紙の本
赤々と煉恋と
2010/02/05 00:26
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:伊織 - この投稿者のレビュー一覧を見る
心の奥底に赤々と燃える欲望がある。
それは時としておぞましくもあり、同時に相反して美しさを魅せるものでもある。
人間とは自分にないものを求め、欲して。
手に入れたならばまた次…と欲望が際限なく、吐き出される。
欲望・手段は人によって異なるが、本書の場合はライトなものからダークなのもが織り交ざっており、読み応えとしては十分ではないか。
読後感として残るのは決していいとは言えないかも知れないが、各話が徹底したスタンスで描かれているので、逆に清々しささえ感じてしまうような、切なくも美しいストーリー。
美しくもあり、おぞましい、大人のためのお伽話のような1冊。
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タイトルから「赤煉蛇(ヤマカガシ)」を想起させられた。
ひやりとしているが温度も感じられる、という爬虫類的特徴は本作ぴったり。
恋焦がれる「モノ」への倒錯的な愛が低温・高熱で描かれた短編集。
愛の形については、いわゆる「フィリア」であって、マニアとかフリークとか
とは異なるもの。ただ、そこに帯に書かれたような絶対的な「おぞましさ」を
感じることはなく、綺麗さが伴っているのがさすが。
作者にしては珍しいエロチズムがそこかしこに書かれていて違和感はあるが、
得意とするレトロスペクティブな情景描写で上手くコーティングされていて
そんなに卑猥な感じは受けず、これもまた手腕によるものかと。
見たくないものに限って無意識的に見てしまう人間の性。
「きれいはきたない、きたないはきれい」を地で行く一冊。
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私が持っているのはハードカバー版で、そっちの表紙の方が好き。
図書館で二度借りて、すごく気に入ってるので文庫版を待とう、と思いつつ、待ちきれなかった。
今までの朱川作品に比べると、かなりアダルトな雰囲気。
でも、私には「いやらしい」とは感じられず、「きれいだな」と思った。
巻頭の「死体写真師」は強烈だった。でも、一番好きかも知れない。
「花まんま」しか読んでない人はびっくりするだろうなあ。
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官能、性的嗜好、死や死体。そして不可思議なもの。普段の私とは縁のない世界のため、息苦しさを感じたり目を背けたくなった。でも、怖いもの見たさで先が読みたくなる。見てはいけないけど、だからこそ見たくなる。そんな本だった。
全体的に暗黒な雰囲気の作品だったが、不思議と心に切なく染みてきた。気に入ったのは以下の三つ。
●「アタシの、いちばん、ほしいもの」
アタシが欲しいものにはっとさせられた。目の前で小さな命が散っていくのを止められなかった場面が印象的だった。
●「私はフランセス」
「あぁ……人を愛するって、どういうことなのでしょう?」以降で女の情念の深さをしみじみと感じた。業か…個人的には好きな結末?
●「いつか、静かの海に」
不思議で綺麗な話。月光レンズで月の光を集めて水を作るというのが素敵だと思った。最後に主人公が月光レンズを作らなかったことにほっとした。
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何かに恋い焦がれ叶わぬ執着を抱いた人々が陥っていく
闇が描かれた短編集と言ったところでしょうか。
それぞれどこか後ろ暗く、物悲しい雰囲気が漂っています。
とてもよく出来ているなぁとは思うのですが、
なんか、あまり鬼気迫るものを感じないというか…
どこか物足りない印象でした。
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死体の写真を撮る葬儀社、雨の渋谷で死んだ同級生、さまよう女子高生、宗教一家で育ち窃盗を繰り返す女性、お姫さまを育てる男
性。
・死体写真師
・レイニー・エレーン
・アタシの、いちばん、ほしいもの
・私はふらんせす
・いつか、静かの海に
ミステリでもなくホラーでもなく、ちょっと不気味な短編集。
読みやすい。中途半端な印象。
魅力的な不思議が世俗的なところに落ち着いて、すこしかなしかった。
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ちょっとマニアックなかんじの短編集。
できたら見ないでおきたい、見ないでほしい、人間の心の影の部分―といってもどうしようもなく狂おしい情熱なのですが―が、この作家らしい切なさを含んで描かれております。
収録作品は、
「死体写真師」
「レイニー・エレーン」
「アタシの、いちばん、ほしいもの」
「私はフランセス」
「いつか、静かの海に」
描かれる人の性癖がそもそも「むむむ」というところなので、気分が悪くなるところもないとは言えませんが、短篇としての語り、展開はお見事です。
雰囲気が好きなのは「レイニー・エレーン」で、とっつきやすかったのは「アタシの、いちばん、ほしいもの」。後者はちょっとミステリ的なところもあって、なかなか好きかも。
設定が好きなのは、SFぽい「いつか、静かの海に」。
完成度から言うと、「死体写真師」なのかな?
いちばんイっちゃってるのが、「私はフランセス」。
私の印象だと、こんなかんじです。
2010/10/19 読了
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タイトルから、抒情的なタイプの作品を想定していたら
水銀虫ラインの作品集だった。
だからどう、というわけではないけど。
この本に納められているどの作品も、ある一瞬の美しい情景や人、がメインイメージになっている気がするな。
ストーリーやその中での登場人物の選択などに対する印象は
また別として、それらのシーンは本当に美しかった。
月光レンズで月の水を集めるシーンは映像的に素敵だ。
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異形の愛の形を描いた短編集。
今まで読んだ朱川作品に比べたらちょいとアダルトな感じでしたがえぐさとか下品さを感じさせないところがさすがです。
「死体写真師」と「アタシの、いちばん、ほしいもの」と「私はフランシス」がすきです。
異形のものには恐怖を感じる反面美しさを感じて引き寄せられる気持ちはわかる気がする…。
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独特の作風。
ひとつひとつテイストの違う文章で良かった。
全く予備知識なく読んだので死体写真師の展開には驚いた…。
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短編集。エロくてグロいが哀しくて美しい。人間の欲望や癖(へき)がテーマ。
・死体写真師
死体に欲情する心理が分からない。元日に読んでへこんだ。
・レイニー・エレーン
特にないが、ラブホでお手製の弁当は食べれないような気がする。
・アタシの、いちばん、ほしいもの
この中で一番好きかな。虫男、虫女がかなり気持ち悪い。
・私はフランセス
盗癖とアクロトモフィリア。業を持った人同士の愛。
・いつか、静かの海に
鉱物でできた月星姫。
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初・朱川湊人。
結構好きな短編集でした。
エロで話のオチがあり、結構変態。すき。
「死体写真師」ラスト主人公が婚約者を好きなのは納得行かないな。女なのに。
「レイニー・エレーナ」この主婦ちゃんが結構好きである。
「わたしの、いちばん、欲しいもの」ポジティブだった主人公が後ろ向きに……。虫男気持ち悪い……!
「私はフランソワ」綾辻の眼球綺譚(懐かしい)が好きならきゅんきゅんする。
「いつか、静かの海に」ひらがなの題名の方がいい。
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はじめての朱川湊人!
タイトルのつけ方がうまい人だなーと。
「レイニー・エレーン」 も好きだったけど「私はフランセス」が特に良いなあ!
最初に戻って読み直すと「おお」となりますっっ
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おぞましさが際立っていて、ホラーっぽい不気味さが強い。そこらへんが、あんまり朱川さんぽくないなと感じたりする。
恋と執着と狂気、それがどこかで区切られるわけではなく、グラデーションのように延長線上に並んでいる。
それぞれの物語に、嫌悪感を感じてしまうのは、それぞれの登場人物がかけ離れた存在ではなく、自分たちの延長線上に位置していることを否応なく意識させられてしまうから。それがリアリティということか。
『アタシの、いちばん、ほしいもの』がいちばん朱川さんらしくて好きかな。
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うますぎ。ぞわぞわっと薄気味悪くなるのが、官能めいてすらいてたまらない。文体のしんしんとした静けさがまたいい。
…わたしはホラーだとは思わないんだよねえこれ。乱歩をホラーだとは思わないように。