紙の本
本当に地域のためになる施策を求めて
2011/06/10 05:04
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投稿者:良泉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本中といっても過言ではないの町々・村々が、「まちおこし」「むらおこし」といったことに躍起になるようになったのはいつの頃からであったろう。
「地域振興」なんて、昔はお役所でしか使われなかったような言葉が、いまでは当たり前のように、人々の口から発せられる。
B級グルメなるものが、一種ブームとなっている。地方独自の調理法を施した食べ物を、ご当地グルメとして、しかも廉価で身近な庶民的食べ物として競い合うあれである。
それは、決してA級と呼べる高級品であってはならない。誰にでも手が届く、俗っぽいものであることに意義がある。
マスコミで紹介されたB級グルメには、日本中から人々が殺到する。旅費・交通費を惜しげもなく使いながら、“安い”B級品を試しに人々が殺到する。
地方は、ここぞとばかりに、B級グルメ品を大々的に宣伝し、地域振興の糧とする。
しかし、そのブームも所詮、一過性のもの。やがて人々はあらたなブームに殺到し、前のものは、あっさり忘れ去られる。
しかしそれが、たとえ一時的であったとせよ、経済的あるいは真の地域振興成功例としての経験としてだけでも、その地域に有益であったのなら、それも否定できない。
しかし、多くの場合、それは成功とは呼べないものとなっている場合が多い。一時的ブームに載せられ無理な経済投資をしたツケに後々苦しめられる場合も多い。行政さえ、ブームを作り出すために躍起になり投資した宣伝費用は十分な効果を得ることなく回収不能となる。なによりも、ブーム中であっても、大手企業の参入により、地方には実際の“もうけ”が落ちてきていない場合も多い。
何か、踊らされているという感じがする。
地域が地域らしく、そこに住む人々の着実な生活の安定を求めるのに、ここまでの地域振興策に、皆がこぞって没頭する必要性が本当にあるのか。
全国で地域振興成功例とされている事例をじっくり検証する必要がある。特に、一過性のブームが去った後の“祭りの後”を。
地域振興、地域再生といった甘い罠を仕掛けて、本当に実利を得ているのは誰か。よく見定める必要がある。それに気づきさえすれば、選挙のたびに候補者たちが競うように唱いあげている“おいしそうな話”の本質が見えてくるはず。
地道に確実に地方経済を維持していく。地方に住む人々の生活の安定を求めていく。それでよいはず。眼の向ける方向を変えていかなければ、みんなが踊らされ、結局苦しむことになるであろう。
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地域再生論のはじめの一冊
2015/11/17 19:55
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投稿者:自室警備員 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は地域再生にまつわる良くある失敗・誤解を鋭く指摘していく。いわゆる成功事例の中にも実際には、成功とは到底言えないものがあるということ、安易な模倣は失敗にしかならないといったことについて事例を挙げて説明がなされる。
また、都市工学といったまちづくりにおけるテクニックの優先、行政や一部の産業界の声を強く反映させるだけのやり方についても著者は批判する。
失敗の具体例として挙げられる岐阜市の話については非常に興味深い。
重要なのはそこに住む人たちのニーズであり、そのニーズを汲み上げ、刺激していく中で、用いられる都市設計といった技術的側面が決まっていくのだと筆者は説く。
ではそのニーズとは何か。本書では、スポーツ・クラブやスローフードなどいくつかの例が紹介されている。一見すると地味なものばかりであるが、概ね納得出来る提案であると私には思われた。
この本を読み、自分の住んでいるまちを回り、思索を巡らせば自分のまちへの興味・関心があがるかと思う。
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前半はおもしろかったが
2017/03/20 11:07
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投稿者:つるし@研究職人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
前半は各地のケースについてよく書かれておりました。納得するところが多かったです。しかし、最後のところはかなり無理のある結論(提案?)だったと思います。そこが残念で、全体の評価を落としてしまっている気がします。
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地域活性の現実の姿。
2018/01/13 02:42
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投稿者:シオ・コージ - この投稿者のレビュー一覧を見る
一見成功しているように見える街おこしの現実の姿を取り上げ、地域活性がなかなか定着しない理由について、かなり本音で迫っています。
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衰退する地方商店街についての評価、提言。ハコモノ建設まずありきな再生計画を糾弾する。人々の交流をキーワードに、消費者の目線に立った計画を提言。B級グルメ、スポーツクラブ、車より人が優先される、など。
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2010.07 地方再生の、著者の強い思いが感じられる。また、足で稼いだ豊富な情報が、著作に説得力を与えている。まちづくりにおける行政の問題が浮き彫りにされている。
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地方の街づくりについて考えさせられる本です。成功していると言われている商店街でも、実は一月のほとんどは閑古鳥が鳴いていたり、これまでの大型商業施設誘致、官中心の街づくりについて徹底的に批判し、住民視線での街づくりを提唱しています。
地方へ旅行に行くと、シャッター街のさびれた商店街をよく目にします。買い物しようにも開いている店を探す方が難しく、購買意欲が無くなってしまう経験は誰でもあると思います。
著書では、従来の街づくりでの問題点を指摘し、間違った街づくりで街がさびれてしまった例を引き合いに出しています。地域再生の罠として、2つの本質的な問題を挙げています。
・(大型商業施設のような)「目に見える」「誰でも分かる」ものを尊重し、とりわけ「数値や力の大きい」ものや権威に依存する。
・「目に見えにくい」「気が付きにくい」ものを軽視する。
街作りで大事なのは、そこに住む住民視線でいかに考えるかであり、著者は地域再生の7つのビジョンを掲げています。
①私益より公益
②経済利益よりひとの交流
③立身出世より対等で心地よい交流
④器より市民が優先される地域づくり
⑤市民の地域愛
⑥交流を促すスローフード
⑦心の拠り所となるスポーツクラブ、居場所
いずれも住民の為の街づくりであり、住民が主役となるキッカケを作ることが大切と説明しています。ボトムダウンではなく、ビルトアップの考えが、これからの街づくりに必要と言えると思います。
思うに、活き活きしている街は、人々も活き活きしています。施設や街並みに目を奪われがちですが、その街に活力を与え、輝かせているのは、間違いなく「人々」です。「人々」の活気や笑顔によって、街がつくられると言えると思います。
地方の温泉街でもそれが当てはまるかもしれません。食べ歩きやレストラン、お土産屋、足湯のある街は人通りも多く、「街」の光景がイメージできます。一方、豪華な大型旅館中心で形成されている温泉街は、食事や温泉等、旅行客は大型旅館の中でしか過ごさないため、一歩外に出ても人通りが少なく、有名な温泉街でも閑散としている場合があります。
豪華な大型旅館は日本全国どこにでもあります。一方、自然と文化、そこで生活する人々が織り成す温泉街は、そこにしかない、まさにオンリーワンと言えると思います。日本全国ここにしか存在しないコンテンツで勝負することで街づくりを進めることが、これからの時代必要かもしれません。
目次
第1章 大型商業施設への依存が地方を衰退させる
第2章 成功事例の安易な模倣が地方を衰退させる
第3章 間違いだらけの「前提」が地方を衰退させる
第4章 間違いだらけの「地方自治と土建工学」が地方を衰退させる
第5章 「地域再生の罠」を解き明かす
第6章 市民と地域が豊かになる「7つのビジョン」
第7章 食のB級グルメ化・ブランド化をスローフードに進化させる―提言1
第8章 街中の低未利用地に交流を促すスポーツクラブを創る―���言2
第9章 公的支援は交流を促す公益空間に集中する―提言3
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日本の地方都市は坂を転げ落ちるように衰退の一途をたどっている。そして地方衰退の解決策として、地方自治体によって都市の復興のために様々な取り組みがなされており、補助金や規制の緩和ということも行われている。地方都市の衰退の理由は産業の衰退や都心中心などの理由が挙げられるが、本書では地方自治体の取り組みについてが、挙げられている。
例えば、商店街再生の成功事例として挙げられている都市に赴き、自らの目で確認し、成功事例として取り上げられている地方都市が、記事などで読むほどには必ずしも成功していないと指摘する。若者を呼び込もうとした宇都宮市の活性化では現実の若者の感性は生かされていなかった。松江市の再生はイベント頼みで本当に地域に潜む魅力を生かし切れない。長野市は観光客指向のあまり地元民の生活との接点を失った。福島市はオヤジ視点のあまり地元の若者や女性の視点を持つことができなかった。岐阜市・富山市はお役所体質からコンパクトシティを目指し、市民の居住空間の常識を壊した。
成功例として有名になっていながらも、足を運び地元住人の視線で観察すると行政の取組の失敗している部分がよく見える。成功とは必ずしも言い切れ無いものを成功事例として我が街にもと取り入れようとする行政は、表面的な成功談しか見ず模倣するが故に、同じような問題を自らの都市にも持ち込むことに鳴る。こうして脆弱さは広がり地域はますます寂しい場所になる。
地方都市のもっとも根幹の問題は、産業の衰退である。しかし、それに対する地方自治体の取り組みも、どこか的外れで詰め切れていないように見え、 この地方の疲弊に、行政も政策を通じて幾分か加担しているとも言える。
都市の衰退に頭を悩ます地方自治体の、その背景には、住民に関する責任感などではなく、税収の問題や国からの要望などがあるように感じる。行動のきっかけが住民という視点からズレている限り、どのような取り組みも他人事にならざるを得ないように思う。
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地域再生の裏話をわかりやすく解説してくれていた。建築系のやつらは、ハードをつくれば成功と思っているというのは、言い過ぎな面もあるが、概ねその通りのようにも感じた。今後は建築系の専門家とまちづくり系の専門家の距離が近くなって欲しいと思う。
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図書館で借りたときに、ぴらっと開いたそのページが、広島の「甘党たむら」(2008年末に閉店)の話で、これがよかった。猿猴橋という地名もなつかしい。広島に3年間住んでいたころ、猿猴橋の電停近くにあった韓国料理屋へよく食べにいった。
広島駅前にあった「甘党たむら」はあんこがたっぷり入った二重焼きをひとつ70円で売っていたそうだ。そして二重焼きをふたつ注文すれば、日本茶をつけて店内で飲食できた。店内は、歩き疲れた高齢者、電車待ちのひとたちがそれぞれにくつろぎ、二重焼きふたつ140円で、時には1時間以上もおしゃべりに興じていたという。
この「甘党たむら」は著者にとって、結婚相手の母の店、義母の店だった。駅前の一等地で、140円で1時間も居座られては利益がほとんど出ない、顧客回転率も悪い、適正価格は3倍だ、と著者は義母に言ったことがある。だが、義母の意見は違った。
「それは、なんとか回転率が悪いのではなく、顧客が居心地よくて幸せを感じている。幸せを感じてくれるから、後に何度も来てくれるし知人も連れてきてくれる」(p.201)
この義母の意見をきき、実際に「甘党たむら」の店頭を年に二度ほどの帰省のたびに見て、著者は自分の価値観、マーケティングでそれなりの実績をあげていた自信の根拠を考えなおした。
何度も繰り返し来たくなるサービス、そしてクチコミの威力。これはよくわかる。あの店がよかったという話と同じくらい、不愉快な体験をした店の話も伝わる。私もよかった店にはまた行くし、人を連れていくこともある。はぁ?と思う経験をした店にはまず二度と行かない。どう?と訊かれたら率直にその不愉快さを伝える。
「甘党たむら」の、被爆を知る先代創業者は「市民が気軽に喉の渇きを癒し、ゆっくり休める場を提供したい」との想いから開業した。それが「余計なお金と気を使わない場所」になっている。
帰ってきて、てっぺんから読んでみると、これは地域再生に取り組むそれぞれの地方の、「成功だともてはやされる例の多くは成功していない」ということ、また「成功した」と言える稀な事例の多くは模倣が難しいことを、各地の(成功したといわれる)"失敗例"を引き合いに出して、縷々書いた本なのだった。
土建工学者の言うことをうのみにしていてはいけない(成功事例は土建工学者自らが描いた理想郷)、経済的な豊かさにばかり気を取られていてはいけない、市民の声をおざなりなアンケートで聞いたつもりになってはいけない…てなことが書いてあった。
この人も、枡野浩一に似て、「男性として、悪気のない本能的な視線」などと、はぁ?と思う自説を述べていたりするところがズッコケだが、地域を盛り上げていこうというアイデアについては、おおむねおもしろかった。「商店街の「選択と集中」を」(p.53~)というところは、この人が批判しているコンパクト・シティ風の考えに思えて、そうなんかなあと思ったけど。
役所と市民の信頼関係と、市民が主役になれる仕組みを築くこと
人の絆をつなぐ献身的な努力が持続的な成長をうんでいる
地域全���の公益性を高めること(私益ばかりに目が向いていてはだめ)
イベントを「遊び」として取り組む、主催者も遊ぶ(悲壮感がただようほど真面目に取り組んではお客が引く)
クルマを優先する商店街に人は寄らない
当然といえば当然のことのようにも思うが、こういうのがアタリマエにいかないところが、各地のシャッター通り商店街、さびれた地域につながっているのだろうか。
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・専門家が推奨する成功事例のほとんどが実は成功していない。
・稀にある方向の成功は異国や昔の古い話であり、しかも模倣が極めて難しい。
109も宇都宮では失敗した。
・店員の知識不足。手人がダサい。
・109に100円ショップがある。ありえない。
・目のまえに八百屋があって大根売っている。
スターバックスが進出しない県が4つある。
・頼まれても進出しない県:青森、山形。
両県はカフェ文化を浸透させるのが難しい。
たとえばカフェより酒を好む。
・出店したくてもできない県:鳥取、島根。
個人経営カフェが多いから勝算がない。
長野市のにぎわいは神頼みと言われるほど善光寺に依存している。そして善光寺の観光客のほとんどが年寄り。
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お義母さんの話、涙腺に来ました。
豊かさの指標は人それぞれだけど、それによって世界の見え方も変わってくるのでしょうね。
地域再生からそれた感想になってしまいました。
本テーマに関心のない方でも楽しめると思います。
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[ 内容 ]
社員を大切にしない会社は歪んでいく。
それと同じように、市民を蔑ろする都市は必ず衰退する。
どんなに立派な箱物や器を造っても、潤うのは一部の利害関係者だけで、地域に暮らす人々は幸福の果実を手にしていない。
本書では、こうした「罠」のカラクリを解き明かし、市民が豊かになる地域社会と地方自治のあり方を提示する。
[ 目次 ]
第1章 大型商業施設への依存が地方を衰退させる
第2章 成功事例の安易な模倣が地方を衰退させる
第3章 間違いだらけの「前提」が地方を衰退させる
第4章 間違いだらけの「地方自治と土建工学」が地方を衰退させる
第5章 「地域再生の罠」を解き明かす
第6章 市民と地域が豊かになる「7つのビジョン」
第7章 食のB級グルメ化・ブランド化をスローフードに進化させる―提言1
第8章 街中の低未利用地に交流を促すスポーツクラブを創る―提言2
第9章 公的支援は交流を促す公益空間に集中する―提言3
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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(2010/9/3読了)箱モノでは地域の活性化はできない。車優先の町は活性化しない。入り口は安く(もしくはタダに)し、まずは人が集まって、おしゃべりするような「場」が肝要。
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著者の立場(地域再生プランナー)VS“土建工学者”という対立軸で議論が進む。あまり、読んでいて心地よくなかった。
「地域再生の罠」というタイトルも大げさに感じた。ある意味、当然のことを述べている。
まぁ、参考にできる論点もあったので、☆☆