紙の本
ド素人向け入門書として好適
2007/08/30 03:24
8人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BCKT - この投稿者のレビュー一覧を見る
第1章 文の構造を分析する
第2章 生成文法とは何か
第3章 深層構造と表層構造
第4章 普遍文法を追求する
著者は1957年(福岡県)生まれ。東大卒,同大で大学院単位取得退学。成城や北大で勤めたあと,本書刊行当時は名大(教授,49歳)。著書に『コトバの謎解き ソシュール入門』(光文社新書),『町田健のたのしい言語学』(ソフトバンククリエイティブ),『町田教授の英語のしくみがわかる言語学講義』『日本語のしくみがわかる本』(以上、研究社)、など。「日本語文法にも精通しており、文部省科学研究費で和仏機械翻訳のための基礎的研究に取り組む・・・[中略]。また最近ではタモリのジャポニカロゴス等のテレビ番組にも出演しているが、歴史的仮名遣いや漢字の音訓など彼自身の誤認に基づく誤った発言がそのまま放送されるケースもあった。[中略] 同番組で時東ぁみのファンであることを公表した。」(Wikipedia)。大先生の公表としては面白かろうし,名大受講生も増えただろうけど,これで授業はやりにくくなっただろうなぁ。教授会で吊るし上げられてるんじゃなかろうか・・・。
僕にとっては初めてのチョムスキー。好評の本書を耳にしていたので購入。世紀の大理論家チョムスキーの主張の粗筋とそれに対する町田の問題提起があり,まぁ革命的な大理論といえども,無理筋は含まれているというのが素人にもよくわかり,とてもよい。たとえば,「能動態と受動態の文が表す意味が『なぜ』等しいのか,ということは[チョムスキーの掲げる]生成理論の枠内ではどうやっても説明できない」(107頁)なんてことは,門外漢の素人にはとてもわかりやすいチョムスキーの問題点。「Xバー理論」とか「統率理論」とか,取っ付きにくそうな専門用語も簡単に触れられていて(172-8頁),文学部にいる一部の高飛車な修士課程の大学院生どもに教えを請わなくても済みそう(なんで文学部の連中はあそこまで学部入学偏差値がほぼ同じの経済学部をバカにするのだろう?)。
ド素人向け入門書として好適です。お勧めします。(807字)
紙の本
言語学、これからの学問。
2006/04/03 13:07
11人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:GTO - この投稿者のレビュー一覧を見る
学生時代、生成変形文法の講座をとった。なにか納得がいかなかった思い出があったが、この本を読んでその謎が解けたように思う。大学で使用したテキストとは違い、生成文法の抱える問題点が明確化されていることが、かえって生成文法の理解をうながしてくれて分かりやすかった。また、ポイントをゴシック体にしてくれているので、ある程度チョムスキーの理論を知っている人は、そこを拾い読みするだけでも理解できるだろう。
さて、その理論だが、言語に「文」や「構成素」がある仮定を受け入れたとしても、その「文」や「構成素」の認定が「ネイティブならば同じように判定するだろう」という曖昧な基準でしかないならば、論を進めることはできない。チョムスキーは、それを克服するために「構成素」に名前を付けることにしたというが、文構造を一般化して表すことには役立っても、元の文をどのように分割するかの判定基準ははっきりしない。
「文を二つの直接構成素に分割できることは、母語話者であれば直感によって正しく判断できるのだというのが生成文法の立場です。」(p.51)となれば、母語話者以外はなんら口出しできなくなるし、そもそも母語話者とはどんな条件の人を指すのか決めるのが難しいはずである。
このような脆弱で感覚的なものを基礎として、話が表層構造、深層構造、変形規則と進むにしたがって、説明が分かりにくくなる。もう少し丁寧に説明すべきである。話を普遍文法へとつないでいくのならば、日本語の例文などを示すとよかったのではないか。全体を通じて、生成文法は英語(印欧語)にしか通用しないアプローチではないかという印象を受けた。
あと、誤植がいくつかあって気になった。たとえば「生成文法は、独自の用語を使って独自の道具立てに基づくながらコトバを分析すするため」(p.5)これは単純な間違い。
さらに、面白いからわざとかと言うのは穿っているだろうが、「70 太郎が花子を見た。」の文の深層構造図71で左の名詞句の要素が「花子」になってしまっている。(p.167)このため、その後に説明される英語に当てはまる構造が、日本語には当てはまらないのではないかということを分かりやすくしているかもしれない。日本語では、太郎と花子は入れ換え可能なのだ。
つまり、”Taro saw Hanako.”では、主語と目的語の位置が逆転すると全く意味が変わってしまうのに対して、日本語では「太郎が花子を見た。」が「花子を太郎が見た。」となってもニュアンスが違うだけで、事実関係に変化はない。代わりに助詞の「が」と「を」の逆転が大きな変化を生む。さらに語順に関して話を進めれば、日本語では「太郎が」、「花子を」、「見た」の3要素がどのように並んでも、同じ事実関係が伝達される。
最後に、普遍文法というと人間の言語が共通して持つ文法があるように思えるが、言語に共通する部分があるのではなく、人間の脳が共通して持つ性質が言語に現れているのだから、言語ばかりでなく人間の感覚器官、脳、発声器官などの研究も合わせて進める必要があるだろう。
同著者の新書に『まちがいだらけの日本語文法』、『ソシュール入門』、『ソシュールと言語学』などがある。どれも一定の水準を満たした良書でお薦めである。
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かなり攻撃的。この内容で「チョムスキー入門」はないと思う。
チョムスキーの普遍文法や生成文法のココロに関してなら
「岩波講座 言語の科学〈1〉言語の科学入門」
政治的発言含めた、チョムスキーの人に関してなら
「チョムスキー (FOR BEGINNERSシリーズ)」
が入門的内容としてわかりよいです。しかし、チョムスキーのインタビューや著作を読めば「この人天才なんだ!」という感じがする。
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「生成文法嫌い」の町田先生による、生成文法の謎を「深める」一冊。生成文法の考え方の解説が半分、残りの半分は生成文法批判。下記『生成文法がわかる本』の新書版といったところ。生成文法全体への批判、生成文法の解説(特に句構造規則、Xバー理論、Θ理論。アメリカ構造主義言語学のIC分析の話も)などは前著と重なっている部分も多い。Amazonのレビューに「以前の著作に比べて比較的より踏み込んだ専門的な用語や考え方についてかかれており」というのがあったが、そうかなー??「以前の著作」が何を指しているのか分からないのでこのレビューについては何とも言えないが、少なくとも『生成文法がわかる本』に比べると生成文法の内容自体は易しくなったと思う。ただ『生成文法がわかる本』は語り口がおふざけでネタもだいぶん入っているのでこの新書の方が真面目で難しそうに見えるけど。索引を比べてみれば分かります。GB理論も向こうの方が詳しい。
この本や『生成文法が〜』は、町田先生から生成文法研究者への挑戦状。生成文法理論は「結論を先取りした形で説明が行われる」の部分に強く共感。おれも生成文法を勉強しているたびにそう思ってるんですが…。
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チョムスキーの入門書。非常に分かりやすく、生成文法の問題点も指摘しています。
ただ、やや独善的に切り捨てている感が否めないので、一度、生成文法の本も読んでみたいです。
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「生成文法」で、言語学の世界に大きな変革をもたらしたチョムスキー。この本は、その「生成文法」を出来る限り簡易に書こうとしているように思えます。
なるほど、最初のうちはまあまあ分かりやすいような気もします。
ただ、やはり後半になって色々な専門用語が増えてくると意味がわからなくなります。θとか、ミニマムナントカとか。チョムスキーの生成文法をとらえるには、時間をかけて本を何冊も読まなければいけないと痛感します。それだけでも、この本を読む意味はあるのではないでしょうか。
すっきりと分かったのは、直接構成素分析まで。それ以降は手応えがありすぎてあまり読み解けなかったような気がします。
まだまだこれから。チョムスキーを甘く見てはいけない、と痛感しました。
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たまたま古本屋で見つけた。
ノーム・チョムスキーと生成文法…興味があったので早速購入。
著者はテレビによく出ている人だが、国文学ではなく、言語学が専門だったとは…(-_-)ゞ゛
著者なりの努力で平易に記されているが…ボブにはちょっと消化不良でした。
もう一度読み直さねば…レ(゜゜レ) ガッツ
頭の運動でこういった異文化に触れるのもいいですね(´ー`)
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2009/07/13 TOEICの監視中
生成文法
表層
深層
深層があるから、表層の言い回しが成り立つ。。。
音素と音声の区別
発するのは人間:ネイティブの区別という曖昧性
言葉に意味を持たせる
→自分と聞き手の言語のある程度の共通性に基づいて、伝達させる。
他の文化を自分の文化にある似た言葉・状況によって言い表す。
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町田さん,生成文法がお嫌いみたいです.生成文法の入門書だと思うのですが,ちょっと紹介しては問題点…の繰り返し.「文というものが何なのか定義できていないと…」とか批判点に挙げるけども,町田さんはそれを乗り越えているのだろうか? 批判的なのはいいけども,建設的でないのはよくない.
能動態と受動態が同じ意味であるという“仮定”や,深層構造では同じであるという想定に対して,「それを事実に基づいて検証することはできない」という批判をしています.この批判がもし妥当なら,物理学の理論は破綻です.質点は事実ですらないので,この仮定に基づいて組まれた理論は,町田さんに言わせると「ちゃんちゃらおかしい」ことになると思うのですが,まえがきで「もし生成文法が,ニュートン物理学や相対性理論のように,本当に正しい学説なのだとしたら,…」と述べていますが,ニュートン物理学は町田さんにとっては「本当に正しい学説」みたいです.批判的な観点というのは大事ですが,町田さんの批判の仕方では,物理学の理論も批判の対象になるはずです.一貫性のない批判はだめです.論理的ではありません.
たぶん,町田さんはモデルとか理論とかを作ったことがないんでしょう.また,理論はあらゆることを説明できなければならないものだという誤った認識をしているように思われます.
追加:2012年3月28日
読み直しても,やはり印象は同じ。僕が生成文法を擁護するかどうかは,生成文法を知ってから決めようとしているけども,町田さんの批判は,“批判のための批判”でしかないと思う。ある2つの文の意味が同じかどうかを,直観に頼って決めるのは問題だ!と批判しつつ,“英語の勉強で習ったから同じだと分かりますよね~”みたいなことも書いていたりする。英語のネイティブでない僕らは,そうやって語学書に書いていることを信用するしかないけど,“同じです”としたのは結局のところネイティブの直観であるはず。それに文句を言っているわけだから,あらゆる語学書に書いていることは根拠がないと主張してくれないと,まともな批判をしているとは言えない。
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生成文法について、その問題点を述べつつ解説した本。
大学で生成文法"も"専攻してたんですが、
その時の教材みたいに「生成文法とはこういうものだから~~」という一方的なモノより、
この本のように問題点を提示してくれる方が学習にはいいと思った。
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[ 内容 ]
「言語学の巨人」の難解な理論を、“マチケン”先生が分かりやすく丁寧に解説。
「抽象的思考力」を身につけるための一冊。
[ 目次 ]
第1章 文の構造を分析する(「文法」とは何か 語順の決まり ほか)
第2章 生成文法とは何か(生成文法の登場 文の構造を表す方法 ほか)
第3章 深層構造と表層構造(句構造規則は単純な方がいいのか 句構造規則を超える―深層構造の登場 ほか)
第4章 普遍文法を追究する(生成文法と主語、目的語 普遍文法を仮定する ほか)
[ POP ]
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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深層構造と表層構造の関連、理論化の矛盾など、生成文法を批判的に解説。現代言語学の祖はソシュールといわれています。その研究の第一人者である著者が生成文法を「外」の視点から解説します。ちなみに、生成文法は今でも(?)現代言語学の主流です。私は個人的には無理があると思うのですが・・・。言語学の世界は1980年代から「認知言語学」という分野が生まれ、発展してきています。私はこちらを勉強しました。
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きたる3月5-6日(2014年)にチョムスキー来日講演が上智大学で行われる。
チョムスキーが偉人であることは知っているのだけども、結局何を説いているのかはよくわからないので、手に取った1冊。
チョムスキーが解き明かしている生成文法について、ざっくりと解説されている。
やや難しい部分あるけども、概要は何となくわかった。
ところどころ(というか、頻繁に)チョムスキーに対する批判的意見が差し込まれているので、頭を切り替えるのが難しい。
正直、後半にはウンザリしてきた。
もっとスッキリとまとめて、くれないと、チョムスキーの入門書なのだか批判書なのだかよくわからない。
てことで、他書をあたってみたい(ググって終いにしておくか・・・)。
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【内容(amazonより)】
本書は、アメリカの言語学者ノーム・チョムスキーが創り上げ、そして発展させた「生成文法」という文法理論の基礎を解説し、その価値と問題点の両方を明らかにしようとするものです。生成文法は、独自の用語を使って独自の道具立てに基づきながらコトバを分析するため、初めてこれに接する人は、まるで数学の論文を読むかのように、ひどく難解な理論のように思ってしまいます。もちろん、専門的な論文を読む場合には、他のどの分野の学問でも多かれ少なかれそうであるように、ある程度は難解な部分もあります。本書はできるだけ平易な英文を題材にして、生成文法でとられている考え方の基本を、できるだけ丁寧に解説します。
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【目次】
まえがき
第1章 文の構造を分析する
・「文法」とは何か
・語順の決まり
ほか
第2章 生成文法とは何か
・生成文法の登場
・文の構造を表す方法
ほか
第3章 深層構造と表層構造
・句構造規則は単純な方がいいのか
・句構造規則を超える―深層構造の登場
ほか
第4章 普遍文法を追究する
・生成文法と主語、目的語
・普遍文法を仮定する
ほか
牽引
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学部の時に取ってた言語学の授業で、ひたすら樹系図みたいの書かされたのはこういう訳だったのかーと納得。
でもまるっきり入門者には、一つ一つの解説は納得できても、全体として何をしたいのかは分かるような分からないような…
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ある種の正しい意味での「入門」。
理論の紹介をしつつ、休む間も無く批判を加える。そして、生成文法論への批判と今後への憂いとも見えるコメントで筆を置く。
さらっと理論を知る、といった意味の「入門」ではなく、批判的な態度を持ちつつ議論の輪の中に入るという意味での「入門」の本。
憎さ余って…で理論をくさしまくってる本、と読んでしまうと面白くないかもしれない。学問的態度で向き合うことを、この本は要求している。