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猛き箱舟 下
著者 船戸与一 (著)
一人前の男になるんだ! 固い決意のもとに、香坂正次は自分の道をつき進んだ。灼熱の砂漠、苛烈な日射しの下に飛び交う銃弾、砲弾、その中での愛、そして挫折。不思議に命をながらえ...
猛き箱舟 下
猛き箱舟(下)
猛き箱舟 下 (集英社文庫)
商品説明
一人前の男になるんだ! 固い決意のもとに、香坂正次は自分の道をつき進んだ。灼熱の砂漠、苛烈な日射しの下に飛び交う銃弾、砲弾、その中での愛、そして挫折。不思議に命をながらえた正次は、ある決意のもとに、裏切りに対する復讐の宴を始めた……世界を舞台に繰り広げられる冒険小説の巨篇。
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紙の本
直木賞作家の描く名作
2000/10/19 23:11
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひで - この投稿者のレビュー一覧を見る
本作は原稿用紙にして2千枚近くの超大作であるが、その厚さは一切苦にならない。疾走感に満ちたストーリー展開、なめらかな筆運び、登場人物の魅力ある造形。どこをとっても名作と呼ぶに相応しい作品である。
企業の依頼を受け、邪魔を排除することを仕事とする灰色熊の異名をとる隠岐浩蔵。彼の部下となるために工作を続けた香坂正次は、念願かなって彼の部下となる。最初の仕事はアフリカでのゲリラの制圧。屈強な部下たちと共に仕事を行う香坂だったが、隠岐の狙いは彼を囮として使うことにあった。仕事の成功とは裏腹にゲリラに捕まる香坂。必死の思いで脱出した香坂は隠岐への復讐に立ち上がる。隠岐から差し向けられる刺客の数々。それらを倒し香坂は隠岐を追いつめていく。
本作には二つの魅力的な要素がある。一つはアフリカを舞台にした謀略である点である。アフリカ地域は、ヨーロッパ諸国により植民地化されていた歴史を持つ。そんなアフリカを舞台にした本作は、植民地支配から脱却した国が、再び経済大国の金の力により植民地化されていく、そんな構図を浮き彫りにしていく。繰り広げられていく戦いは、企業の傲慢さと、ゲリラの純粋さという相反するものの戦いである。
本作のもう一つの魅力が一人の男の復讐劇である。これは同時に一人の男が生きる意味を見つけるまでの物語とも言える。ひたすらに刺激を求める日々からの脱却を図った男が裏切られ、復讐に自らの生きる意味を求める。何とも皮肉な展開であるが、日々を刹那的に享楽的に過ごす現代の若者への強烈な批判であるともとれる。だが同時に彼は人間の感情といったものを失う。そんな彼が意味するものは、経済大国となった日本そのものの姿であるというのは深読みだろうか。ともかくも彼の姿には日本そして日本人そのものへの批判がこめられているように感じるのである。
紙の本
船戸小説の最高傑作。
2013/09/09 22:33
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:わびすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る
復讐譚はたいてい面白くなる。復讐の果てに何があるのかが傑作かそれ以外かの分岐点があるとするならば、本作は復讐は虚無であるというスタート地点から語られ始める。すべてが最後であり最初である雪山の山小屋に収斂していく。非常に美しい作品。また、近年のアルジェリア情勢などを見るに、存外にリアルな設定にもびっくりする。