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月だけが、私のしていることを見おろしていた。
著者 著者:成田 名璃子
高学歴、高年齢、高層マンション住まいの3K女・二宮咲子は、元彼の御厨に未練たらたらの日々を送っていた。週末の友人の結婚式で御厨と奥さんに再会することを悩む咲子は、占い師に...
月だけが、私のしていることを見おろしていた。
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月だけが、私のしていることを見おろしていた。 (メディアワークス文庫)
商品説明
高学歴、高年齢、高層マンション住まいの3K女・二宮咲子は、元彼の御厨に未練たらたらの日々を送っていた。週末の友人の結婚式で御厨と奥さんに再会することを悩む咲子は、占い師に一週間で出会いがないと一生独身と宣言される。驚いた咲子は合コンやお見合いなどの予定を入れていくのだが、相手を御厨と比べてしまい、逆に自分の未練を自覚していく。そんな咲子には、誰にも言えない楽しみがあった。それは、年下青年の住むぼろアパートを中古の天体望遠鏡で覗くこと。今の彼女の心を暖めてくれるのは、月夜に望遠鏡を通して知り合った青年・瑞樹との交流しかなくて──。
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本当に評価して欲しい人はひとりだけ
2015/09/14 16:13
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
二宮咲子はIT業界に勤めるキャリア志向の女性だった。しかし、そんな彼女を穏やかに支えてくれていた御厨俊夫を、仕事のイライラをぶつける様に叩きだしたことで、その後の一年は今までなぜ頑張っていたのか分からなくなってしまった。
後輩の上田理菜は、女としての努力を怠けているように見える咲子を叱咤し、合コンなども設定してくれるのだが、いまいちその気になれない。そんなある日、理菜に無理やり連れて行かれた占い師に、一週間以内に出会うチャンスを捕まえないと一生独身と言われショックを受ける。さらに、それに追い打ちをかけるように、元彼の御厨が、夫婦!で、自分と同じ結婚式に招待されているというのだ。
そんな彼女を慰めてくれるのは、街で偶然手に入れた望遠鏡と、それで覗く、貧乏アパートに住む青年だ。そんな縁で交流することになった青年・大島瑞樹に励まされ、そして自分の本当の気持ちを自覚させられていく。
理菜の紹介で会う年下の男、及川部長が持って来たお見合い相手の御曹司・友引達彦。止まっていた流れを動き出させるような、怒涛の一週間が始まる。そしてその結末は…。
失ってから始めて、それがどんなに大切だったか分かるという、よく言われる様な教訓を、仕事では優秀でも女としては上手く自分を出せない、二十代最後の女性を主人公として描いている。
個人的には、咲子や理菜の、ミス・ブースカと呼ばれる存在に対する扱いはあまりにも酷過ぎる様に感じる。彼女自身が何か嫌がらせをしたわけでもないのに、明らかに見下したような扱いをしているのだ。それは、彼女たちがバカにする浜本拓が取っている態度と同質のものではないのか?つまり彼女たちが浜本に抱く感情は、同族嫌悪であるように思える。もっとも、おそらくはミズ・ブースカに、知らないうちに彼女は助けられているわけだけれど。
ところでこの作品、女性と男性の立場を入れ替えたら、特に面白みのない作品になるであろうところが面白い。家庭のために働くとか、昭和の男性像そのものの気がする。でもそれを性別を変えて描くことで現代にマッチした作品になるとしたら、社会はどれだけ同じことを無自覚に繰り返しているのだろう?
あと、同じことを男がやったら、単なる犯罪になり下がるところは忌々しい。やっていることはストーカーでも、相手が嫌がっていなかったら犯罪にならないのだから、立証が難しいのもむべなるかな。
第18回電撃小説大賞メディアワークス文庫賞受賞作品。