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マリーについての本当の話
著者 ジャン=フィリップ・トゥーサン (著) , 野崎歓 (訳)
あの灼熱の夜のことを、あとから考えてみてわかったのだが、マリーとぼくは同時にセックスしていたのだった。ただし別々の相手と。あの夜、マリーとぼくは同じ時刻に、パリ市内、直線...
マリーについての本当の話
マリーについての本当の話
商品説明
あの灼熱の夜のことを、あとから考えてみてわかったのだが、マリーとぼくは同時にセックスしていたのだった。ただし別々の相手と。あの夜、マリーとぼくは同じ時刻に、パリ市内、直線距離にして一キロほどしか離れていないアパルトマンで、それぞれセックスをしていたのである。その夜、もっと夜が更けてから、ぼくらが顔を合わせることになろうとは想像もできなかった。しかしその想像を超えた出来事が起こってしまったのである…
著者紹介
ジャン=フィリップ・トゥーサン (著)
- 略歴
- 1957年ブリュッセル生まれ。小説家、映画監督。著書に「浴室」「ムッシュー」「カメラ」など。
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紙の本
距離の中に幸福と愛がある
2023/10/30 14:21
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投稿者:天使のくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
「愛しあう」「逃げる」に続く作品。冒頭、別々の場所で別の相手とセックスする恋人たちの姿から、物語が再開する。逃げた結果だ。
その夜、マリーの相手は容体が急変する。そして、「ぼく」に助けを求める。こうして、「ぼく」はマリーと再会する。
間にはさまれるのは、マリーとその相手が競走馬を成田から出国させるにあたってのトラブル。作家によって悪意をこめて描かれるエピソードには、思わず笑ってしまう。
マリーについての本当の話というのは、マリーと「ぼく」の話であって、別の誰かとの話ではない。ただ、うまく距離がとれず、逃げ出していた「ぼく」に対し、マリーがその距離を見つけてくれる話、なのだと思う。そんな距離にこだわり、悩んで逃げてしまうあたり、ダメ男の「ぼく」だけれども。けれども、その距離の中に幸福と愛しあう時間があるのだとも。それを発見しようとする、そこにこだわり、その存在を確認する、そのことが、読者を幸福にもしてくれる。
それにしても、前作における逃げる起点が雨の京都なのだ。日本のセンチメンタルな情景っていうのは、けっこう、世界遺産ものかもしれないな。
この作品にはさらに続きがあるという。「はだかのひと(仮題)」も刊行されますように。というか、いつまでたっても出ないので、英語版で読んだけど、結末としてほんとうにすばらしい。日本の読者のために、きとんと訳してほしい。