それが取り立ててどう、とは思いません。今私たちがいる時間とは別の流れ、という風に思えるからでしょう。
主人公は女王・卑弥呼 彌子です。年齢ははっきりしませんが、20代半ばでしょう。処女、と断りがあります。で、彼女の従者で彼女を慕うのが14歳になる幹という少年です。で、お供一人を連れて海を見に行った二人が、見たこともない怪物に襲われます。そこに忽然と現れ救ったのが“使いの王”ことオーヴィルです。
オーヴィルは2300年後の世界から、自分が愛した女性サヤカを救うために過去に時間航行したメッセンジャーと呼ばれる知性体でした。彼らは人類が知識化したほとんどすべての情報を保持し、かつ太陽系奪回軍の参謀総長である知性体サンドロコットスのバックアップを受けています。
オーヴィルが最初にたどり着いたのが西暦248年の日本、というわけではありません。彼らは未来の地球を破壊することになった増殖型戦闘機械との戦いに相次いで破れ、最後にたどり着いたのが卑弥呼のいる世界でした。無論、もっと過去に遡ることも可能ですが、どうもこの世界こそが攻防の鍵を握る、そういうことになります。そして・・・
私の大好きな恋愛ドラマが始まります。そして二人の間に立ちはだかるのが、伊支馬こと高日子根です。この男がどのような存在であり、またカッティがどのようなものであるかは、小説を読んでお確かめください。
Cover Designはハヤカワ・デザイン、Cover Illustrationは撫荒武吉、カバー後についている内容紹介は
西暦248年、不気味な物の怪に襲
われた耶馬台国の女王・卑弥呼を
救った“使いの王”は、彼女の想
像を絶する物語を語る。2300年後
の未来において、謎の増殖型戦闘
機械群により地球は壊滅、さらに
人類の完全殱滅を狙う機械群を追
って、彼ら人型人工知性体たちは
絶望的な時間遡行戦を開始した。
そして3世紀の耶馬台国こそが
全人類史の存亡を懸けた最終防衛
線であると――。期待の作家が満
を持して挑む、初の時間SF長篇
で、書き下ろし作品だそうです。時間の流れがよくわかる Contents を写しておきます。
Stage-448 Japan A.D.248
Stage-001 Triton A.D.2598
Stage-448 Japan A.D.248
Stage-002 Earth A.D.2119
Stage-448 Japan A.D.248
Stage-003 Oulu A.D.1943
Stage-448 Japan A.D.248
Stage-004/410 Laetoli B.C.98,579
Stage-448 Japan A.D.248
Stage-Ω Japan A.D.2010
以上です。
紙の本
これまで読んだタイムマシンもののSFの中でも最高傑作
2009/08/30 10:45
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:萬寿生 - この投稿者のレビュー一覧を見る
これまで読んだタイムマシンもののSFの中でも最高傑作である。異星人の地球侵略を過去に遡って防ごうとする話である。異星人そのものとの戦いではなく、地球に送り込まれた戦闘機械との戦いだが。後半で一見さりげなく語られる異星人侵略の原因が、図らずしてそういうこともあり得るだろうと、妙に納得できる。主戦場は邪馬台国。卑弥呼も登場する。この作者は女性を描くのがうまい。卑弥呼をはじめ、登場する女性たちが魅力的である。敵味方の戦闘機器も空想家学的に興味深い。物語の展開も登場人物の描き方やその他の細部の表現ともに、レベルが高い。最近の日本のSF作家の本はあまり読まないのだが、この作者の作品はいくつか読んでいたことを思い出した。
電子書籍
壮大なスケール
2018/07/26 17:12
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:美恵子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
壮大なスケールを感じました。卑弥呼のプライド高い生き方に感動しました。
素晴らしいの一言です。
電子書籍
時間SFの傑作のひとつ
2018/05/25 18:21
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:しゅらいく - この投稿者のレビュー一覧を見る
時間SFというジャンルは過去にも名作が数多あり、なかなか高評価を得られにくいものだと思います。類似作も多く、昔からのファンの目もあり、厳しいジャンルです。凝りすぎると一般の方々から難しい…などと言われます。そのせいか、近頃はお手軽なナンチャッテ改変ものも多くありますケド。
そんな中でこの作品は正当な国産SFの隠れた傑作のひとつだと思います。比較的短いページ数ながら、スケールの大きな物語が楽しめます。パラドックスの考証もなるほどと思わせ、良質なSFを読んでいるなぁ…と嬉しくなります。なによりもグイグイ展開していく物語は飽きる事なく楽しめます。オススメです!
紙の本
壮大すぎるために薄く淡々とした物語
2007/11/06 23:47
4人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:にい - この投稿者のレビュー一覧を見る
壮大なタイムリープもの
時間をさかのぼって人類に危害を加えようとする敵と戦うために、西暦2594年から人類文明の発生時代にまでさかのぼる事となった「メッセンジャー」達とそれぞれの時代の人々の姿
メインは卑弥呼の時代となりますが、様々な時代の戦いが描かれます
しかし実際の所、全てのシーンが必要だったのかは疑問が残る
あまりに長すぎる時間の動きがまともな伏線を成り立たせないので、精度の高い構成とは言いがたい
また、淡々とした語り口で細かく分割されたストーリーが、物語のエネルギーを損なっている
メッセンジャー・O視点でなく、もっと卑弥呼視点を明確にし、卑弥呼の時代風景・生活様式を濃く・深く描いて欲しかった
伏線が成り立たないのだから、キャラクター性とリアルな古代の描写、物語としてのテーマ性などで勝負するべきだったように思う
ラストの展開もいささか平凡
テーマの壮大さに追いつかない、作り込みの足りない仕上がりだと感じました